Side K
のっちからあ〜ちゃんの話を聞いた
昨日、あ〜ちゃん抱いたよって…
ズキッとした
悲しそうなのっちの表情に
あ〜ちゃんが抱かれたということに…
「ゆかちゃん、辛くないの?」
自分が望んだこととはいえ、やはりこたえる
「あ〜ちゃんが望んだなら、それで良いんよ」
Side N
一瞬、ゆかちゃんの瞳が動揺した
「ゆかちゃん、辛くないの?」
あたしの中で芽生えた、小さな黒い感情
「あ〜ちゃんが望んだなら、それで良いんよ」
平気なふりで答えるゆかちゃんの中を、掻き乱したくなった
あたしの行動で、動揺させたかった
あたしの気持ちがゆかちゃんにある限り、あ〜ちゃんの想いは報われなくて
そしたら、諦めてくれるんじゃないかって、あたしにあ〜ちゃんを頼むようなことしないんじゃないかって
そう思ったんだ
この日もあたしは、あ〜ちゃんを呼んでいた
寂しかったからじゃない
ゆかちゃんを、動揺させるために
「のっちは、ずっとゆかちゃんだけだよね?」
「さぁ〜、どうかなぁ?」
人の気持ちなんて変わりゆくものでしょ?
ゆかちゃんだって、今はあ〜ちゃんを好きなんだよ
「あ〜ちゃんは?」
「ん?」
「あ〜ちゃんは、ずっとのっちだけ?」
「そーだよ?」
なんで、そんなに真っ直ぐなのさ
「ずっと、のっちだけじゃ」
こんなに最低なことしようとしてるのに
ゆかちゃんを動揺させるために、あ〜ちゃんを利用しようとしてるのに…
その柔らかな笑顔を見ると心が揺らぐから、あ〜ちゃんへと腕を伸ばして抱き寄せた
それに応えるように、あ〜ちゃんも背中に腕を回てくる
「あ〜ちゃんは、優しいね?」
「そんなこと、ないけぇ」
「ん〜ん、ホント…優し過ぎ、、だよね…」
「のっち…?」
あ〜ちゃんに好きになってもおらう資格なんて、あたしには無いよ
これからあたしは、あ〜ちゃんい酷いことをする
あ〜ちゃんの知らないところで…
少しの罪悪感で、あ〜ちゃんの肩に回した手に思わず力が入った
「あ〜ちゃん、抱いても良い?」
「ぅん、良いよ?のっちの好きにして?」
「うん…」
あ〜ちゃんを抱きながら想うのは、やっぱりゆかちゃん
ゆかちゃんより少しふくよかな体を撫で回して、その反応を窺う
そう、、すべてはゆかちゃんを動揺させるためだった
あ〜ちゃんを辱めて、初めて知るあ〜ちゃんをゆかちゃんに教えるんだ
「あ〜ちゃん、可愛かったよ…」って
優しく抱けば、恥しそうに甘く鳴いて
激しく抱けば、必死に応えようとして目に涙を浮かべる
好きな人のそんな姿、誰かから聞きたくないでしょ?
そのうち耐えられなくなると思ったんだ
もう、止めてって言ってくれると思ってたんだ
なのに…
いっこうにあたしの望む言葉を出してはくれない
絶対に辛いはずなのに…苦しいはずなのに…
なんなんだよ…
そんなあたしの苛立ちは、あ〜ちゃんに向けられる
荒々しくて、きっと痛い…
だけどあ〜ちゃんは、あたしのそんな想いさえも、すべて受け止めてしまう
なんなんだよ…
Side K
「あ〜ちゃん、可愛かったよ…」
また、か
のっちがあ〜ちゃんを抱いた翌日、必ずのっちが報告してくる
私の心を揺さぶろうとしてくる
…ま、実際ザワついてるんだけど
けど、仕方ない。私が選んだ道だから
そんな素振り見せちゃいけない
ココを越えなきゃ、のっちは、ちゃんとあ〜ちゃんを見てくれない
あ〜ちゃんは、いつだってのっちを優しく見てるよ?
のっちにも、あ〜ちゃんを見てほしいな
きっと、幸せになれるはずだよ?
…
しばらく続いたのっちの揺さぶりも、私たちのセカンドアルバムが発売される頃にはなくなっていた
心境の変化でもあったかな
きっと、何かあった
たぶん、、だけど…
アルバムが発売されて一週間後
ファーストツアーのリハも初日を迎えて…
スタッフさんたちが用意してくれたサプライズ
スタッフさんが準備してくれた大きな箱
わいわい言いながら、三人で箱の蓋を開けた瞬間飛び込んできたケーキに、デコレーションされていた文字…
アルバムウィークリー1位…
初めての、1位…
そのことに、もう嬉しくて嬉しくて三人とも泣いた
しばらく泣いて、ふっと、目の前の二人を見ると
あ〜ちゃんの涙を、のっちが指で拭った
それが無意識なのかどうなのか判らないけど…
のっちの中の何かが
動き出してる
—つづく—
最終更新:2010年02月06日 20:55