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だって、雨が降ってるんだもん。
「…行かないで、」
「え、、」
「…ここに、いて」


[013:get out of the rain]


「ごめん!今日合コンなんだー」


夕食にあ〜ちゃんを誘った。見事に断られた。
なんだかやっぱり二人でカレー鍋をするのひ気がひける。
だけど、あ〜ちゃんは予定があった。
なんだろ。ゆか、変な気分だ。ちょっと淋しいけど、ちょっぴりドキドキもする。


「のっちも誘われてたんだけどさー」
「え、?」
「だーーいじな用があるけぇ、断られたんよー」
「は?」
「え?」


…まただ。のっちはゆかとの約束なんてすぐに忘れる。
他に大事な予定なんか作って、、。そもそも大事な予定ってなんなんよ。
あきらかにテンションの下がったゆかを見て、あ〜ちゃんは笑った。
なんよ?あ〜ちゃん?なんよ?なんよ?なんよー


「…なんよ?」
「ばーーかw」
「へ?ちょっ、いくらゆかでも、
「カレー鍋!!」
「はぃい?」
「ゆかちゃんがカレー鍋作ってくれるから無理ー!だってー」
「え、?」
「あ〜ちゃん先に合コン入れちゃったからさー。ごめんねー」
「え?あ、いや、ううん。大丈夫」
「ふふw」
「うん、、大丈夫」


なんよ、それ。そんな楽しみにしてくれてるのかな?
遊び人ののっちが合コン断ってまで、、ゆかを…選んだ、?


「カレー鍋ちょー楽しみーって言ってたよー」
「…え?あ、うん。上手にできるかなー」


……違うか。カレー鍋を選んだんだ。
そもそものっちに合コンって似合わない気がするな。てか似合わない。
そんなの行かなくてもモテモテなんだし。それなら行かなくていいじゃん。
カレー鍋か、、そっか、そっか、、。


「ゆかちゃんの手料理が楽しみー!だってw」


ニヤニヤしてあ〜ちゃんは言った。
うっそ。そうなの?
やっぱりゆか、選んでくれたん?




じゃよろしくー楽しんでー、あ〜ちゃんはニヤニヤしながら手を振った。
これから合コンに行って、あの女豹ちゃんはいったいどこのどいつにお持ち帰りされるんだろ。
そんなことを思いながらひとり部屋でのっちの帰りを待った。
材料を切って、あとは鍋にぶちこめばいんでしょ?このスープいれて、煮ればいんでしょ?あ、煮る、とは違うか?
なんて考えて。誰かのために帰りを待って、料理の支度するのって悪くない。
なんか、なんか、、


「…新婚みたい」


呟いた言葉にゆかの顔は熱くなった。
ばかみたい。妄想族なんて、やめてよね自分。
しかも相手がのっちって。笑っちゃうにもほどがある。


—ピンポーン—


部屋のチャイムが鳴る。のっちだ。
ふふ、チャイムなんか鳴らして、おかしいの。
いつもゆかはノックもしないで開きっぱなしののっちの部屋に入ってくのに。
のっちって律儀ー。


「はーい」
「のっちだよー」


その声を聞いて、玄関へとパタパタ小走り。
ゆかは自然と嬉しくなる。


「あいてるよー」
「あーけーてー」


ドア越しに可愛い子供みたいな甘い声がする。
ゆかは急いでドアをあけた。早くのっちに会いたかった。


「じゃーんっ!」


ドアをあけるとのっちの顔、、の前に白い箱。


「アイス買ってきたー!!」


ひょっこり横から顔出して、はしゃぐ子供みたいに可愛い笑顔。


「うわっ!ありがとー」
「うん!ゆかちんアイス好きって言ってたでしょ?あんね、あんね?ここねーこの店ね、すっごいんだよ!もうねー、
「わ、わかったわかった!!先に部屋、あがって?w」
「あ、あーそっか!あはwごめん、なんか緊張しちゃったー」


えへへ、って笑って、おじゃましまーす、なんて言ってスニーカーを脱いだ。
あまりにも部屋をキョロキョロ見渡すもんだから、
「あんま見んでよー」
って言うと、
「なんでー?見せてよー」
って。のっちの目を隠そうとした手を握られて、ブンブン振られて、


「かわいーねー」


なんて笑顔を見せるもんだから、なんだかゆかが緊張するじゃん。ばかのっち。





アイスをしまって、ゆかはカレー鍋を仕上げる。
「座ってて」
そう言ったら、のっちはラグの上にあぐらをかいて、背を丸めて。
またキョロキョロして、お利口さんにして、、超かわいい。


