夢を見た。
あ〜ちゃんとのっちと三人でおしゃべりしている夢を見た。
『ねぇ、ゆかちゃん?あ〜ちゃんが死んだら悲しい?』
『そりゃもちろん悲しいよ。ゆか、泣いちゃうよ』
『じゃあのっちは?あ〜ちゃんが死んだら悲しい?泣いてくれる?』
『んー、悲しいというよりか困る』
『困る?悲しいんじゃなくて困るの?』
『うん。困る』
『誰が?』
『あたしが』
『のっちが?』
『うん。だって、あ〜ちゃんがいてくれないとあたしが困る』
『なにそれ?恋人が死んでも悲しくないの?』
『悲しいよ。でも悲しむのは誰でも出来るじゃん。あたしはあ〜ちゃんがいないとダメな奴だからいなくなっちゃうと困る』
どうでもいい夢だけど、あ〜ちゃんとのっちはとてもリアルな感じがした。
そんなことを凛々しく語るのっちはかっこよかった。
そんなのっちを見て、あ〜ちゃんはハニカミ笑いをしてる。
ゆかも誰かにそんな風に思われたい。
ゆかがいないと困るって言ってもらいたい。
誰かに必要とされる人間になりたい。
『じゃ、ゆかが死んでものっちは困る?』
『んー・・・』
そこで夢から覚めた。
夢の中ののっちはどう答えたんだろう。
現実ののっちはどう答えてくれるだろう。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
のっちのバックダンサーとしての仕事が一段落して、今までどおりの生活に戻った。
あ〜ちゃんはそれだけで機嫌がいい。本人は気付いてないと思うけど、端から見たら一目瞭然だ。
そんな上機嫌なあ〜ちゃんから、またのっちの仕事を見に行こうって誘われた。
けど断ろうと思った。だってこの前あんな気まずい感じで別れたんだもん。
どの面下げてのっちと会ったらいいかわからんもん。
あれからお互いに連絡取ってないし。そもそもまだのっちの携帯番号知らないし。
一応友達になったわけだけど、二人で会うのってなんか変な感じだし。常にあ〜ちゃんがいないと変だもん。
「え?なんで?なんか他に予定でもあるん?」
「いや・・・特にないけど・・・」
「じゃー行こうよ。ゆかちゃん最近のっちと会ってないじゃろ?」
「今日は遠慮しとくよ・・・」
「なん?のっちとなんかあった?」
「・・・なんにもないよ」
「じゃあ行こう?」
あ〜ちゃんの押しの強さで結局断りきれなかった。
ゆかは重い足取りでダンススクールへ向かう。
あ〜ちゃんは逆に鼻唄なんか歌っちゃって楽しそう。
でもタイミングが悪かった。
うちらが着いた頃はもうレッスンは終わった時刻だった。
あ〜ちゃんはチェって軽くふてくされた。
レッスン室の中を覗くと、のっちとまだ一人の練習生が残って話をしていた。
その練習生はこの前ののっちに猛烈アタックしてた子だ。
『先生。昇級テスト合格しました!』
『うん。知ってる。おめでとう』
『この前の約束守ってくださいね!』
『やくそく?』
『先生言ったじゃないですか。テストに合格したら送ってくれるって』
『あー・・・そういや言ったっけ』
「なんか、のっち困ってるね・・・」
ゆかは小さく隣にいるあ〜ちゃんに呟く。
「簡単にそんな約束するからじゃ。自業自得」
あ〜ちゃんはピシャっと言い放つ。
『ごめん、東野さん。それは出来ない』
『どうしてですか!約束したじゃないですか!』
『軽はずみな約束しちゃって、ごめんね。あたしはみんなに教える立場だから、一定の生徒と親しくするのは問題なの』
『だって・・・先生言ったじゃないですか』
とうとう練習生の子は泣き出してしまった。
『ごめんね。泣かないで』
『あたし、先生のことが好きです』
練習生の子は突然告った。
『前から先生のことが好きなんです』
『・・・ありがとう。でもあたしは今好きな人がいるから。その気持ちには応えられないんだ。ごめんね』
のっちはピシャっと言い放った。
『それでも好きなんです。先生が好きで好きでどうしようもないんです。あたしのこと少しでも好きになってくれる可能性ってないんですか?』
『・・・ない。ごめん、それは完璧にない』
のっちはまたピシャっと練習生の子にとってはとても冷たい言葉を言い放った。
のっちの言った言葉は練習生の子に向けた言葉だけど、それはなんだかゆかに向けて言っているみたいな錯覚がした。
練習生の子は泣きながら部屋を出て行った。
出るときゆかたちの存在に気付いてお互いに気まずくなった。
「のっち、酷いよ!!」
ゆかは部屋に入るなりのっちに叫んだ。
「・・・ゆかちゃん!?なんでここに?」
「なんであんな冷たく言うんよ!!冷たくするなら最初からそうしてよ」
「ゆかちゃん、どうした?」
「その気がないなら優しくしないでよ。勘違いするじゃん!好きになっちゃうんだよ・・・。恋人がいるなら他の子に優しくするなよ!!」
「・・・なんで、ゆかちゃんが怒ってるの?」
のっちは何で自分が怒鳴られてるかわからないって顔してる。
そうか。あの練習生の子はゆかだ。
ゆかの気持ちを代弁してくれたんだ。
そう思うと急に彼女に感情移入して、のっちに怒鳴ったんだ。
「・・・ゆかが死んだら困る?」
「は?何いきなり?」
夢の続きの質問を現実ののっちに投げかけた。
「困ると言うより、悲しいが先じゃない?・・・てか、さっきからなに?ゆかちゃんどうした?」
のっちはハノ字眉になってオロオロして、チラチラとあ〜ちゃんを気にしてる。
「なんでもない。・・・ごめん、ゆか今日は帰る」
あ〜ちゃんにそう告げてゆかはレッスン室を後にした。
「ちょっと、待ってゆかちゃん!」
後ろから走ってきたあ〜ちゃんに呼び止められた。
あっ、泣き顔見られた。
ヤバイ、、、あ〜ちゃんの表情が曇った。
ばれた。あ〜ちゃんにゆかの気持ちがばれた。おしまいだ。
こんなに人を好きになって絶望的に感じたのは初めて。
ここまで望みがない相手に恋をしたのは初めて。
「ごめん・・・」
ゆかはあ〜ちゃんに背を向けて走り出した。
ゆかはこれからどこに向かうんだろう。
最終更新:2010年02月06日 20:54