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今日が日曜日でよかった。
学校もバイトもない。
昨日泣き腫らした目で外を出なくてすむから。

携帯をチェック。
着信が5件入ってた。
全部、あ〜ちゃんだ。
折り返し電話しようと思ったら、インターホンが鳴った。
覗き穴から見ると、そこにはのっちの姿。

なんで、のっちがゆかの部屋を訪ねてくるの?
そんな疑問を抱きつつ、ゆかはドアを開けた。

「あっ・・・」
「どうも・・・」
気まずい雰囲気。

「あの・・・昨日はごめん」
「えっ?」
「ゆかちゃん、置き去りにしちゃったでしょ・・・」
「あぁ・・・」
嫌だ、あんな惨めな出来事思い出したくなかったのに。

「今朝、綾香に怒られてさ。『なんで、ゆかちゃんを一緒に送っていかなかったんよ!』って・・・」
のっちは苦笑する。ゆかもつられて苦笑する。
「そんで、ゆかちゃんに謝れって言われたけど、携帯知らないし、だから直接来ちゃった。昨日はごめんなさい!!」
勢いよく、頭をペコっと下げて、顔を上がると今度は眉毛をハノ字にしてる。
「もういいよ。平気だよ」
こんな情けない顔されちゃあ怒る気にもなれない。
「マジで!?よかった・・・ほんと、ごめんね」
ゆかは「ううん」て言いながら首を横に振った。

「あたしさ・・・綾香の事になるとちょっと周りが見えなくなっちゃうんだ。だからたまに知らずに人を傷つけちゃうらしいんだ」
「今回はゆかちゃんを傷つけちゃったね。ごめんね。もうしないから」
「もういいって、大丈夫だから。てか、立ち話もなんだから中に入る?」
「いい。これから仕事だし、もう行かなきゃ」
「そっか・・・」
「あっ、そうだ。綾香って、酔っ払ってる間自分が何したのか覚えてないんだよね」
「そうなんだ」
「だから、あいつがなんか言ってたとしても気にしなくていいから」



「あ〜ちゃん、うちらが仲良くなってくれたら嬉しいって言ってたよ?」
「は?あいつそんなこと言ってたの?」
「うん」
「あー、それも気にしないでいいから。じゃあ、もう行くね」
のっちはゆかの部屋を出た。

「あ〜ちゃんにお願いされたの!!」
ゆかは部屋を飛び出して、歩き出したのっちの背中に叫んだ。
「なにを?」
振り返ったのっちはそう訊いてきた。

「のっちと友達になってって!!」
「ふーん」

「ゆかはなりたいんだけど・・・のっちと仲良くなりたいんだけど。友達になりたいんだけど」
なんでこんな事本人の前で言っちゃったんだろ。
きっとあの情けないハノ字眉がそうさせたんだ。
どうにかしてのっちと繋がってたいって思ったんだ。
あ〜ちゃんの親友としてじゃなく、のっちの友達として繋がってたいって思ったんだ。

「あはは。いいけど、あたしと友達になっても楽しくないと思うよ?」
「いい。それでもいいよ」
「じゃあ、ゆかちゃんはあたしの友達1号だ」
そう言いながらのっちは手を振って階段を下りていった。

友達1号って、ロボットかよ!?
ゆかが一人突っ込みしてると、携帯が鳴った。
あ〜ちゃんだ。

『もしもし?』
『あっ?ゆかちゃん?やっと繋がった〜。昨日はごめんね』
『んー、もういいよ。平気だからw』
『のっち、来た?』
『うん。たったいま帰ったよ』
『マジで、ごめんね。考えれんよね。あいつ、ゆかちゃん置き去りにしたんよ!!』
『あはは。もういいって』
『ほんま、アホでごめんね。てか、あ〜ちゃんも迷惑かけてごめんね』
『ふふふ。そうだ、ゆかね・・・のっちと友達になったよ』
『マジ?いつ?』
『さっきw友達1号って言われたぁ』
『なんそれw1号ってロボットかよw』
『それ、ゆかも思ったw』
『じゃあさ、のっちの友達1号のゆかちゃんに早速頼みごとがあるんじゃけど、いい?』
今日、あ〜ちゃんの妹がこっちにくるらしい。
親と喧嘩して広島から飛び出してきたよう。あ〜ちゃんもさっき知ったみたいで、今日は妹を泊まらせることにするらしい。
妹がいる間、のっちをゆかの部屋に泊めて欲しいって頼まれた。



いきなりの難関じゃん。
さっき友達になったと思ったら、もうお泊り!?
ゆかは全然オーケーなんだけどのっちは平気なんだろうか・・・。
そりゃー、普通に喋れるようになったし、友達になったわけだけど、長時間二人きりになったことないのに。

