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ふたりの関係を知った今。
やっぱり気になるのはふたりの過去。
これは訊いて良いのか、悪いのか。

きっとこれはただの好奇心。
ふたりのためを思って聞き出そうといてるんじゃないから、訊くことに後ろめたさを感じるんだ。

でも知りたい。
どうしてふたりはそっちの世界にいるのか。
元々そっちの世界の人たちなのか。
どっちかが連れ込んだのか。
たまたまふたりでそこにいるだけなのか。

あー、知りたい。
知りたい、知りたい、知りたい、知りたい!!
ふたりの始まりが知りたい。

てことで、好奇心には勝てなかったゆかは、あ〜ちゃんを自分のアパートに招き入れた。
さすがにまだ打ち解けてないのっちを呼ぶのは止めた。
と言っても彼女は今仕事が忙しいらしくて、うちらと遊んでいる暇がないそうだ。
なんの仕事してるんだか・・・。

「これ激ウマ!!」
今あ〜ちゃんとふたりで時期的にはちょっと早いお鍋をつついてる。
あ〜ちゃんはこのお鍋にご満悦。お酒の力も手伝ってかなりの上機嫌。

よし!!今だ!!ここで訊かなちゃどこで訊く!!
ゆかは景気づけに一口缶チューハイをぐいっと呑んで、あ〜ちゃんに問いかけた。

「あ〜ちゃん!!」
「うん?どしたん?なんでそんな意気込んでるんよw」
「あ、のさ・・・」
「んー」
「どうやってのっちと付き合うことになったん?」
あっ、ヤバイ。今、あ〜ちゃんの口元がピクって動いた。
ゆかいくらなんでもKYだった?てか、KYってもう古いw?

「知りたいの?」
「・・・うん」
「そぉぉんなに知りたい?」
「うん」
「えぇ〜どっしよっかな〜」
あ〜ちゃんはもったいぶったような言い方。
もしかして、本当は話したかったとか?てか、ちょっと酔ってる?

