アットウィキロゴ
ピコ、ピコ、ピコ

−−もう1回だけ話し合いたいんだけ
「メール?」
「わっ!」

覗き込まれてとっさに携帯画面を伏せるのはやましい気持ちがあるからじゃなくて。
ただ少し驚いただけ。

「そうだよ?悪い?」
「べ〜つ〜に〜」

そう言うとのっちは目の前の真っ赤なテーブルにカップをゴトっと置いてゆかと並んでソファーに沈んだ。

「ん。ゆかちゃんの。」
「…ありがと」

置かれたカップに手を伸ばしかけて、やめた。
携帯画面も開こうとして、やっぱりやめた。
全部やめてのっちを見る。
コーヒーをすすりながらテレビ画面を眺める横顔が綺麗で。
やっぱり、やめた。

「のっち」

テレビに夢中なのっちから、ん〜?なんて言う生返事が聞こえた。
やっぱり、やめた。

「やっぱり、やめよ?」

何を?だとか、どうして?だとか、嫌だ!だとか。これから始まる押し問答を想像してゆかは唇を噛み締める。

口をつけてたカップをゴトっと音たてて真っ赤なテーブルに置いて、のっちはうなだれた様に頭を落とした。
それでものっちの形のいい頭に手を伸ばすわけでもなく、ゆかはただ唇を噛み締めてのっちを見つめた。


「無理だよ?」


セリフとは似つかわしくない可愛い笑顔をゆかに向けて、のっちは背筋を伸ばす。
無理だよ、って何?

「無理って言われても、ゆかだって無理だよそんなん」
「約束したじゃん1ヶ月って」
「そうだけど」
「1ヶ月後ならいいけどまだそうじゃない。だから無理。やめない。」

のっちは笑った。楽しそうに笑った。
そんなのっちが少しだけ怖くなった。

「…ゆかの気持ちは?」

どうなんの?ゆかはまだ…

「ゆかちゃんの気持ちは、分かるよ。困らしてんのも分かる。」
「だったら!」
「でも、やめない。」

ダメだ。のっちには届かない。ゆかの気持ちなんて考えてない。分かってない。
泣かせないって言ったくせに。嘘つき。

涙を見せたくなくてとっさに顔を背けた。膝の上で固く握ってた手に生暖かい感触が重なったから、それもとっさに払いのけた。
それでも結局捕まえられて、強い力で、どうしようもないよ。

「…ごめん。でもお願い1ヶ月だけだから…」

ゆかの手を固く握って絞り出した音色が悲しくて

「1ヶ月…恋人でいてください」

強い力には逆らえない。弱い言葉にも…逆らえない。


つづく






最終更新:2009年12月24日 18:51