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コーヒーショップのバイトを始めて早二週間。
だいぶ仕事にも慣れた。性悪女店長には慣れないけど。

あっ、まただ。

最近よく見る彼女。
同じ時間にMサイズ280円のカフェラテを買いに来る彼女。
正確に言うと無料券と引き換えしている。

この無料券って、あまり出回ってないってきいてるんだけどな。
なんでこの人こんなにいっぱい持ってるんだろ。
この人もこの前のゆかがあ〜ちゃんにやったようなヘマされたのかな?

ゆかはそんな事を思いつつ、彼女にカフェラテを渡す。
顔を覗くとかなりの美人さんだ。年は同世代くらいかな。
でも無愛想でちょっと怖かった。全身黒尽くめだし。
いくら美人でも無愛想じゃあね・・・。
やっぱり女の子はあ〜ちゃんみたいに愛嬌がないとね〜。

左手の薬指にゴツい指輪が光ったのが見えた。
それは黒尽くめの彼女にとても似合ってた。
ゆかは彼女の彼氏はどんな人なんだろうと、ふと想像した。
きっと、似たもの同士の無愛想なんだろうなって勝手に思ったら、可笑しくなった。

バイトが終わって携帯をチェックするとあ〜ちゃんからメールが入ってた。
それだけでバイトの疲れが吹っ飛んだ。

『バイト終わったらメールちょーだい。一緒にご飯食べない?あ〜ちゃん、安くて美味しいご飯屋さん見つけたんよ〜』
やったーー!あ〜ちゃんとご飯だ!!嬉しい!!
ゆかは速攻返信メールを打った。
そして待ち合わせの場所に急いで向かった。

「ごめんごめん。待った?」
「ううん。あ〜ちゃんも今来たところじゃけぇ」
休日にあ〜ちゃんと遊べるなんて思ってなかったよ。
貴重な休日にご飯の相手をゆかに選んでくれたのが嬉しかった。
なんつーの?彼氏に勝った?って感じ。きゃは。




「ごめんね、ゆかちゃん。急に誘っちゃって」
「そんな事ないよ。むしろ嬉しかったよw」
「そう?そう言ってもらえると、あ〜ちゃんも嬉しいwえへへ」
ゆかも釣られて笑う。
あ〜ちゃんといると自然と笑顔になる。元気になる。この子はそういうのを持った子。

「今日、あ〜ちゃんなんも予定なくて、ずっと部屋に篭りっきりだったから、喋りたくてしょうがないんよ。ウザかったら言ってねw」
ゆかもあ〜ちゃんも広島からの上京組。
お互いに独り暮らし。ゆかんちは、普通の学生用のアパートだけど、あ〜ちゃんちはセキュリティー完備のちょっとお高いマンション。
どうやらあ〜ちゃんの実家は地元じゃソコソコ名の知れてる地主さんらしい。
あ〜ちゃんは自虐的に自分の親のコトを親バカと言ってる。
まー、ご両親の気持ちはわかるよ。そら〜、大事な娘を大都会にひとりで行かせるのって一大事だもんね。
住居くらいは安全な所に住まわせたいよね。

でもね・・・ゆかはまだあ〜ちゃんちにお呼ばれさせれないんだよな・・・。
てか、あ〜ちゃんは友達を部屋に上げないってコトで有名みたい。
なんでだろ?やっぱり、彼氏と同棲してるから?他の子達はみんなそう思ってるみたいだけど。
もちろん、ゆかもそう思ってるけど、それならそう言ってほしいな。

なんで隠すんだろ?なにか他に隠す理由があるんのかな?
もしかして、不倫してるとか!?まさか、あ〜ちゃんにかぎって、ないわ〜w

「・・・ゆかちゃん?」
「へっ?」
あっ、ヤバイヤバイ。ちょっと、トンでたw

「あっ。着いた〜。ここじゃけぇ」
あ〜ちゃんが連れてってくれたお店は、いかにもあ〜ちゃんが好きそうな感じのかわいい洋食屋さんだった。

「ここのオムライスが美味しいんよ」
ゆかはあ〜ちゃんお勧めのオムライスを頼んだ。
あ〜ちゃんはビーフシチューを頼んだ。
たしかに美味しかった。
あ〜ちゃんと一緒に食べてるから余計に美味しく感じた。