「うーん。のっちには内緒だーよ」
「うん。大丈夫」
「”鍵”だったんよ」
「カギ?」
「そう鍵。家の鍵」




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
大学一年の時、同じサークル内の先輩とちょっと付き合ってたんよ。
あ〜ちゃんは別にそこまで好きじゃなかったんだけど、あまりにもしつこいから渋々付き合ってたんだけどw
その先輩も上京組でアパートに独り暮らしだったの。そんでいつものようにあ〜ちゃんは先輩の家に遊びにいったんよ。
したら、先輩の隣の部屋の前に荷物を散らかしてる女の人がいたんよ。まー、それがのっちだったんだけど。
もうね周りを気にせず自分の荷物を散らかしてるから、あ〜ちゃんのっちに訪ねたんよ。「どうしたんですか?」って。
したら、のっちはめっちゃ睨んできて、あ〜ちゃん初対面の人にガン付けられたの初めてだったからちょっとビビっちゃったの。
でもね後からのっちに聞いたんだけど、あの時はのっちコンタクトが渇いてて、目が痛くて睨んだようになっちゃったって言ってたw
あー、ごめん。話の続きよねwそんでのっちが「家の鍵無くした」って言ったんよ。
だからあ〜ちゃんは「大家さんに合鍵借りればいいんじゃないですか?」って親切に言ってあげたんよ。したらのっちなんて言ったと思う?
「それはめんどい」って言ったんよ!!鍵がないと家に入れんのにめんどいって言ったんよ。じゃあどうやって入るのよって感じでしょ?
だからあ〜ちゃん訊いたんよ。「じゃあどうするんですか?」って。したらのっちなんて言ったと思う?
「部屋入らせてもらってもいいですか?ベランダから自分ちに入ります」って言ったんよ。えー!!って思っちゃって。だって先輩の部屋3階だったんよ。
結構高さあるのに、のっちは大家さんに頼るよりも、自分でベランダから入って開けるのを選んだんよ。これって、変わっとるじゃろ?
で、ちょうどあ〜ちゃん先輩に合鍵借りてたから、のっちを入れてあげたの。のっちは平気な顔してひょいって簡単に自分のベランダに行ったの。
あ〜ちゃんそれ目の前で見てちょっと感動しちゃったんよ。でもその後、のっちからお礼の一言もなしよ!!
正直、ちょっとイラっとしっちゃったんよねwさっきの感動かえせって感じwそれからまた1週間くらい経った頃かな?またのっちと部屋の前で会ったんよ。
そん時はあ〜ちゃんね、カレー作りすぎて自分で食べきれなくなっちゃってねぇ。先輩におすそ分けしようと思ってタッパにカレー入れて持っていってあげたんよ。
でも先輩家にいなくて、あ〜ちゃん合鍵持ってなくて。カレーどうしようって思ってたのね。
とりあえず先輩帰ってくるまでドアの前で待ってようかなって思ってたら、のっちに「鍵ないの?」って話しかけられたのね。
「ない」って答えたら、のっちは「帰ってくるまでうちで待ってれば?」って言ってくれたんよ。
今ののっちはおにぎりみたいな髪しとるけど、この時はショートだったから今よりももっとシャープな感じでかなり美人さんだったのよ。
この前はあんなに無愛想だった人が今日はなんで親切にしてくれるんだろうって思ったのね。外で待ってるのは目立つから結局入らせてもらったんよ。
んで、のっちの部屋に入ったらビックリ!!生活感がまったくなかったの。部屋にあるのはベッドと冷蔵庫とパソコンくらいなんよ。
あんな綺麗な顔して、部屋の中は殺風景!?みたいなwこの子、変わってる!おもしろい!って、あ〜ちゃんその時ちょっと興味が湧いたのね。
先輩のこと「彼氏?」って訊かれて、「ようわからん」って答えて「付き合ってるんじゃないの?」てまた訊かれて「しつこいから付き合ってあげてる」って答えたのね。
そしたらのっちは「隣の奴、キミ以外の女何度も連れて帰ってきてるよ?夜、ヤってる時の声うるさいんだw」ってニヤニヤして言ってくるんよ!
それ聞いてあ〜ちゃんキーってなっちゃって。先輩ムカつくと思わない?あ〜ちゃんの事、好き好き好きーって言っとったくせに、他の女がいたんじゃって!!
そんであ〜ちゃんのっちの部屋か飛び出しちゃったんよ。帰り際に先輩の部屋のドアおもいっきし蹴って帰ったのよ。
もうねそっから先輩とは連絡しなかったし、あっちからきても無視しまっくたのwそしたら向こうも諦めたみたい。
で、あ〜ちゃん思い出したんよ。のっちの部屋にカレーが入ったタッパを忘れてったこと。
ぶっちゃけぇタッパなんていらなかったんだけど、なんかねもう一度のっちに会いたくなったんよね。きっとこの時はまだ興味本位ってやつ?
それでねぇ・・・・




前置きがヒジョーに長くて、やっと本題に入ろうとしたのに、タイミング悪くあ〜ちゃんの携帯が鳴った。
この着信音はきっとのっちだ。
ごめーん、ちょっと出ていい?って言いながら、ゆかの許可は聞かず電話にでるあ〜ちゃん。
ゆかはそのうちに食べ終えた鍋を片付ける。

「ねぇ、ゆかちゃん。柿食べる?」
「鍵?」
「カギじゃねーよwカーキ。果物の柿」
「あっあぁw食べる食べる」
「なんかねーのっちが職場の人に貰ったんだって。今から持ってくるみたい。てか、のっち来ていいよね?」
「うん。全然ええよw」
えー、のっち来ちゃうの!?のっちが来たらさっきのあ〜ちゃんの話の続き聞けなくなっちゃうじゃん。
てかそれ以前に、あ〜ちゃん電話が終わっても話がまだ終わってないの気付いてないでしょ。
だって鼻唄歌って三本目の缶チューハイ開けてるし。これじゃゆかは蛇の生殺しだよ。

「で、で、あ〜ちゃん。そんで話の続きは?」
ゆかは待ってらんなくて、あ〜ちゃんに催促をした。
「あっ!あぁ・・・えっと、どこまで話したっけぇ?」
「タッパをのっちんちに取りに行ったところからだよ?」
「そうそう、そんでね〜・・・」

