「優しいんだね?」
「えっ?」
隣に並ぶのっちの言葉、聞こえないフリをしたのはなーんでだ?
あ〜ちゃんは思う。誰にだって優しいわけじゃないよ。
ちらりと隣を盗み見ると、のっちが寒そうに鼻の頭を赤くしていた。「さむいん?」と聞くと、「さむいよ!あ〜ちゃんさむくないの?」と驚いた表情で聞き返された。背中を丸めたのっちはさりげなくあ〜ちゃんの手を握った。
「なんだ。あ〜ちゃんもさむいんじゃん」
「えっ?」
手を握るのっちの言葉を聞こえないフリをしたのはなーんでだ?
あ〜ちゃんはわかってる。手を繋ぐなんて照れ臭くて聞こえないフリをするよりしょうがなかっただけ。
手、冷たいよ?と、のっちが顔を覗き込む。あ〜ちゃんの顔は手の温度と反比例する。
最初は躊躇っていたくせに、こうやって手を握るのにも慣れちゃって、のっちはこの関係にも慣れちゃったのかな。いつまでも、あ〜ちゃんばっかりが好きみたいで悔しいじゃん。
繋いだ手から好きが溢れ出ちゃうような気がして、あ〜ちゃんは「嫌、いやぁ」と顔を横に振って、その手を払おうとした。のっちの手の中で、もがいて脱出しようとしたその手はあいにくすぐに捕まった。
「だめだめ。なに照れてんのー」
のっちはそう言ってあ〜ちゃんを軽くあしらうと、もう一度繋がれた手を自分のコートのポケットに入れた。あ〜ちゃんのことを見もしないで。いつの間にのっちはこんなスムーズなことが出来るようになったんだろ。あ〜ちゃんは思う。のっちのくせに生意気じゃ。
「あ〜ちゃん、のっちがあっためてあげよっかぁ〜」
「なんよそれ。どうせ変なこと考えとるんじゃろ」
「げへへ」
「…変態」
前を向いたままのっちはゲラゲラ笑う。だけどポケットの中の繋がれた手はキュッときつくなった。変態、と言われようと、離すもんか!と言わんばかりだ。
それどころかのっちは器用に指まで絡めてきた。あ〜ちゃんの温度はまたあがる。
あ〜ちゃんは悩んでる。このままのっちの波に飲まれていいのかな。でも、わかってる。飲まれちゃう自分も可愛いって言ってくれるだろうな。
「お部屋、かえろ?」
「…えっちなこと、せん?」
「せんせんw」
「…ほんまー?」
「たまにはのっちのこと信じてよw」
うん。いつも信じてるよ。のっちなら、って。ちゃんと信じてる。
じゃあ、今あ〜ちゃんが迷ってるのはなーんでだ?
あ〜ちゃんは思う。たまには信じた逆のこと、してくれてもいいんだよ?
END
最終更新:2010年02月06日 20:21