▼382日目
あ〜ちゃんと別れて早一ヶ月ちょっと。いや・・・別れたんじゃないんだよな。
そもそも付き合ってなかった訳だから、別れるなんて出来ないんだよ。
もー、わけわからん。
結局さー、天使の顔した悪魔のあ〜ちゃんに振り回されっぱなしだっただけかよ。
あたしの運命の恋を返してよ。
「あー、やっと見つけた〜」
昼休みにテニスコートにあるベンチで昼寝してたら、あ〜ちゃんが寄ってきた。
久しぶりに会った。
会いたい時にはいなくて、会いたくない時に現れるなんてやっぱり悪魔だよ。
「なーんか、久しぶりじゃねw」
なんでそんな無邪気に笑うかな。ムカつくほど、可愛いんだよ。
「そーだね」
あたしはぶっきら棒に答える。
「ねぇ、のっち」
「なに?」
「あたし、間違えてた」
「・・・なにが?」
「のっち前に言ってたじゃろ?運命の恋はあるって」
「・・・うん」
「あたしそんなん信じてなかったんじゃけど・・・」
「・・・うん」
「やっぱり、あるんじゃね。運命ってw」
「えっ」
「あたし・・・やっぱりこれって運命だと思うんよ」
もしかして、あたしとの関係を考え直してくれた!?
「じゃーん♪」
嬉しそうにあたしの目の前に見せてきたのは左手。
薬指には綺麗な指輪。
なんで?
あ〜ちゃん、あんなに指輪嫌いって言ってたじゃん。
何度もペアリングしようって言ったのに嫌がったじゃん。
学校にしてくと、先生に没収されるから嫌だって言ったじゃん。
「あたし、この前運命的な出逢いをしたんよ!」
「もうその人に逢った瞬間、ドーーーン!!!ってきて、『この人と結婚する』って感じたんよ!!」
「ケッコン?」
「うん。あたし、卒業したらその人と結婚するんよ!!」
えーと、話がブッとびすぎて、頭がついてってくれないんですけど・・・。
「あたしとは、運命・・・感じてくれなかったの?」
「・・・うん。のっちはきっかけをくれた大事な友達じゃよ」
なんだそれ。最低。
「のっちが運命の恋を信じてるって言っとったから、あたしも感化されたんよw」
その場で、おめでとうは言えなかった。
無邪気な笑顔のあ〜ちゃんがムカついたから。
ムカつくくらい幸せそうで可愛いから言わなかった。
▼390日目
決めた。
あたしは恋よりも仕事に生きるキャリアウーマンになる。
恋なんて、そんな絵空事もう卒業だよ。
あたしはひとりで生きていくんだ。
大本彩乃、齢17歳にして人生を悟った瞬間。
運命の恋なんてそんなもんないんだよ。
△0日目
「中田くん!あたしこれからすんごい勉強するから!!」
「はぁ?」
「もうね、これから勉強しまくって東大目指すから!!」
「お前バカだろ・・・。うちの学校から東大合格者なんて出るはずないだろーが」
「あたしは不可能を可能にする女よ!!」
「いやいや、無理だったじゃん。あ〜ちゃんの事結局無理だったじゃん」
「・・・グサ。中田くん、酷い。まだ傷はちゃんと治ってないのにw」
「そんな事言ってる間に、もう時間じゃねーの?今日からだろ?予備校」
「あっ!!ヤバっ!もっと早く言ってよ。中田くん、使えない」
「誰もお前に使ってほしいだなんて思ってないけど・・・」
「屁理屈ばっかり!だから童貞なんだよ!!」
「うっせーな。童貞童貞って、童貞で何がわりーんだよ!!!童貞をバカにするな!!」
あたしは珍しく感情を露にしてる中田くんと別れて、駅前にある予備校へと向かった。
エレベーターに乗ったら、後から同じくらいの歳の女の子も乗ってきた。
同じ階で降りた。
同じクラスだった。
同じテーブルだった。
隣の席だった。
その子が鞄からテキストやらノートを机の中にしまってたら、カシャって音がした。
鞄からCDケースが落ちた音だった。
あたしの方が拾いやすい位置に落ちたので、手を伸ばして渡してあげた。
「あっ」
思わず小さく呟いた。
それはCDケースのジャケットがcapsuleだったから。
「ありがとうござます」
その子は同い年なのに丁寧に敬語でお礼を言ってくれた。
あたしはペコっと首を下げるだけだった。
予備校の授業はまるで頭に入らなかった。
それは意外とレベルが高くてついていけなかった事もあったけど、それよりも・・・。
なんだかわかんないけど、隣の子がすんげー気になったから。
なんでだ?
細くて可愛いから?
髪がサラサラで綺麗だから?
甘い声だから?
大きい手だから?
capsuleのCD持ってたから?
いや、きっと・・・やっぱりこれだろ。
授業が終わり身支度をしてる彼女に勇気を振り絞って話しかけてみた。
「あの・・・この後ヒマですか?」
「えっ?」
「あっ、いや・・・。駅前にあるケーキ屋さんがめちゃウマなんですよ」
「はぁ・・・」
「もしよかったら、一緒に行きませんか?」
「ふふふ。いいですよ」
「あっ、あたし大本彩乃って言います」
△1日目
「樫野有香です」
やっぱりあった。
あたしの運命の恋。
— Fin —
最終更新:2010年02月06日 20:19