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『今から行っていい?』

PM11:00
のっちからメールが届く。恐らくエースとデートが終わった直後のメール。今日はなんとなく会いたくない。寝たふりしてメール見なかったことにしようと思い、パタンと画面を閉じた。ら、もう一通メールが届いた。

『てか実はもう前にいるんだ。テヘっ』

は!?
慌てて玄関のトビラに向かう。押し開けた先にはテヘっておちゃめな顔を作ったのっちが立ってた。手にはコンビニ袋。

「来ちゃった。」
「来ちゃったじゃないし!ゆか来ていいなんて言ってない」
「まーまーまーまー」

ゆかの言葉を軽くあしらって、のっちはづかづかと中に入ってきた。
黒のごついスニーカーをごそっと音を立てて玄関に落とすと、一段上がった先でコンビニ袋をゆかの前に差し出す。

「はい、アイス。食べよっ?」
「……いらない」
「まーそう言わずに〜」

ムカツク。なんでこんなにムカツクのかわからんけど、なんかすごいムカツク。シャツの襟にミートソース飛んでるっつーの。何?乙女パスタに感動ってか?
のっちはくるっと向きを変えて冷蔵庫に向かった。コンビニ袋のままガサっとアイスをしまって、ゆかを見る。

「もうお風呂入った?」
「……」
「まだならあがった後にする?」
「……」
「あ、それとも一緒に入る?デヘヘ〜」
「…」
「…ゆかちゃん」

さっきまでヘラヘラ笑ってたのっちからは想像もつかないような表情がそこにあった。困ったような悲しんでるような曖昧な顔でゆかを見つめるのっちが、ムカツク。
こんな顔見たくないのに、こんな顔させてるのは自分なのに。それでもやっぱ、ムカツクんだ。


「楽しかった?…デート。」


途端にのっちはその綺麗な顔を曇らせた。
ゆかは何を言ってるんだろう。そんな事言って、のっちに何を求めてるんだろう。

「別に」
「かわいい子だったね。のっちかわいい子好きだもんね。」
「……怒んないでよ」
「怒ってない!」
「じゃあなんでそんな感じなの?行けって言ったのゆかちゃんじゃん!」

声を荒げて拳を握って、のっちは言葉をきつする。見たことないような泣きそうな顔で、聞いたことのない声をゆかに浴びせる目の前の人は紛れも無い、のっちなのに。
ゆかはそれが信じられないでいた。

「ゆかちゃんは楽しかった?のっちがいなくて」
「こう思うのは我が儘なんかも知れないけど、言って欲しくなかった…行けだなんて」
「それなのに怒んないでよ。のっちどうすればいいんよ…どうしたらよかったの?」

今にも零れてしまいそうなほど、のっちの大きな瞳には涙がたまっていた。一つでも瞬きしちゃったらきっと零れるんだろうな…あ、ほら。

ああ分かった。分かっちゃった。

「…ごめんのっち。ごめんなさい」

下を向いたまま弱く頭をふってのっちは指で涙を拭う。
そっと近づいて髪に触れた。外の温度がまだ残ってひんやりする髪をさらさらとかす。

「ごめんなさい、ゆか意地悪した。ごめんなさいのっち…。」

ゆかだって本当は、行って欲しくなかったよ?のっち。
でものっちの腕を掴むあの子に苛立ちを覚えたのも、それを隠そうとしたのも隠しきれなかったのも、全部全部、のっちのせいだ。

のっちが愛しいのが悪いんだ。

つづく





最終更新:2010年02月06日 19:37