Side A
今日は実際にステージを組んで、音響や照明などを含めて本番さながらに行うリハの日
朝から本調子ではなかったけど、こんなことで弱音を吐いている場合じゃない
でも、始まった頃は良かったものの、中盤にさしかかった頃軽い頭痛が襲ってきた
少しなら、耐えられると思ったけど
疲れた体に極度の緊張…
精神的にもかなりキツイ
最終的に眩暈に襲われて、曲の途中でじゃがみ込んでしまった
隣のゆかちゃんは気付いてる
前に居るのっちも、そのうち気付く…
でもなんとか、すぐに立ち上がって、二人から外れて近くのスタッフに自分の状態を説明する
とりあえずその場で横になって様子を見る
人が集まってくる
はぁ…はぁ…
まいったな…、皆に心配掛けたくないのにな…
よりによって、こんなに人が多い時に…
早く、人のいない所に行きたい…
自分が情けなくて悔しくて、腕で顔を覆った
さっきの曲が終わって、二人も側に来てくれる
「あ〜ちゃん…」
呼ばれて力なく視線をあげると、そこに居たのはのっちだった
凄く真剣な表情で、あたしの真意を読み取る言葉
「人がいない方が良いか、それとも、このままココで大丈夫か…」
あたしは後から言われた言葉に、弱く首を横に振る
それだけで、あたしの心境が分かるみたいに、周りの人へと話をしてくれる
スタッフさんたちも分かってくれて、あたしは二人に支えられて楽屋へと歩いた
「大丈夫んなったらぁ、またすれば良いよ」
ゆかちゃんも優しくそう言ってくれる
「もっさん、三人だけにして貰える?」
楽屋に入る前に、のっちがそう言ってドアを開けた
「じゃあ、何かあったらいつでも言って?」
「はい、お願いします」
もっさんも了解してくれて、そのまま三人で楽屋へと入った
あたしが休めるように、場所を整えてくれるのっち
それを座ってあたしと一緒に、隣で肩を抱きながら待っててくれるゆかちゃん
そうだよ
あたしの側には、いつだって二人が居てくれるんだ
三人で居れることが何より大事じゃん、他に何を望む必要があるんだろう
のっちが居なかったら幸せだなんて思えない
それは、ゆかちゃんが居なくても同じコトだ
「あ〜ちゃん…動ける?」
準備を終えたのっちが、ゆかちゃんと反対側に来て聞いてくる
「ぅん」
あたしのすぐ前に場所を作ってくれたから、そこへ力なく横になって休む
「あ〜ちゃん、ちゃんと休まんかったんじゃろぅ?」
「…ぅん、ごめん…」
まったくもう。なんて言いながらおでこに置かれた手が、少しひんやりして気落ち良くて瞼を閉じた
「のっち、タオル濡らしてきて?」
「…」
「…のっち?」
「ぇ、あ、うんwごめんw行ってくる」
返事のなかったのっちに目を開けると
ちょうどのっちがタオルを手に、バタバタと部屋を出て行ったところだった
「やっぱのっちは、あ〜ちゃんのスーパーマンじゃね?なんか、格好良かったもんね」
「…なんか悔しいけど」
ゆかちゃんが言うように、やっぱりカッコ良かった
「…あ〜ちゃん、ごめんね?」
「なんで、謝るん?」
「私がのっちのこと、頼んじゃったから…。あ〜ちゃんに辛い想いさせちゃったんだよね…」
ヒヒッと笑ってから、なんだか切ないような表情をして
おでこに触れていた手で、あたしの前髪を弄りながら話し出したゆかちゃん
気持ち良いから、また瞼を閉じて会話をしていく
「そんなことないけぇ…ゆかちゃん悪くなぃ」
「けど、実際こんな状態にさせちゃったし…」
「確かに、のっちに止めよって言われたの、やだったけど…あたし要領悪いからさw頭では分かってんだけど、自分の気持ちの整理のしかた分かんなかったから、こんなことになったっていうか…」
「すごい辛かったんけど…でも、やっと、大丈夫かもって…のっちと二人とかじゃなくて…三人で一緒が良いなって、さっき、そう思ったんよ」
「そっか」
三人なら無敵になれる、なんだってできる
たとえ二人が言い合いしたって、もう一人が接着剤みたいになって繋ぎ合わせてくれる
「かと言って、のっちの側に居た事、後悔はしとらんよ。ちゃんと幸せだったから…そう思わせてくれたのっちの想い、今は信じたいから」
「そうじゃね」
思いのほかしっかりとした自分の気持ちが口から出てきて、ちょっと自分でも驚いてる
「じゃぁ…のっちにも言ってあげて?なにも言わんけど、すっごく心配しとるはずだから…。ね、のっち?」
「ぇ?」
ゆかちゃんの手が離れて、目を開けると
「え、ぃや、その…」
急に振られて、キョロキョロしだすのっちが、ゆかちゃんの隣に座っていた
いつの間にか戻ってたみたい
「のっち…」
「あ〜ちゃん…」
「私、ちょっともっさんと話してくるけぇ」
「え、ちょっとゆかちゃん?」
立ち上がってドアへ向かうゆかちゃんを、のっちが呼び止める
「あ、のっち、ちゃんとあ〜ちゃんの汗拭いてあげるんよ?」
「の、のっちが?」
「タオル持っとるじゃろ?ほんじゃね」
バタンと部屋のドアが閉まって
必然的にのっちと二人
ゆかちゃんを見送ると、最初、視線だけでコッチを伺ってきて
目が合うと、エヘwって笑って顔ごと向けてくれた
久しぶりで、少しドキドキする
やっぱり…まだ好きだな…
—つづく—
最終更新:2010年01月19日 17:49