有香は考えていた。
最近どうも綾香様の御様子がおかしい。
彼女の中でなにかが起こったのか。もしそうなら思った通りすぎて笑ってしまう。
頭の中を整理しきれなくなった有香の唇の端に不気味な薄ら笑いが浮かんだ。
これは彼女のクセだ。女中達も内心気味悪がっているものの、誰も言えない。
あの祈祷師の方。大本彩乃様。
彼女は相変わらず週に一度は祈祷に来てくれるものの、綾香様の不眠はなかなか良くならない。
祈祷した後の数日は効果を見せるのだが、回復の兆しは現れない。
それどころか、前は10日は持っていたものが5日持たなくなっているのは正直気がかりだ。
まあ、原因は何となく分かっているけど正直ちょっと認めたくなかったりもするのだ。
どうせあれは、、、 ね。
もう長いことずっと綾香様とは一緒に過ごして来たけど、ここに来てかぁ・・・ ってちょっと凹んだりもする。
だけど、そんな彼女の気持ちが私にはよくわかってしまうから。
だから彼女の傍にいるんだ。本人が気づいたときに戸惑わないように。
何より、、、
私と同じ過ちを繰り返させたくない。
彼女と私はもちろん違う人間だ。
それはよくわかっているつもり。だけど、人間が起こす失敗なんてのは似たようなことばっか。
同じことに同じように悩むモノだ。考えに考え抜いて、行き着く先に見いだす物が違うだけ。
私は私なりの最良の結末を見出した。
一般的に家庭教師が教えることって言えば、かな文字だったり、教養だったり。所詮そんなもの。
だけど、本当に教えなきゃいけない一番大事なところってそーゆーとこじゃない?
って有香は思うのだ。
だから、彼女が自分と向き合う手伝いをしよう。
その役目が終わったら自分の生涯を終わらせよう。
さっさとあの人のとこに行こう。そんで私なりの結末をきちんと見せつけてやる。
そう決めていた。
のにね。
つづく
最終更新:2010年01月19日 19:11