「すぐできるから待っ
「ねぇゆかちんっ!」


のっちの声がゆかを遮る。
ニコニコ笑って、身体をゆらゆら揺らして。のっちはゆかの名前を呼ぶ。


「なーに?」
「えへへwなんか、新婚さんみたいだねー」




え?ちょ、っと、、。
なんよ、それ、、そんなの、、、言っちゃだめだって、のっち。
ゆかの顔、今絶対赤い。絶対見られたくない。


「…す、ぐ、つくるけぇ、」


それだけ言ってキッチンに迎う。背中越しにのっちが「うーん」って嬉しそうに返事をした。
自分の言ったことの重大さ、ちょっとは気付いてほしい。
女の子はそうゆうのでドキドキしちゃうの!運命とか信じちゃうの!
もしや、のっちエスパー?なんでなんで?
…てか、なんでゆかこんなにドキドキするんだろ。
このドキドキは何を意味するの?
相手はのっちだよ?あの、のっち。
ゆか、どうしたんだろ、、、。





「うまーっ!!」


カレー鍋は上出来だった。のっちは「うましうまし」っていっぱい食べてくれた。
器に取り分けて、それがなくなると「ゆかちん取ってー」とか「ゆかちんよそってー」って、甘えた声を出す。
…これか。こいつがモテるのは、これか?


「これがギャップ萌え、か?」
「ふぇ?」


のっちは変な声を出して、何言ってんのー?って笑った。…無邪気だ。
なんてゆうか、母性本能をくすぐられるとゆうか。母性とかまだよくわかんないから理解しがたいけど、、
なんか、のっちって、、


「可愛い」


ゆかの言葉にのっちは目を丸くさせて驚いた。でもすぐに肩をすぼめて、照れた表情をした。
…なんか。なんか、そんな表情までもが可愛いよ、うん。のっち可愛いよ。


「何言ってんのー」
「いや、なんかさー?最初思ってたのと違うってゆーかー」
「あ、それ、よく言われる!」
「でしょー?」
「みんなのっちのことどう思ってたんだ!ってゆーねw」
「いや、もっとこう、なんか」
「なんか?」
「…クール?みたい、な?」
「ははwなんだそれw」
「いやでも!実際そう思ったよー」
「そう?のっちわりと愛想いいと思ってたんだけどー」
「あ、それは違う!愛想よくないよw仲良くなったら、可愛かったけど」
「うはっwなんだそれー」
「だってーなんかのっち、可愛いんだもん」
「・・・」
「ん?」
「ゆかちんのが、かわいいよ」
「えー、またぁ、
「ほんとにっ!」
「ちょ、、」
「すげぇかわいい」


無邪気に笑ってたくせして、ずるいよのっち。そんな顔で嬉しくなること言うなんて。
なんか、ゆか、おかしいよ。わかんない。わかんないんだけど、これ、なんて気持ちなんだろ?





「あ!そうだ!」


また無邪気な顔に戻って、のっちは話をはじめる。
ゆかの脳みそ、ついていけるかな?
さっきののっちの顔と言葉が、頭の中で何度もリピートされてはゆかを熱くさせる。
この感情は、何?
ゆかはこれによく似た感情を知っている。
知っているけど、、、これは間違いだ。そうだ、間違い、なんだ。
うん、そう。絶対故障だ。ゆか、ばかになった。


「のっちね、更生してんの」
「はっ?」


ゆかの脳みそ、動け!
次の話題に進まないと。せっかく楽しい夕食なんだから。久々のっちと話が出来るんだから。
…てか今、なんて言った?


「だからー、もうちょっとちゃんとしよーかなーって」
「…それは、そのー?」
「あー…うん。もうフラフラしたくないってゆーかー」
「…あそびで、とか?しない、ってこと?」
「…うん。もうヤらないw」
「…なんで?」
「えー!なんでって、そっちが普通でしょー?w」
「ま、まぁねw」
「でもまぁ、」
「うん?」
「もう、好きな人としかシないの」




—ツキン—


あれ?
なんだろ?


「ん?どしたー?」
「え?いや、、。そっかー、うん。更生しなよ!それがまともよw」
「うんw」


あれ?
痛い。どっかが。
嬉しいけど、悲しいんだ。
ねぇのっち、やっと普通に戻って、のっちに本来の意味の友達が出来るのは嬉しいよ。ゆかだって嬉しい。
のっちが更生するのは、間違いなく嬉しい。
でも、、でも、、、


「…好きな人、できた?」
「ん?んー…わかんないw」
「…そっか、、」


……好きな人なんか、つくらなくていいよ、のっち。




窓の外はまた雨だった。
それを理由にのっちはゆかの部屋から帰ろうとしなかった。
真っ暗な東京の雨がのっちを引き止めるのなら、このまま降り続ければいいよ。
のっちがいるなら、ゆかは怖いままでいい。
のっちがいるなら、それでも、いい。





最終更新:2010年01月19日 18:30