㊖side:K
誕生日から数日。年末の日々は劇的に忙しく流れている。
ふと思い立って、暖房の効き過ぎた控え室を一人こっそり抜け出した…。
見上げた夜空にはオリオン座が輝いていた。
中心に並んだ三つの星。そのうちのひとつに指輪を翳す。
広島にいた頃、一人家の遠いのっちをいつからかうちの車で送るようになって
初めて……あ〜ちゃん抜きの二人だけの時間ができた。
密かに憧れていた「彩乃ちゃん」と「のっち」は正直全然違ったけれど
でも…なんか嫌じゃなくて、何をするのも楽しくて、もっとのっちを知りたくて、
二人いろいろなことを話した。夢を語り合いながらよく「よく見たよね…昔も」
突然左隣からのっちの声がした。「一人で何しよん」。言いながら空を見上げる横顔。
同じ思いでいてくれたことが嬉しくて、のっちに手を伸ばす。
「………っ」
そのとき、突風に吹き上げられた髪が視界を塞いで震えが走った。
縮こまって堪えているとその間にのっちが動いてしまって、ゆかの手は寂しく空を切った。
代わりに反対の手をのっちが包んで…………
風が、……止んだ。
「うぅわ…風強っ!今日も冷えるねー!」
「…うん」
……指を絡めて、ふと、思い出す。
………なんか前にも似たようなことがあったな……。
そう、事務所の前の道を二人で歩いてたときだ…。
寂しくて、のっちと手を繋ぎたかったのに上手くいかなくて……
………?
…………えっ?
…………もしかして
「………これまでも…そうだった……?」
「やっべ!マジさみ〜!!」
強風の中の小さな呟きは、のっちの耳には届かない。
ゆかが気づかなかっただけで、ずっとずっとそうだったの…?
ゆかが寒がるから、だからいつも、わざと…風上に立ってくれてたの…?
…………ずるい…。ずるいよのっち……。
のっちの背中に腕を回して、ギュっとしがみついた。
「っ?!…ゆ、ゆかちゃん…?」
立ちはだかって…くれちゃうんだ。守られてるんだな、ゆかは。
「……どうしたん…?」
まだゆかが気づかないだけで、見つけられないだけで
のっちはこういうの、もっと隠していたりするのかな
「…誰か……来ちゃう…かも…よ?」
サガしていきたいな、ずっとのっちの傍で。
「……のっち…」
サガして見つけて、こうやってのっちに触れて、ゆかは…
「………………大好き……」
のっちしか見えなくなる
fin.
最終更新:2010年01月19日 17:51