いつもの夜の風景に一味加わる季節、冬。
今日も日が落ちると光が灯る住宅街。キラキラの中を歩く。もうこんな季節。
「どの家もすごいイルミネーション!」
「ねー」
隣でのっちの高い声が聞こえた。家たちを飾る色んな光に興奮してるみたいだ。
12月も中頃になって寒さはよりいっそう厳しくなってきた。ゆかはマフラーに顔をうめる。右手はポケットの中。左手はのっちのポケットの中。
「ね〜ゆかちゃん?」
「なぁに?」
「もうすぐ誕生日だねっ」
キラキラをバックにキラキラ笑うのっちがかわいらしい
。思わず和んで顔がゆるむ。
「何欲しい?」
「えーそう言うの聞く派?」
「聞く派!ちゃんと欲しい物あげたいし。」
ポケットの中で繋がれてる手に2、3度力が入った。手を繋ぐとのっちはよくこうして握ってくる。
ゆかはそれに答るでもなく拒むでもなく、そのままにしておく。
…欲しい物あげたいって、言ったらなんでもくれんのかな?
ゆか今欲しいバッグあるんだよね。お気に入りのブランドのやつ。軽く5万はこすけどそれでもいいのかな?
ってそんな高価な物貰うわけにもいかないか。親じゃあるまいし。
「なんも欲しい物ないからなんでもいいよ〜」
「えーそれ1番困るよ!なんでもいいとか困る困る!」
とかなんとか言いながら指を絡ませてくるんだから抜目ないな〜。これやだな…なんか照れる。
さりげなく指をとこうとしてもちょっとやそっとじゃ離してくれない。
「ちょっとのっち!普通に繋ごうよ。」
「普通じゃん」
「違うよ!もっとノーマルに!」
「ノーマルじゃん」
どこがよ!
ノーマルノ〜マルーとかなんとか適当に歌いながら上機嫌ののっちはヘラヘラ笑ってる。
何度も何度もゆかの手をにぎにぎしながら楽しそうに。
「ゆかちゃんこれ恋人繋ぎって言うんだよ?」
「…知ってる」
「普通じゃん?」
「…そうだね」
「プレゼント何がいい?」
「…なんもいらない」
「もーごめん!怒んないでよー離すから。ごめんごめん!」
別に嫌じゃないけど。嫌じゃないんだけどねのっち…。ごめんね?
ゆかはのっちのポケットから手を引き抜いて自分のポケットにしまった。
そうしてから後悔した。
のっちが何もしゃべらなくなったから。
…まずい、気まずい。
「…ゆか靴下が欲しい」
「く、靴下?」
「うん、バイトの時用の靴下とかあったかモコモコ靴下とか」
「え、そんなんでいいの?」
「いいの」
「そっか…分かった」
声が寂しそうで、ゆかはのっちの顔を見るのが怖くなった。眉をハの字にしてるとこは極力見たくないから。
まずいな〜…ちょっと色々と、まずいな。
チラっと横を盗み見ると、ぼーっと遠くを見る目で歩いてるのっちがいて…まずいな。ちょっと色々と、適当すぎた?
「ごめん…手繋ぐ?」
「ゆかちゃん、クリスマスは何が欲しい?」
ゆかが出した手をまた簡単に掴んで自分のポケットの中に引きずり込んだのっちは、さっきまでの会話はまるでなかったみたいにキリッと切り替えた。すごい、さすがだ。
「…手袋」
つづく
最終更新:2010年01月19日 18:42