ピンポーン。
あぁ・・・なんてタイミングなんだろ・・・。
きっとインターホンを押したのはのっちだ。てか、のっちしかいないでしょ。
ほんまに、今日ののっちはタイミング悪すぎ!!どっかから見てんじゃないの!?ってくらいよ。

ゆかはのっちを入れるためドアを開けてあげた。
「ども」
相変わらずの無愛想。
「こんばんわ」
「これ」
”これ”と言って渡されたのはビニール袋に入ったたくさんの柿。
エッ!こんなに?さすがにゆかひとりじゃこんなに食べきれないよ。




「あ〜ちゃん。帰るよ」
のっちは部屋の奥を覗いてあ〜ちゃんを呼ぶ。
「えー、まだ帰りたくなーい。ぎゃはは」

「綾香、何杯呑んだ?」
柿を持ってボーっとしてたゆかにのっちが話しかけてきた。
「え?えーと、三杯かな?たしか・・・」
「マジで?っち・・・」
のっちは小さく舌打ちした。
え?怖っ。なに?ゆかなんかしちゃった?
「あ〜ちゃんお酒ダメな人なの?」
「・・・いや。そうじゃなくて、酒癖が悪いのよ。三杯以上呑むと、手に負えなくなる」
「そうなん?」
そう言えば、三杯目辺りからあ〜ちゃんめっちゃテンション高い気がしたような。

「あ〜ちゃーん。ほら、帰るよ」
のっちは玄関に立ったまま、またあ〜ちゃんを呼ぶ。
「やあぁだ。まだ呑むのぉぉ。」
「ダメ。今日はもう帰るの!」
「やぁぁだ。今日はここに泊まるもん。ねぇー、ゆーかちゃん?」
えっ?急にあ〜ちゃんに振られても困っちゃうよ。
横にいる無愛想なのっちを恐ろしげに見ると、険しい顔で首を横に振った。

「あ〜ちゃん。今日は帰ったほうがええよ。のっちが迎えにきてくれてるし」
「えぇぇ!?ゆかちゃんもそんなこと言うん?ひど!!あ〜ちゃんを仲間はずれしようとしとるんじゃろ?」
「そ、そんなことないけぇ」
「上がっていい?」
ゆかがオロオロしだすとのっちが助け舟を出してくれた。
のっちはあ〜ちゃんの元に寄ると、あ〜ちゃんの荷物を片付けていった。




「ほら、行くよ」
のっちは立ち上がってあ〜ちゃんの腕を掴んだ。
あ〜ちゃんはまだ立とうとしない。
「あ〜ちゃん、立てん。歩きたくないけぇ」
のっちの足をポカポカ叩くあ〜ちゃんはまるで駄々をこねてる小さい子みたいだ。
三杯以上呑むと、手に負えなくなるってのは本当のようだ。
「ほら」
のっちは一旦しゃがんで背中をあ〜ちゃんに向けた。いわゆる、おんぶをする格好だ。
「うー・・・」
あ〜ちゃんは観念したようにのっちの背中に乗った。
ふたりのやりとりはあまりにも自然で、ゆかはただボケっと傍観者になっていた。
見ているだけしか出来なかった。あのふたりの間に入れる隙間は1ミクロもない。

「わりぃ、綾香の靴・・・取ってくれる?」
「あっ、うん」
のっちはあ〜ちゃんを背負ったまま、器用に自分の靴を履いた。
その行為はすごく慣れていて何度もこういう事があったんだなって思った。

のっちに背負われてるあ〜ちゃんはいつのまにか寝息を立てている。
ゆかは両手が塞いでるのっちのかわりに玄関のドアを開けてあげた。

「ごめんね。こんなみっともない姿見せちゃって。綾香のこと嫌わないでやって」
のっちは帰り際そんな事を眉毛をハノ字に下げながら呟いた。
「ううん。こんなんで嫌いにならないよ。大丈夫じゃけぇ。気をつけてね」
ゆかは玄関を出てのっちに手を振る。

「おやすみ」
そう言うのっちはまだハノ字眉でぎこちない笑顔をゆかにくれた。

やっぱり気になるよ。
あ〜ちゃんがタッパを取りに行ってそっからどうなったの?
のっちにこんなに柿を渡す職場は何をしているところなの?

ゆかの知らない世界にいるふたりのこともっと知りたいよ。






最終更新:2010年01月19日 18:52