Side A
始まったツアーは、思っていたよりあっという間で
初めての場所や一年ぶりの場所など、それぞれが楽しくて思い出がたくさん
改めてライブって良いな〜って思う
お客さんの顔が、ホント素敵で、元気になれる
9月に入ると学校があるから、一旦ライブは一区切り
それでも、テレビの収録やラジオ収録があるから、二人とは顔を合わせる
ゆかちゃんは授業が終わってから来るらしく、久しぶりにのっちと二人の楽屋
去年の今頃は…
あぁ…もうすぐ1年か…
のっちとの関係が終わって1年
案外早いものだ
目の前ののっちは、ライブ写真集のために撮られた写真をあれこれ手に取りながら見ている
それにしても
「写真の量、ヤバくない?」
「だよねw関さん撮りまくっとるもんw」
「いつ撮ったん?とか結構あるよね?」
「うんうんw」
「あ〜ちゃんウィンク押さえとるのは、さすが!って感じw」
「そう?」
「そうだよwそれとやっぱ、あ〜ちゃんの笑った顔最高じゃねw」
「なんよ?のっちもゆかちゃんもキラキラしとるじゃんw」
ライブは三人が最高に輝く舞台だもん
「そうなんけどさ…、それでもやっぱ、あ〜ちゃんの笑顔が一番好きなんよ」
「ど、どうしたんよ?急に、そんなこと言うて…」
何気ない会話だったのに、突然の好きという言葉に、動揺してしまうあたし
止めてよ…ドキドキしちゃうよ
まだあたしの中には、のっちへの想いが残ってるから
「ホントにそう思うから…」
写真を見ていたのっちの大きな瞳が、まっすぐあたしを捉えて、戸惑うように言葉を続ける
「ずっと、好きだったから…。それだけ、言いたかったんよ」
なんで…
なんで、そんな…好きだなんて…言うの?
相変わらずあなたの本心は掴めない
のっちにとって軽く言った言葉でも
あたしには…
心の隅に…奥も奥、もうすっごい小さくして、すっごい角っちょに追いやったのに
のっちの言葉で、簡単に暴れだしそうになる
それを抑えようとして、顔が歪んだのが自分でも分かった
それに気付いたのっちは、眉を垂らしながら
「ごめん、そんな顔させたかったわけじゃないんよ…」
「のっちのせいじゃ、ないよ…」
ここで、ちゃんと笑えたら良いのにな…
そしたら、のっちを困らせなくてすむのに…
でも、あたしは残念なことに笑えなかった
…
……
さっきまで普通に話せてたのに、なんだか気まずい雰囲気
きっとあたしが悪い…
あぁ、、ゆかちゃん、まだかな…?
静かな部屋で、髪の毛をわしゃわしゃっとして
先に口を開いたのはのっちだった
「はぁ〜…、ホントはツアーが終わってから言おうと思っとったんけど…さっき中途半端に言っちゃったし…」
「なに?」
いつになく真剣な表情になって
「ちょっと急すぎるし、さっきも言ったんけど…のっちは、ほんまにあ〜ちゃんが好きなんよ
だからその…あ〜ちゃんさえ良かったら、今度はちゃんと、あたしと恋人になってくれませんか?」
戸惑い気味にそう言って、テーブルの上に差し出されたのっちの両手
…
なに、それ…
「訳、分からん…」
急すぎて、思考がついていけない
「この1年、あ〜ちゃんのこと、ずっと想ってて…。じゃけぇ、言おうって思って…」
のっちもずっと?でも、、でもっ
「うそ…だってのっち、男の人と…」
「アレは…あ〜ちゃん諦めよう思ってぇ、けど諦められんかった」
テヘヘwって情けなく笑う
「そんなん、勝手じゃ…」
「うん、そう思う…じゃけぇ…」
抑えた気持ちが…
「断られる覚悟はできてるんよw」
「…ばっかじゃないの?」
「どうせ、ばかっすよw」
勝手に覚悟しないでよ…
「断るはず、ないじゃん…」
「へ?」
暴れだす
「言ったじゃろ、『ずっと、のっちだけ』って」
「あ〜ちゃん…」
「だからあたしを、のっちの恋人に、、して?」
「…もちろん、喜んでw」
信じられない…まるで夢みたい…
でも、差し出されたままの、のっちの手に自分の手を乗せると、その手をのっちが両手で握り締めてくれて、照れ笑い
この温もりは夢じゃないんだ
嬉しすぎて、気持ちがふわふわしてる
と、そこへ…
ガチャ
「おっはよーw」
ゆかちゃんの声に、二人してパッと手を離して慌てふためきながら、適当に取った写真について適当に会話
「ぁあ、おはよぅ、ゆかちゃんw」
「おはよーw」
「どうしたん?二人とも慌てて」
「え?いや?慌ててなんかおらんよ?」
「うそぉ?絶対慌ててた」
ゆかちゃんはカバンを置いて、あたしの隣に座った
「あ〜ちゃん?」
「な、なん?」
ゆかちゃんの笑顔の脅迫
「うそはいけんよ?自分で言ったことは、ちゃんと守らんとぉw」
たしかにそれは、あたしがツアーで幾度となく言葉にしてきたのも
「ぁ、ぁー…ウソはいけんよ。うん」
というか、考えてみたら、ゆかちゃんに隠す必要なんてないよね?
