「ちょっと、顔かしなっ!」
昭和な台詞で、あたしは体育館裏に呼び出された
「なんで今更あ〜ちゃんなんよ。のっちの相手はゆかちゃんじゃろ・・・」
自分で言ってて、泣いてしまうかと思った
「んなこと分かってんだよぉ!でもあっちには手ぇだせねーんだよぉ!!」
こいつら、のっちよりアホじゃ・・・

大体、あたしも、例の噂は気付いてた。“西脇がのっちさんたぶらかした”とか“無理矢理おんぶさせた”とか“幼馴染の特権使いやがって”とか“のっちさんが迷惑してるのが分かんないの?”とか
まぁ、昼休みを過ぎてからは、全部“のっちさんとかしゆかさんのキス見た?!”に変わってたけど・・・・
嬉しいような、悲しいような・・・

だから
「もぅ、あ〜ちゃんあんたらなんかどうでもええんよ・・・」
相手の顔がちょっと引きつる
「そんな暇じゃないんよ」
「アホはアホらしく、どっか他行って遊びんしゃい」

「ちょっ調子に乗りやがってええええ」
ええっ・・・ちょ・・・この人泣き出したよ・・・
「アタイだって一回ぐらいのっちさんと噂になりてえよおおぉぉぉ」
え・・ちょ・・キモイ(失礼)・・
その泣き声につられて(?)隠れていた部下(?)がいっぱい出てきた


その中の一人が
「そーゆー訳で、ちょっと殴られてよ」
「殴られる理由が分からん」
素で答える。もうどーにでもなれ、今のあたしには何もないけぇ、好きにしたええ
「だいたい、あんたがのっちさんの親友ってだけで気に入らない」
「いや、それはあの子が友達少ないから親友に見えるだけじゃ」
「・・・・・・・・」
「ただの幼馴染よ。分かった?・・・・ほんだらあたし帰るけぇ」
背を向けて歩き出す
「でも、のっちさんのこと好きでしょう?」
ビクっと、止まってしまった
「それが、気に入らんの?」
「それが、気に入らないの」
カツカツと、距離をつめられる
        • 後ろはもう、壁・・・

ああ、相手が腕を振り上げるのがスローで見える・・・
あたし、今から殴られるんだ・・・・ギュと目を閉じた

腕が勢いよく振り下ろされ、掌があたしの頬を打たなかった
          • ゆっくり目を開けると
「の、のっち?」
「やった!間に合った!」
そこにはいつもの無邪気な笑顔
「のののののっちさん?!」
「どうもー」
のっちは素っ頓狂な声で答える

「あのさー君ら勘違いしてるよ?あ〜ちゃんがあたしを好きなんじゃなくて、あたしがあ〜ちゃんを好きなだけだから」
「・・・・・・っ!」
のっちが、いつもののっちじゃない・・・。怒ってる・・・
「でさ、あたしを好いてくれんのはまぁ良いんだけど、」
のっちが、あたしを叩こうとした奴の胸ぐらを掴んで、あたしも聞いた事ないくらい冷たくて低い声で

「あ〜ちゃんに手ぇ出すなら、死んでもらうから」

あたしまで、ゾッとしてしまった・・・直接言われた本人はガクガク震えている・・・可哀相に・・・

それからのっちは目が1ミリも笑ってない笑顔で
「目障りだから、消えてくれる?」
とか言ってた


全員がどっか行ってから、のっちは振り向いて
「あ〜ちゃん、大丈夫?」
いつもののっちだった
「大丈夫。うん・・・ありがと」
「よかった。んじゃ、帰ろっか♪」

のっちは急に
「あ、パフェ食べていこ!」
「のっち、そんな食べてたら“むっち”になってまうよ?」
「大丈夫だって。それに今日はのっちが奢るよ?」
「じゃあ行く」
            • あれ?
のっち、さっき確かに“あたしがあ〜ちゃんのこと好きなだけだから”って言ってたよね?
精一杯の疑問をこめて、のっちの目を見てみた・・・だめだ、のっち“?”って顔してる・・・・
忘れたのか・・・のっち、こんな短時間で忘れたのか・・・・

「あ〜ちゃん?早くいこうよ!!」
のっちは少し駆け足になった

          • 残念だけど、今日は、まぁ、いっか?



<4−のっち告白する、でも忘れるの巻・終わり>





最終更新:2008年10月12日 18:43