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あれは錯覚。
きっと錯覚。
ダンスがかっこよかったから、それがまだ頭の中に残ってたからドキドキしたんだ。
きっとそうだ。そうじゃなきゃおかしいよ。

ゆかはふたりのいる世界の住人じゃないもん。
おかしい。おかしい。こんなのはおかしいよ。

ダメダメ。ゆか、きっと欲求不満なんだ。
彼氏作らなきゃ。てっとり早く合コンでもセッティングしてもらう。
彼氏が出来たら、こんな錯覚しなくなるよ。

「えー、ゆかちゃん合コン行くん?」
「うん」
「おもしろそうじゃね。あ〜ちゃんも行っちゃダメ?」
「えー、どうだろ?てか、のっちが嫌がるんじゃない?」

合コンの幹事の女の子からあ〜ちゃんは誘うなって言われてた。
なんでって訊いたら、あ〜ちゃんが来ると男の子が一斉にあ〜ちゃん狙いでくるかららしい。
遊びの合コンならそれでいいけど、マジ合コンの時にあ〜ちゃんがくると勝ち目ゼロみたい。
あ〜ちゃんは計算でやってるんじゃなくて、天然でやってるから余計に性質が悪いって言ってた。
だからあ〜ちゃんは一部の女子には疎ましく思われている。

それを聞いたゆかは、ただ単にあ〜ちゃんすごい!!って思った。やっぱり華があるんだなって。

「のっちぃ〜?あんなん平気平気w」
「でも今回はもう人数揃ってるって、さっき幹事の子が言ってたんよ」
「えー!そうなん?ざんねーん。行きたかったな〜」
「じゃあまたあったら今度はあ〜ちゃんも誘ってくれるように言っとくね」
「うん。そうしてwかっこいい人いたら教えてね」
「オッケー」
ゆかはあ〜ちゃんと別れて、合コン会場になってる居酒屋へ向かった。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ちょっと、この合コンレベル低すぎじゃない?
かっこいい人なんていやしないじゃない。
顔がダメだったら会話って思って喋るけど、どいつもこいつもつまらん。
初対面なのにやたらと下ネタ振ってくるし。なんなの、こいつら。アホなの?

ゆかはふてくされて、お酒を呑む。
あーあ、こんなんじゃ彼氏出来ないよ。
このまま、一生彼氏出来なかったらどうしよ。
寂しい、寂しすぎるよ。




「もしかして、つまらない?」
ゆかに話しかけてきたのは、メガネ男子。ここにいる男子メンバーの中では一番マシな男の子かな。
「うーん、そうかも・・・」
「あはは。実は俺もそう思ってた。あいつら、下品なんだよな」
「うん、下品。超下品。ゆか、下品な人大嫌い」
「だよねw俺も、嫌い。てか、俺ら気が合うね」
「そーだね」
あれ、なかなかいい感じじゃない?きっと、この人ゆかに気がある。
あー、別にこいつでもいいや。

「ちょっとトイレ」
ゆかはわざとトイレに行った。
たぶんトイレから出ると外でメガネ君が待ってる。

ほら、待ってた。

「ねぇ、ねぇ、これから二人でバックレない?」
「いいよ」
ふふ、男って単純。

ゆかとメガネ君は合コンをバックレて、二件目の居酒屋へと向かった。

「へー、ゆかちゃんって一人暮らしなんだ。出身どこ?」
「広島ー」
「おぉ!俺のじいちゃんも広島人だよwなんか、すんげー親近感」
「そぉなんだー。イヒヒ」
あんたのじいちゃん情報なんていらないよ。どうでもいいよ。
あー、マジで酔いが回ってきた。頭が朦朧としてきた。
トイレ行くのにも千鳥足なもんで、メガネくんが連れてってくれた。

メガネ君はトイレの外で待っててくれた。
大丈夫って肩に手を回したまでは許せたけど、キスはさすがに許せなかった。なぜこのタイミングでキスするのよ!
「いや!!」
ゆかはメガネ君を突き飛ばした。
その勢いでメガネ君は尻餅をついた。非力の女に突き飛ばされて、尻餅つく男ってどうなの?
ゆかは立ってらんなくなって、その場にしゃがみ込んだ。

「ごめんごめん。ゆかちゃん、許して」
メガネ君は駆け寄ってきて、ゆかをベタベタ触る。
「やぁ・・・」
女々しいメガネ君の手を払いのけたいけど、いかんせ酔いが回ってるから身体が云うコトをきかない。




誰か助けてって思った時、ほんとうに助けが入った。
でもそれは一番助けてほしくない人で。
でも本当は一番助けてほしい人だった。
「樫野さん?」
最近、ゆかのことを苗字で呼ぶ人はバイト先の人たちとこの人だけ。

