sideY




10年くらい前


「彩乃!彩乃、どこ行くんだっ!!」
「うるせーな!!」


バタン、と乱暴に閉まるドアの音。
ゆかには二人、お姉ちゃんがいる。


「あ〜お姉ちゃん、お姉ちゃん、どうしたの?」
「ん?大丈夫だよ、心配しなくても」


あ〜お姉ちゃんは優しくて、頭も良くて。
大人になったら医者になるんだって。パパの病院で働くんだって。


「綾香ー、ちょっと彩乃に連絡してみてくれ」
「うん、わかった」


もう一人のお姉ちゃんは、いっつもパパとママを困らせてる。
あ〜お姉ちゃんとは真逆。ゆか、ちょっと怖い。
だけど、不良ってちょっとかっこいいかも、、
なんて、ゆかは密かに思ったけど、誰にも言わないでおこう。
それに、、、
実はちょっとだけ優しいところも知ってる。
学校の帰り道、後ろ姿ですぐお姉ちゃんだって気付いたけど、
声かけづらくて、そっと後ろをついていったんだ。
そしたら、あっちいったりこっちいったり、フラフラ変な歩き方してるから、
“どしたんだろ?”って道を見たら、
そこに咲いてる野花を踏まないように、それをよけながら歩いてたんだ。


その時から、ゆかの中の嫌いなお姉ちゃんは、
ちょっとだけ嫌いなお姉ちゃんに変わった。




「お姉ちゃんおうちが嫌いなの?」
「ううん、そうじゃないよ。大丈夫だよ」
「パパが嫌いなの?」
「ううん、違うよ」
「じゃあママが嫌いなの?」
「ううん、それも違う」
「えー!じゃあゆかが嫌いなのぉ?」
「ふふw違うよ。誰のことも嫌いじゃないよ」
「じゃあどーしていつもいなくなっちゃうの?」
「んー…今ね、ちょうど反抗期なんよ、って、ゆかちゃんには難しい、か?」
「うーん。よくわからないけど、それって病気なの?」
「ううん、違う」
「じゃあ治る?」
「うんw」


いつかあ〜お姉ちゃんみたいに、優しいお姉ちゃんになるのかなぁー
早くなんないかなぁー。
そしたらゆか、いっぱい遊んであげるのに。






最終更新:2010年02月19日 19:54