「あーーー!!今写った今写ったよね!?」
「うんうん。いたいた!!」
「なーんよ、あいつ。あんな澄ました顔してウケるw」
「えー、かっこいいじゃん。もうあ〜ちゃんは素直じゃないんだからw」
「・・・・かっこいいのは知っとるけぇ」
今日はのっちが有名アーティストのバックダンサーで踊ってる音楽番組をあ〜ちゃんちで鑑賞中。
ゆかたちは歌そっちのけで、後ろで踊ってるのっちを目で追っている。
のっちはバンクダンサーの誰よりも目立っててかっこよかった。
アーティストのダンスよりもキレッキレで鳥肌が立ったくらいにスゴかった。
まー、そう見えてるのはゆかたちしかいないと思うけどね。
のっちとはあれ以来会ってない。
のっちはバックダンサーの仕事が忙しすぎてゆかはもちろんのこと、あ〜ちゃんともほとんど会ってないみたいだった。
あ〜ちゃんは「別にのっちがいなくても平気じゃ!」って言ってるけど、きっとホントはただの強がり。
だって毎日のようにゆかと一緒にいるんだもん。あ〜ちゃんは寂しいんだ。みんなひとりじゃ寂しいんだよ。
「のっち、いつ帰ってくるん?」
「んー、わからん。電話しても出んし。メールしても返ってこんから」
「でもこの仕事終わったらまた今までどおりの生活に戻るんでしょ?」
「と思うけど」
「そうなんだ・・・」
「そうなんよ。ほんまに仕事で忙しいんかね〜?」
冗談っぽく「浮気しとんじゃね?」とかあ〜ちゃんは言うけど、あののっちが浮気なんてするわけないじゃん。
そんなんゆかよりも、あ〜ちゃんの方がわかってるくせに。
なんでそんなに強がるの?もっと、のっちに甘えればいいのに。
「じゃあそろそろ帰るね」
「えー、帰っちゃうん?泊まってけばええじゃろ?」
「でも一昨日も泊まったし・・・もしかして、のっち帰ってくるかもしれんじゃろ?」
「そんなん言わなんでよ。ゆかちゃん帰っちゃったら寂しいよ・・・」
子供みたいにすがるあ〜ちゃん。のっちはゆかの事をほっとけないって言ってたけど、あ〜ちゃんもほっとけない子だよ。
きっとゆか以上にほっとけない子だよ。あ〜ちゃんは。
のっちあんた、あ〜ちゃんほったらかして何しとるん?
ほったらかしのままだと、そのうち誰かにあ〜ちゃん取られるよ?
あんたそれでもいいの?てか、それじゃあゆかが困るんよ。
二人が別れたらゆかは二人と一緒にいれなくなっちゃうじゃない。
そんなん困る。のっちがフリーになったら困る。のっちの隣にはあ〜ちゃんがいてくれないと困る。
結局ゆかは泊まることにした。
今にも泣きそうなあ〜ちゃんを一人にするなんて出来ない。
さっきの音楽番組の録画を何度も何度も見直して、やっと布団に入ったのは夜中の1時過ぎ。
なんか物音がするなって思って一瞬目が覚めた。
隣に寝てたあ〜ちゃんがいない。微かに話し声が聞こえる。
「・・・えってくるなら・・・らく入れてよ」
「・・・めん。・・・そがしくて・・・かった」
「ちょ・・・めてよ・・・ちゃんが・・・るけぇ」
「こえ・・・なきゃ・・・いきだよ・・・」
「・・・や・・・・」
「だめ・・・ずっと・・・して・・・かったじゃん」
「・・・ん・・・あ」
何事かと寝室のふすまをソッと開けた。
ゆかの目に飛び込んできたのはのっちがあ〜ちゃんを押し倒している現場だった。
あ〜ちゃんからはソファが死角に入ってゆかが見えなくなってるのが不幸中の幸いだ。
蛍光灯がついてないから、カーテンの隙間の外の明かりで部屋は薄暗い。
それでものっちがあ〜ちゃんの太腿を弄ってるのはわかった。
ゆかは急いでさっきまで入ってた布団に潜り込む。
小さく丸まって耳を塞ぐ。
やだ。やだやだ。
ふたりがエッチしちゃってるところ見ちゃった。
耳を塞いでも、あ〜ちゃんの声とか変な音とか聞こえそうでやだ。
バカ。のっちのバカ。
なんでゆかがいるの知ってて、あ〜ちゃんとエッチしてんのよ。
なんだよ、ふたりの関係を心配してたゆかがバカみたいじゃん。
ゆかがいるのにふたりで盛り上がっちゃってさ。ゆかひとり虚しいじゃん。
好きな人のエッチを目撃しちゃうなんて、虚しすぎるよ。
薄暗くてはっきり見えなかったのは不幸中の幸いだったけど。
それでも十分なダメージだよ。
少しでもダメージを減らすため、ゆかはバックに入ってたipodを取り出して外の音が聞こえないくらいの音量に設定した。
結局眠れず朝になるのを待って布団から出たら、のっちが朝食を用意してた。
あ〜ちゃんはまだ寝室で寝てる。
「おっ、おはよ」
ニコニコして昨日何事もなかったような顔をしているのっちがムカついたから無視した。
のっちを無視しながらゆかは帰る仕度をする。
「おーい、ゆかちゃん?無視?」
ちょっとおどけた感じののっちに益々ムカついた。
「あ〜ちゃんには帰ったって言っといて」
ゆかはのっちと目を合わせずに伝言を頼んだ。
「帰るの?朝飯食べてけばいいじゃん。ゆかちゃんの分も作ったのに」
「いらない!」
「なんで怒ってんの?」
「・・・怒ってないよ!」
「いやいや、怒ってんじゃん」
ゆかが玄関を出ようとするとのっちに腕を掴まれた。
やめてよ。あ〜ちゃんを抱いた手で触らないで。
「放して」
「怒ってる理由教えてくれたら放す」
腕をブンブン振り回してものっちは放してくれなかった。
キッて睨むとのっちは眉毛をハノ字に下げていた。
「・・・昨日の夜ゆかがいるって知ってたのに、あ〜ちゃんとヤッたでしょ」
「あっ、ごめん。それか。もしかして起しちゃった?」
「最低。のっち最低だよ」
「ごめん・・・。夜中だったし、ゆかちゃん熟睡してると思ったから。静かにしたつもりだったんだけど」
「もう・・・知らん。放してよ」
「ゆかちゃん・・・何で泣いてるの?」
「えっ?」
のっちに言われて初めて自分が泣いてるのに気付いた。
それはのっちから受けたダメージがジワジワと効いてきてる証拠。
ゆかは無理やりのっちの手を剥がして、自分のアパートに向かって走り出した。
最終更新:2010年02月06日 20:41