「・・・彼氏と食べなくていいの?」
ゆかはそれとなく探りを入れてみた。それとなくって、めっちゃストレートに訊いちゃったw
あ〜ちゃんの右手に持っていたスプーンが止まった。
「”彼氏”か・・・」って、微かに聞き取れるくらいの小声であ〜ちゃんは呟いたのをゆかは逃さなかった。




「いいのいいの。あんなん、ほっとけばいいんよw」

あっ、認めた。

やっぱり、いるんだ。彼氏。

「それに”あれ”と一緒にいるより、ゆかちゃんと喋ってるほうが楽しいんだもんw」
「えー、そうなん?」
ヤッバイ、それすごく嬉しい。きっと今ゆかの顔緩みっぱなしだよ。
ごめんねーあ〜ちゃんの彼氏さん。あ〜ちゃんはゆかと一緒にいる方が楽しいんだってw勝った!!イヒヒ。

「じゃあ、またね」
「うん。気をつけてね」
ゆかたちはお腹一杯になって満足してバイバイした。
本当はもっとあ〜ちゃんと一緒にいたかったんだけど、明日は学校だから止めといた。
そうだ!!アパート着いたら、あ〜ちゃんにメール送ろう。

『今日は誘ってくれてありがとう。今度、彼氏見せてよw』
『ご飯美味しかったね〜。また行こう!!おやすみぃ』
あ〜ちゃんからの返信はちょっと素っ気無かった。
ゆかが彼氏見せてよって打ったのに、それの返事がなかった。
うーん・・・ちょっとツッコみすぎた?もしかして、嫌な思いさせちゃった?

彼氏くらい紹介してくれたっていいじゃん。
減るもんじゃないし。ゆかは友達の彼氏を取っちゃうタイプじゃないし。
まー、そのうち会わせてくれるかな?

翌日の大学のお昼休み。
いつもの通り一緒にご飯を食べてると。
♪〜。
あ〜ちゃんの携帯が鳴った。
この着信音はきっと彼氏。そう教えてもらった訳じゃないけど、その着信に出るあ〜ちゃんの態度でわかる。



「ごめん。ちょっと電話出てええ?」
「いいよいいよ」
あ〜ちゃんは席を立って少し距離を取って電話に出た。
それでも、あ〜ちゃんの声は所々聞き取れた。
どうやら、放課後彼氏とデートするみたい。
「いいな、いいな」
ゆかがそう呟くと、あ〜ちゃんが「なにが?」って不思議そうな顔で訊いてきた。

「あ〜ちゃんが羨ましいよ。なんか彼氏に愛されてるって感じがするんじゃもんw」
「えー、ないないw」
「だって、学校終わったらデートすんでしょ?」
「まー、それは向こうが暇になったからねぇ・・・遊び相手が欲しかっただけじゃろw」
「いいな〜。ゆかはこれからバイトだよ〜嫌だな」
「頑張って。性悪店長に負けるな!!」
あ〜ちゃんに励まされながら、ゆかは重い足取りでバイト先へ向かった。

あっ、まただ。

ゆかがカウンターに入ると同時に例の彼女が来店した。
「いらっしゃいませ」
営業スマイルで接客。彼女はカウンターに置いてあるメニュー表をマジマジと見る。

どうせ、いつものMサイズ280円のカフェラテでしょ?
それで無料券でしょ?
なんでそんなにメニュー表がっつり見てるのよ。
ゆかは心の中でそう彼女に突っ込む。

「これと、これ」
彼女が指差したのは、いつものカフェラテとアイスロイヤルミルクティーだった。

いつもと少し違うオーダーでちょっと意外だった。
ひとりでふたつ飲むのかな?んなわけないかw誰の分だろ?
そんな事を思いつつ、レジを打つ。
それでも支払いはいつもの無料券だった。

彼女に品物を渡した時「ありがと」って言われた。
いつもはかなり無愛想で何も言わず受け取るだけの人がお礼を言うなんて。
ちょっと驚いた。
なんだろ?良い事でもあったのかな?
もしかして、これから彼氏とデート?
そのミルクティーは彼氏の分?

ちくしょー、あ〜ちゃんもさっきの彼女もみんなデートか〜。
いいなー、いいなー、ゆかもデートしたい!!






最終更新:2010年01月19日 18:29