のっちだ。

「この子に何かしたんですか?」
のっちはメガネ君を一睨み。メガネ君は首を横に振った。嘘。あんたキスしたじゃろ!
メガネ君を知り合い?って訊いてきたから、ゆかも同じように首を横に振った。
「この子の面倒は後はあたしがみるんで」
そう言ってのっちはゆかと一緒に居酒屋を出た。

「ちょっとここで待ってて。荷物取りに行ってくるから。絶対動いちゃダメだからね」
一旦、居酒屋へと戻ったのっち。
ゆかは、外の花壇の淵に座ってる。ときどき風が吹いて気持ちいい。
その風のおかげでだいぶ落ち着いた。まだお酒は残ってるけど、一人で歩けそう。

「お待たせ。歩けそう?」
「うん」
「んじゃ、帰ろうか。家まで送るよ」
「うん。てか、なんでのっちここにおるん?」
「あぁ、職場の人と一緒に呑んでたんだよ。したら、樫野さんがいるんだもん。すげー偶然だよね」
「そーなんじゃ」
「さっきの男の子いいの?ほんとは知り合いでしょ?」
「いいんよ。あんな奴、今日初めて会ったし。名前も覚えてないもん」
「へー、ナンパ?」
「違う。合コン」
「ふーん」
って、それだけ?もっと突っ込んでこないの?もっと色々訊いてよ。

あぁ、そっか。
しょせんゆかの存在はのっちにとってはそんなもんなんだよね。
ほら、鼻唄なんて歌っちゃってさ。隣にゆかがいるのに、お構えなしだもん。

「ねー」
「んー?」
「のっちはなんであ〜ちゃんと付き合ってんの?」
「はい?」
「なんで女の子と付き合ってんの?男じゃダメなの?」
「へ?急にどした?」
「ねー、なんでよ」
無性にのっちがムカついたから、酔ったふりして今まで訊けなかったことをぶつけた。




「男とは付き合ったことあるよ。でもピンとこなかっただけだよ」
「じゃあのっちはバイってこと?」
「うーん・・・。どうなんだろ?」
「あ〜ちゃんは?」
「あいつは女はあたしが初めてだよ。今まではちゃんと男と付き合ってたよ」
「じゃあどうやってあ〜ちゃんと付き合ったの?のっちとあ〜ちゃんは住む世界が違ってたのに。自分がいるの世界にどうやってあ〜ちゃんを引きずり込んだの?」
「引きずり込んだって、なんか嫌な言い方だな・・・」
「だって、そうじゃん。のっちがあ〜ちゃんに手を出さなかったら「てか、なに?さっきから。樫野さん、なんでそんなこと訊くの?」

それはだって、だって、なんか、寂しくて。
ゆかはふたりがいる世界にいなくて、ひとりぼっちで。
ひとりぼっちが寂しくて怖いから、あんな知らない男にフラってついてっちゃって。
ついていったら、キスされて。それが嫌で、誰か助けてって思ってたら。ホントに助けにきてくれて。
でもそれはのっちで。なんで、のっち?望んじゃいけない人が来ちゃって。でもホントは望んでた人で。

結局ゆかはなにを求めてるんだろ?

「ヒック、ヒック、、、」
ゆかは今情緒不安定だ。
この涙は一体なんの涙だろう。理解不能な涙が溢れ出てきた。

「わっ!!なんだよ!今度は、なんで泣くの?」
「わっかんないよ。ヒック、ヒック、、、急に悲しくなった、、ヒック、ヒック、」
「どーしてよ?」
「なんか、ヒック、ヒック、、ひとりぼっちな気がして・・・」
「ひとりぼっち?なんで?うちらがいるじゃん」
情緒不安定なゆかをのっちは優しく頭を撫でてくれた。
眉毛をハノ字にしてぎこちない笑顔をくれた。

「ほんとに?ゆか、ひとりじゃない?」
「うん!」
「じゃあ、名前で呼んで」
「名前?」
「うん。苗字より、名前の方がいい。苗字で呼ばれると、壁があるみたいで寂しい」
「わかったよ。・・・ゆかちゃん」
のっちはまたゆかの頭をポンポンと撫でた。

情緒不安定でわがままなゆかに、のっちは優しく接してくれた。
そう接してくれると、ゆかは自分があ〜ちゃんになったような錯覚を起す。

のっちといると錯覚がおきる。
のっちのコトを考えると情緒不安定になる。

これは恋?

だったらゆかはふたりのいる世界に足を踏み入れようとしている。






最終更新:2010年01月19日 19:15