最近空き時間があると、
いつも無意識にあ〜ちゃんのことを考えてうれしくなったり、
楽しくなったり、悲しくなったりする。
そのときの体調もあるんだろうな。
残念ながら今日は"悲しい"日。
最近ずっと忙しかったからかな。
しっかり眠ってるつもりなのにな。
頭がもやもやしてる。


一体いつからあ〜ちゃんのことが好きなんだろう。
覚えてないや。
気が付いたときは、もうあ〜ちゃんが好きだった。
あ〜ちゃんしか見えてなかった。

いつか君に伝えられるときがくるのかな。
この気持ちが何らかの形になるときがくるのかな?
そのときは、結果はどうあれ「がんばったね。」って、
自分のことをたくさんほめてあげよう。

なんてね。
そんな日はいつまでたっても来ないだろうなぁ。



≪ 願い 番外編 ≫



今日は雑誌の取材。
今はあ〜ちゃんひとりが撮影中で、
ゆかちゃんはメイク中。
のっちはメイク待ちをしながらぼんやりしていた。

「はぁ…。」



「まったくこの子は〜〜〜。」

突然頭をわしゃわしゃと鷲掴みにされ、
驚いたあたしの目に入ってきたのは、
声と頭の上の手の主、
メイクが終わったのであろうゆかちゃんの呆れたような表情だった。

「あぁ…。ゆかちゃん。」

「もう、なんて顔してるん?
 眉毛がいつもよりハの字率高いよ〜。
 ため息まで吐いちゃってさ。」

「ごめん…。」

「別に謝ることじゃないよ。
 どうしたん?悩み事…だよね?」

あたしの横にあるイスにちょこんと腰を下ろしたゆかちゃんが、
ぐちゃぐちゃになったあたしの髪を整えながら聞いてくる。

「ん…、ちょっとね。」

「ゆかでよかったら聞くよ?
 月並みだけど悩みってさ、
 誰かに聞いてもらうと少し楽になるじゃん。」

「…うん。」

「最近のっち見てると、
 たまーに変だなって思ってたんよね。
 言いづらいことなら無理には聞かんけど、
 話せると思ったらいつでも聞くけぇね。」

「…ありがと、ゆかちゃん。
 …ん、と。聞いてもらっても、いいかな…。」

ゆかちゃんの優しさに、
最近落ち込み続きの心が少しほんわかした。
もうひとりで悩んでるのは限界だと思った。
本当は少しでも誰かに聞いてもらいたかったんだ。
でも、1から100まで全部は話せない。
いまの関係を壊したくない。
これからも"3人で"一緒にいたい。





ゆかちゃんには好きな人がいることと、
その人にはどうしても想いを伝えられないことを話した。

「のっちはどうしたい?」

「どうって…。わからん。」

「想いを伝えんくて、のっちはこの先ずーっと後悔するかもしれんよね。」

ゆかちゃんはとても優しい口調で、確信をついてくる。
わかってる。
あたしは絶対に後悔する。

「でも伝えて気まずくなるのもイヤだよ。」

「そうじゃね。でものっち。まだわからんよ。」

「わからんけど…。少しでもその可能性があるなら、
 伝えんほうがお互いのためにいいんじゃないかな。」


『かしゆかちゃーん。
 次かしゆかちゃんもお願いしまーす。』


ドアの外からスタッフさんの声がした。
ゆかちゃんはちょっと困ったように微笑んで、
もう一度あたしの頭をくしゃっとなでた。

「どっちにするにしても、ゆかはのっちの味方じゃけぇね、
 手伝えることがあったら言うんよ?
 ゆかは、早く笑顔ののっちが見たいな。」

そう言ってあたしの頭をポンっとするとゆかちゃんは、
お願いしまーすと返事をしながら楽屋から出て行った。

スタッフさんは「かしゆかちゃん"も"」って言ってたよね。
てことは、あ〜ちゃんもゆかちゃんもしばらく帰ってこない。

「後悔…か。」

メイクをしてもらう為に重い腰を上げ、
伸びをしながらつぶやく。

うん。
ちょっと…ていうかすごく楽になったな。
ゆかちゃんのパワーはすごいや。

あ。ゆかちゃんにお礼言いそびれちゃった。
今度PINO買って御礼しよっと。

「お願いしま〜す!!」

メイクさんに挨拶をして、
イスへ腰掛ける。


いつまでもウジウジしてらんないや。
このままじゃゆかちゃんだけじゃなくて、
あ〜ちゃんにも心配掛けちゃうもんね。

さ、今日もがんばろーっと!!



のっちがこの想いをゆかちゃんに話すことになるのは、
…ううん。
話さなきゃいけなくなるのは、
もうちょっと先のお話…。




≪ END ≫







最終更新:2010年02月06日 19:49