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(side.K)

 「誰を、ほっとけばいいって?」

あたしとあ〜ちゃんの体が固まって。

 「随分、楽しそうな事、してるみたいだねぇ?」

声のした方に視線を向けると…。

 「これは浮気になるのかなぁ?…そうだとしたら…二人にはおしおき、しなきゃだよね?」

のっちが、いた。

………

黒いオーラを纏って、笑顔であたし達に近づいてくるのっち。
…笑顔だけど、目が笑ってなくて…。…すごく、怖い…。
でも…その黒い笑顔の中に、<傷ついたような切なさ>、が見えた気がしたのは、あたしの気のせいなんだろうか…。

 「で?誰を、ほっとけばいいんだって?」
 「「……」」
のっちの雰囲気に圧されて、声を発することが出来ない。
 「…答えられないの?…あ〜ちゃん…ゆかちゃん…」
あたし達のすぐそばに膝をついて。
 「…答えられないなら…のっちが答えてあげる…」
あたし達を見つめたと思ったら、顔を俯かせて。
 「…のっち、だよね…?…のっちは居なくてもいい子、なんだよね…?」
 「「…っ!!」」
俯いたのっちの顔を、一粒の涙が伝い落ちて。
あたし達は、衝動的に、のっちを強く抱きしめた。
 「のっちは、居なくてもいい子なんかじゃない…っ」
 「そうよ、のっちっ…のっちは、あ〜ちゃん達の大切な人なんよ…!」
のっちは…あたし達にとって、とても大切な、かけがえのない人…。

 「…大切な、人…?」
顔は俯いたまま。
 「とても大切な、ゆか達にとって、なくてはならない存在なんだよ…?」
 「…本当に…?」
 「本当よ!あ〜ちゃんも、ゆかちゃんも、のっちの事が大好きなんじゃ!」
 「………。…だったら…」
のっちが顔を上げた。頬に涙の跡を残したまま。
 「…だったら…っ…証明してみせてよ…っ!!」
涙の跡を、また新しい涙が伝い落ちる。
 「あたしの事が好きなんだって!…大切なんだって、あたしに証明してよ…っ!!」


 (side.N)


黒い感情があたしを包んで…いつものあたしは消えたはずなのに。
それでも、まだどこかに残ってた<あたし>が、悲鳴をあげてる。

全てを黒く塗りつぶされて、酷い言葉しか出ないはずなのに…っ。
あたしの口から出たのは…二人に、あたしの存在意義を問いかける言葉だった。

耐えきれなかった…黒くなりきれなかった…。
知らない内に涙が流れて、頬を伝い落ちて…。
あたしの居ない内に体を重ねた二人を許すことも出来ず、
あたしの事を、<大好き>、<大切>と言ってくれた二人を信じることも出来ず…
あまつさえ、その二人に気持ちの<証明>を求める…。

あたしは、最低だ…。
白にもなれず、黒にもなれない…中途半端なあたし。

でも…それでも。
あたしの事を<大切>だと言ってくれるならば、あたしに、それを信じさせて…。
あたしが、<二人にとってなくてはならない存在>なんだと、あたしに、言い聞かせて…っ。

………

ふわっ…と甘い香りがした…。
気付くと、二人に抱き締められていた…。
 (あったかい…)
ゆかちゃんとあ〜ちゃんの香りが混ざって出来た、とても優しい香りがあたしを包む。
あたしを抱きしめてくれる腕はどこまでも温かくて…どこまでも優しい…。
 「のっち…」
あ〜ちゃんのあたしを抱きしめる腕が、少し強くなった…。
 「ごめんね…のっち…。…証明は、できん…」
…あたしの心が、ギュッと締めつけられる…。…心が…いたい、よ…。

 「あ〜ちゃんが知っている限りの言葉を全部使って、のっちにあ〜ちゃんの気持ちを伝えて、証明してあげたい」

 「でも、あ〜ちゃんの頭と口は、それを上手く言葉にすることが出来なくて…」

 「すごく、もどかしいよ…伝えたいのに、伝えられない…」

 「だから…あ〜ちゃんは…<好き>って言う言葉に、『のっちへの全ての想いを込めること』しか、できないんよ…」

 「…のっち……。…<好き>…」

心も体も包むように…あ〜ちゃんが、抱きしめてくれる…。
 (…あ〜ちゃん…)
そっと…頬に手を添えられて、あ〜ちゃんの柔らかい口付けが、あたしの唇に落とされた…。
とても優しくて…とても、温かい…気持ちの籠もった、あ〜ちゃんらしい口付けだった…。

………


 「言いたいこと…全部あ〜ちゃんに言われちゃった…」
慈しむように、あたしを抱きしめ、頭を撫でながら、ゆかちゃんが呟く…。

 「ゆかも、同じだよ…」

 「のっちの存在は…ゆかにとって、とても大きいの…」

 「とても大きすぎて…言葉なんかじゃ上手く伝えられない…」

 「それでも…言葉で証明できれば、一番わかり易くて良いんだろうけど…ね…」

 「のっち…。…ずっと、ゆかのそばに居て…。のっちじゃなきゃ、だめ…のっちに、居て欲しいの…。お願い…」

あたしへの気持ちが表れたように、強く…でも優しく、抱きしめられる…。
 (…ゆかちゃん…)
頬に手を添えられ…ゆかちゃんの唇が、あたしの唇に、優しく…落とされる…。
ゆかちゃんの想いがいっぱい詰まった、とても優しい…でもどこか激しさも秘められたような…そんな不思議な、ゆかちゃんらしい口付けだった…。

………

…あたしは…何を迷ってたんだろうね…。
二人がこんなにも、あたしの事を想ってくれてるって言うのに…。
あたしの心を蝕んでいた黒い感情は…いつの間にか、すっかり消え去っていた。
あ〜ちゃんと、ゆかちゃんのおかげだね…。
あたしも、二人への想いを上手く言葉で伝えて上げたいけど…。
でも、あたしもやっぱり口下手だから…うまく言葉に出来ないと思う。
だから…。
あたしが、<今二人に一番伝えたい言葉>に、全ての気持ちをこめよう。

 「あ〜ちゃん…ゆかちゃん…」
もう迷ったりしない、黒い感情なんかに負けたりしない…あたしには、二人が居る。

 「本当に…<ありがとう>…!」

…あたしの気持ちはちゃんと届いただろうか…。

 「「のっち…」」

…あたしに向けられた二人の顔は…キラキラ輝いた、天使さんと女神様の眩しいくらいの笑顔だった!……




END





最終更新:2008年10月12日 17:33