Side A
休みも終わって、テレビ番組の収録で久しぶりに三人が顔を合わせる
数日会わないだけで、二人に話したいことは山ほど
三人でいるときは、今までと何も変わらない
この距離感が安心する

ちょっと気になるといえば、ゆかちゃんからのメールが減ったこと
まぁ、あたしのことを気に掛けてくれて、それでくれてたものだから
のっちと付き合えることになったから、安心してくれたんだろうけど…
何気に楽しみにしてたから、ちょっと寂しいな…


なんだかんだで、年末へ向けてテレビ出演も増えてくるころ
12月に発売されるライブ写真集の話を、ラジオでさせて貰って
それぞれお気に入りの写真は?って話で、のっちはウィンクとか言うし…
まぁ、いつものことといえばいつものことなんだけど…

しかものっち、この日用があるって早く帰っちゃうし…
あたいもトイレ行ってから帰ろうと、部屋に戻ってくると
ゆかちゃんがまだ居た。あたしには気付いてなくて
テーブルに向かって雑誌でも読んでるのかなぁ?とこっそり後ろから近づいて…

「わっw」
「うにゃww」

ぽんっとゆかちゃんの肩に手を置いて驚かすと
絵に描いたようにびくぅwとして声を上げるゆかちゃん

「あ〜ちゃwんwめっちゃビックリしたわねw」
「へへw何見てたん?」
「ん?ああ、写真集w」

ゆかちゃんの手元にあったのは、さっきの収録で使った写真集
ゆかちゃんの後ろから覗き込むと、ちょうどあたしのソロショットのページ
そのままゆかちゃんの隣に腰を降ろして、会話を続けていく

「この時めっちゃ寒かったわぁ。でも、なかなか良いよねー、傘差しながら撮るなんて、あんま無いもんw」
「そうじゃよね?でもさ、雨が降っとっても、あ〜ちゃんが笑っとるとそれだけで心は晴れるんよねw」
「ぇえ?なんソレ?」
「あ〜ちゃんの笑顔は、周りを幸せにしてくれるってことw」
「そんなことないじゃろw?」
「そぉんなことあるんよぉwほら、アリーナ最終日のサプライズ。あん時のPerfume、A-chanのとこで周りのみんな一番笑顔んなっとったもんw上から聞こえたお客さんの歓声もさ、そこ一番おっきかったって思うし」



「少なくとも、あ〜ちゃんが幸せでいたら、私は幸せって思う…」
優しく微笑むゆかちゃん

…?
あれ?

なんだろう?
聞き覚えのある言葉…

『…その人が幸せでいてくれることが、私の幸せなんよ』

あれ?これってゆかちゃんが言ったんだっけ?

そうだ。ゆかちゃんがあたしに『幸せ?』て聞いてきた二度目の時だ


ぇ…ちょ、っと、待って?
それって?
どういうこと?

要領の悪い頭を必死に回転させて、その答えを探し出す

「ゆかちゃんは…」
「?」
「あたしが、幸せだと、幸せ、なの?」
「うんw」
「ゆかちゃんの幸せって…」

あたしが言いかけると、嬉しそうに答えたゆかちゃんの顔が、何かに気付いたように、あ、ってなった

「ゆかちゃんの好きな人って…?」
「…」
嫌な、予感…

もしかして…
「あたし、なの?」

あたしの質問に甘い笑顔で返された言葉は
「…ヒミツ、、だよ」

それは否定でも肯定でもなくて
でも、違うならハッキリ違うって、言ってくれるはずでしょ?
だとしたら、その答えは、肯定でしょ?

ずっと側にいたのに
ずっと感じていた優しさも、時々感じた切なさも
ゆかちゃんの想い、、だったんだ…


あぁ…
何で、気付かなかったんだろう?



Side K
何で、気付いちゃったんだろう?
何で、あなたなんだろう?

気付かなければ良かった
あなたでなければ良かった

気付かなければ、こんなに苦しくなかった
あなたでなければ、こんなに辛くなかった

好きだと思っていた人は
好きだけど、ただ甘えていたことに気付いた

心が動揺するのは…
愛しいと感じたのは…

あ〜ちゃん、だった…



その気持ちに気付いたのは、いつだっけか
…あぁ、そうそう

あれは、2年前…?
あの時、だ


—つづく—






最終更新:2010年02月06日 20:26