sideN
「のっちー!」
大学に着くやいなや、友人の一人、彩に声をかけられた。
「今日飲みいく?」
たまたま席が隣で、可愛い子だったし、
名前も似てて、漢字まで一緒だったことに、気を許した。
「あーごめん。妹んとこ」
「あぁ、そっか! どうなの、調子?」
「…さぁ? のっち医者じゃねーし」
「ふふwあんたらしーわw」
笑って講義室に入る。
まだ寒い教室の中、少しでも温まろうと、日の当たる窓際に座った。
だけど、どうしてもあったかくなると寝てしまう。
それじゃ意味がない、と、彩はのっちを前から三列目の真ん中の席まで移動させた。
「あー眠い」
「レポート、終わんないの?」
「終わる気すらおきねーよ」
「がんばれーw」
「あー眠い」
「よくやるねー」
そう言って彩はのっちの頭をポンポンと撫でた。
渇ききっていた心に水をくれた唯一の友人だ。
大事にしないと。のっちは心の中で思った。
こんなふうに自分が何かを目指して、頑張れる人間だとは思ってなかった。
浪人してまで医大に入ったのには、ちゃんと理由がある。
憧れていた煙草も、大好きだったお酒も、
全部やめてまで医大を目指すのには、ちゃんと理由があった。
机に乗せた頭をずらして、視線だけで外を見る。
日は差しているのに、外は寒い。
だって季節は冬。
“あ、もうすぐ誕生日じゃん”
今頃になって気付く。
寝不足の目に、冬の日差しがしみた。
“あれ?いくつになるんだっけ?”
今日あ〜ちゃんにプレゼントはどうするか聞こう。
そんなことのっちが言ったら驚くかな?
今頃あ〜ちゃん研修頑張ってるかな?
出来の良い姉と比較されるのは、そんなに苦じゃなかった。
のっちはお姉ちゃん子だったから。
ただ、自分もそう簡単に“いい子”にはなれなかった。
のっちは自由でいたかったから。
だけど、、
それも全部捨ててまで、代々続く医者家系に身を染めようとしてるのには、
ちゃんと理由があるんだ。
ゆか、冬晴れの光は、お前の目にはどう映る?
今日も、精一杯“今”を生きててくれ。
最終更新:2010年02月06日 20:52