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「ゆかちゃん起きれる?できたよお粥さん」
「ん…ありがと」

のっちの風邪が治ったと思ったらお約束のようにゆかが風邪ひいた。
のっちは『のっちが移したんだー!』って騒いで看病に来てくれた。
のっちに移されたと言うよりあの日あの冷えた部屋でうたた寝したことが原因だと思うけど、ゆかはのっちの好意を素直に受け入れた。
…だってやっぱり心細いんだもん…。のっちでもいてくれたら心強いし。

「熱いよー?ふーふーしたげようか?」
「自分で、するよ…」

タマゴが入って黄色みがかったそれを口に運ぶ。
その動作も億劫に感じるほど、腕がダルい。全身がダルい。

「アツ…」
「もーほら〜。貸して、のっちがやるから」

ひょいっとレンゲをゆかから奪って得意げにふーふーするのっち。…もうなんでもいいや。
とにかく体がダルい…。

「はい、あ〜ん」
「…自分で食べるよぉ」
「いいからっ。あ〜ん」
「…」

とにかく…体がダルい。

「お薬飲んで。はい水。」

水と一緒に錠剤を2つ流し込む。
こんなこと前にもあったな…。よく寝ろよって言って手を繋いでてくれた。ゆかが寝るまでそばにいてくれた。寝た後もずっとそばにいてくれた。優しく頬にキスしてくれた。わがまま言っても笑ってくれた。隣で並んでテレビ見て、その距離がもどかしくてゆかから近づいた。ごつごつした手が好きだった。笑うとできるえくぼが好きだった。日に焼けた肌も短いのに柔らかい髪もゆかを撫でる手もゆかを呼ぶ声も好きだよって言葉も全部全部嘘じゃなかったんだよね?本当にゆかの彼氏だったんだよね?じゃあなんで今ここにいないの?なんで今手を繋いでくれてないの?なんで他の人がいいって言うの?なんで…なんで…なんでよ…。
頭がぼーっとする…もうやだ…。

「…体辛いよね?泣かないで?」
「…ぅ〜、のっち…」
「ゆかちゃん、横になろっか?」
「の、ちぃ…」

呼びたい名前はのっちじゃない。
のっちじゃないのにのっちしかいない。
耳が熱いし首も熱い。
のっちの冷えた手が気持ちいい。
涙を拭ってくれる指が…冷たいよのっち。

こんなに想っても想っても、ゆかの前にいる人は変わらない。
いつもいつも夢を見るんだ。楽しかった頃の夢それと、…知らない誰かと歩いてく夢。
もうやだよ。こんなのやだ。帰ってきてよ。ゆかのとこに…お願いだから…。

「手、握るね?よしよし…」

ゆかの手を握って背中を撫でてくれるのっちの手はもう温かかった。優しかった。
この人はゆかを好きなんだ。なんでよ。なんでよのっち。
ゆか体が辛いから泣いてるんじゃないよ?
今ゆかの頭を占領してるのはあいつなんだよ?
ゆか最低なんだよ?なんも知らないのっちに背中さすらせて、ゆか最低だよ。
あいつの代わりでのっちに甘えてる。ゆか最低だ。最低だ。ゆかが泣いてる理由聞いたらのっちどう思うかな。
のっちも泣くのかな。のっち、のっち、のっち…。



「……ん、」

瞼が重い。体が熱い…汗びしょびしょで気持ち悪い。いつの間にか寝ちゃってたんだ…。
薬が効いてるのか寝る前よりは体が軽い。起き上がろうと体を起こすけど右手だけはベッドに持ってかれたままで。

右手の先にはのっちがいた。静かに聞こえてくる寝息に安心する。
…ずっと繋いでてくれたんだ。のっちが、繋いでてくれたんだ。

それなのにゆかときたら…見た夢はやっぱりあいつの夢で。
こんなに好きをくれる人の温度に触れてもまだ、おさまりそうになかった。


つづく





最終更新:2010年01月19日 17:57