「のっち、、良いよね?」
確認でのっちの方を見ると、ゆかちゃんも一緒にのっちの方へ向いて
のっちは、チラッとゆかちゃんを見てから
「うん、良いよ」
そう答えてくれた
だから、あたしはゆかちゃんの手を取って
「うちら、、ちゃんと付き合うことんなったんよ」
そう告げると、ジッとあたしを真っ直ぐ見てくるゆかちゃん
その間が、少し緊張したけど
その目がふにゃっと細くなって
「そっか、良かったねw」
そう言ってくれたことに、凄くほっとして
「ありがとw」
今度はのっちへと顔を向けるゆかちゃん
「のっち」
「ん?」
「あ〜ちゃんのこと、お願いね?」
「うん、大切にする」
微笑んでるゆかちゃんと、さっきあたしに向けたのと同じ真剣なのっちの眼差し
まるで視線で会話してるようにも見える二人
しばらく見詰め合っていたけど、のっちがニィって笑うと空気が変わる
と同時に、ゆかちゃんに抱きしめられた
「?ゆかちゃん?」
「なんかあったら、いつでも言うてよ?のっちにビシバシ言うからw」
「うんwありがと」
ゆかちゃんの抱きしめる力が、一度ぎゅっと強くなってすぐに離れたから、ほんの少し切なさを感じた
でもすぐに、ゆかちゃんが意地悪な表情で
「ちゅうことはぁ、残りのツアーはラブラブな二人が見れるん?」
なんて言うから切なさはすぐに消えて
「そ、そんな訳ないじゃろぉw」
あたしが否定したのに
「それも悪くないな…」
真顔でぼそっと呟くのっち
悪くないって、確かに悪くないけど…ってあたしw
「お?のちおさん出ますか?」
「出ちゃうかもw」
「それ期待しとくわぁw」
「のちおさん的にはデレあ〜ちゃん期待w」
「私もーw」
「ちょっと、二人で勝手に盛り上がらんでよぉ」
あたしの目の前でワイワイ言い出す二人
「じゃ、折角だから樫尾先生も出しとく?」
「お、良いねーw盛り上がるっしょ?」
「あ、それともぉー、私女子でのちおくん奪いにいくとか?ありじゃない?」
「やっばwそれのちおドキドキじゃんw」
「…あたし、負けないもん」
単純なヤキモチが、思わず口からこぼれた
「え?なになに?」
のっちがニヤニヤしだす
「な!なんでもなぃ!」
「はいwデレあ〜ちゃん頂きましたーw」
「だから違うって!」
ゆかちゃんまで、もう!
自分で顔が赤いのが分かるから、説得力ないんだろうなーと思いながらも必死の抵抗
残り一ヶ月のツアー
あたしがデレたかどうかは置いといて…
ツアーは大成功をおさめて、とにかく楽しかった
そして、Perfumeを愛してくれてる人がこんなにいるんだって、すごく嬉しかった
追加公演最終日のサプライズは特に、ホントに幸せだなって実感できた
感謝の気持ちでいっぱいで、この気持ち、忘れないように…
この日の日記は欄外決定だったなw
—つづく—
最終更新:2010年02月06日 19:55