かしゆかは夜空を見上げたまま、ゆっくりと言う。
私の冷たい手に重なった大きく温かな手が、小さく震えていた。
その瞬間、彼女の気持ちを悟った。
彼女も、私と同じ感情を抱いてる。
なぜその手が震えてるかも、長年一緒にいすぎたせいで、すぐにわかってしまう。
その想いが、相手に届くことはないと知っているから。
そう考えている時点で、私はなんてひどい事をしてるんだろう。
『——きっと、彼女の「好き」は、私の「好き」とは違うものなんだろう。』
ついさっきまで頭をよぎった思惟。
そんな私だって、「好き」な”親友”に同じ辛い思いをさせてるんじゃないか。
「——寒いでしょ?風邪ひかないでね」
彼女は自分が羽織っていたコートを、固まったままの私の肩にかける。
こんな私に優しくしないで。
私なんかを「好き」になったって、私はあなたを傷つけるだけだよ。
手の温もりが恐ろしいくらいに早く消えていった。
同時に、彼女もいなくなってしまいそうで。
初めて味わう、どろりとした不安が、胸を支配した。
「——…ごめん、ごめんね」
なぜかわからないけど一番に出てきたその言葉が、堰を切ったように私の口を飛び出した。
振り返ると、彼女はすでに背を向けて歩き出していた。
声にならない声で、彼女を呼ぶけれど。
ぼやける視界の中遠ざかっていく後ろ姿が、今にも闇に溶けて消えちゃいそうで、
瞬間、私は必死に彼女へ駆け出した。
最終更新:2010年01月19日 19:37