ゆかはそんな心配を抱えつつ、のっちの着替えを貰いに一度あ〜ちゃんちに行った。
あ〜ちゃんは今度必ず埋め合わせするから、のっちにはもうメールで知らせてあるからって言ってくれた。

その足で、のっちがいるダンススクールに行って見た。
それはもう一度のっちが踊ってる所が見たかったから。

受付でのっちの友達ですって言ったら簡単に通してくれた。
部屋を覗くとレッスンは終わってるらしく、のっちが一人きりでいる。

ゆかは声を掛けずに、少し様子を見てることにした。

のっちはしゃがみこんで何やら小型のDVDプレーヤーを弄くってる。
音量はかなりデカくて、外にいるゆかもどんな曲だかすぐわかった。
そしてのっちは立ち上がり踊りだした。どうやら、プレーヤーを見ながら踊ってるみたい。
中折れ帽子を使ったダンスはかなりセクシーで、R&B調の曲にぴったりの振り付け。

次のレッスン用なのかな?そう思いながらゆかはただのっちのダンスを見ていた。
黙って踊るのっちはめちゃくちゃかっこよくてセクシーで、同じ女なのになんでこんなにドキドキするんだろ。
あ〜ちゃんはあの鋭い目つきで毎晩見つめられてるんだって思うと、どうしようもなく羨ましくなる。
そう思っちゃう自分自身がどうしようもなく虚しくなる。

曲が終わると、ゆかはレッスン室にお邪魔した。
「あれ?どうしたの?」
きょとんとしたのっちの顔はさっきのダンスの時の顔とは180度違うから笑いそうになった。
「着替え。あ〜ちゃんから預かってきた」
「えー、ありがとう。で、わざわざ届けに来てくれたの?これからゆかちゃんちにお邪魔するのに?w」
「いひひ」
ゆかは笑って誤魔化す。
のっちのダンスが見たかったって恥ずかしくて本人の前で言えない。

「今のダンスめっちゃかっこよかったね」
「えー、覗いてたの?中に入ってくればよかったじゃんw」
「んー邪魔かなって思ったから」
「綾香なんかお構えナシに入ってくるけどw」



「さっきのダンス、生徒に教えるの?」
「ううん。実は今度あたしバックダンサーするんだよね」
「えっ!?誰の?」
名前を聞いたら結構有名なアーティストだった。
ゆかは聴かないけど、普通にテレビをつけてたら毎日のようにそのアーティストの曲は嫌でも耳に入ってくる。
そのアーティストの振り付けを担当しているのが、のっちが昔お世話になった人で、バックダンサーの欠員が出たから、どうしてもやってほしいってお願いされたらしい。
最初はあまりやりたくなかったらしいけど、結局断りきれなかったんだって。

「じゃあ、さっきの曲のバックダンサー?」
「そーゆーこと」
「じゃあ、じゅあ、テレビとか出ちゃうの?」
「そうね。この曲のプロモーションの間だけね」
「えー!?それってすごいじゃん!!のっち、テレビ映るの?てか、その人と一緒に踊るってスゴくない?」
「あはは。ゆかちゃん、興奮しすぎw」
「あ〜ちゃんも知ってるよね」
「うん。ゆかちゃんと同じリアクションだったw」
「すごい!すごい!のっち、すごいじゃん!」
「わかった。わかった」
ゆかがあまりにも興奮して喋るもんだから、のっちはさっき使ってた中折れ帽子を顔に被せた。

のっちのシャワーを待って、一緒に駐車場へと向かった。
車はやっぱり215のナンバーに止めてあった。
ゆかは後ろのドアを開けようとしたら、のっちが「後ろに乗るの?」って。

だって、のっちの隣の席はあ〜ちゃん専用な気がしたから。
ゆかが座っていい権利なんてないと思ってたから。
のっちの車に乗れるだけでいいって思ってたから。

「となりに座りなよw」
「いいの?」
「いーよ」
のっちは助手席側のドアを開けてくれた。
ゆかはお礼を言って車に上がる。助手席にはピンクの座布団が敷かれてた。

「シートベルト締めてね」
「うん」って言ったけど普段車に乗る機会なんてそうそうないから、慣れてなくて上手く出来ない。
「ご、ごめん。ちょっと待って、すぐやるから」
ゆかがアタフタしてると、のっちが眉をハノ字にさせた顔をした。
きっとこんなことも出来ないゆかに呆れてるんだ。

のっちは何も言わず、身を乗り出してゆかのシートベルトを締めてくれた。
一瞬ゆかに覆いかぶさったのっち。のっちの髪から一滴の水が垂れた。それはゆかの唇に落ちた。
ゆかは前を見ているのっちに見られないように、唇に落ちたそれを舐めた。

「はい。じゃあ、走りますよ〜」
のっちの合図で車が動き出した。

ゆかの中の何かが動き出した。






最終更新:2010年02月06日 19:42