「おはよぉ」
大きな瞳をしょぼしょぼさせてるアナタ。
朝が苦手なのは、いつになっても変わらないね。

「おはよ」
そう応えると、いつも、ほんと嬉しそうに微笑む。

あぁ、愛しいな、、なんて
毎朝、飽きもせずに思える
ゆかは、ほんと幸せなんだと思う。


用意した朝食を食べる。
トーストを、もそもそとほうばるアナタの瞳は、まだ覚醒してない。

「のっち?」
「ん?」
「大丈夫?」
「ん?大丈夫らよ?」
「ならいいけど、ちょっと、つらそうだから」
「あぁwいつもより、少し早起きだからね」
「今日は、隣町の外れだっけ?」
「そ、そこにある小学校が古くてね、建て直すんだって。
 だから、もう壊しちゃうの」
「・・・最近、そういうの多いね」
「だね、、、そういう時期なんだろね」

なんて言いながら、すっと視線を落とす。
きっと、疲れてるよね。
最近は、大きな仕事ばかり。
わかってるよ?
のっちが、“黒”の仕事、あんまり好きじゃないこと。
なにも生み出さないのに、、て嘆いてること。

…それも、昔、かな?
嘆いてたこと。
今はどうなのかな?
前ほど、仕事はヤじゃないみたいだけど…
ゆかのために、ムリしてんのかな?
なら、、、ヤだな・・・


「どうしたの?」
いきなり覗き込まれて、びっくり。
あ、もう、覚醒してる表情。
「んーん、なんもない」
「そう?」
「うん・・・のっち?」
「ん?」
「ムリしてない?」
「へ?ムリ?・・・そんなこと、のっちにできるわけないじゃんw」


1度だけ、出会って間もない頃
のっちが仕事してるとこを、偶然見かけたことがある。
すごく、丁寧な、その姿に心打たれたんだ。

なにも生み出さないなんて、嘆いてたけれど
ねぇ、わかってるの?
のっちたちがいなければ、ゆかたちは、なにもできないんだよ。


「じゃ、いってくるね」
いつものように、玄関までお見送り。
「うん、いってらっしゃい」
のっちは、出かけるギリギリまで、いつもゆかの手を握ってる。
「あ、買い物はどうしよ?なんか、買ってこようか?」
「んー・・・ねぇ、明日、お休みだよね?」
「うん」
「じゃぁ、久しぶりに一緒にお出かけしたい」
「…大丈夫?平気なの?」
「大丈夫だよ?」
最近、あたしの調子がよくないことを、気にしてるんだろ。
そんなの大丈夫だよ、、、、そんなの、関係ない、、、し。

「うん、わかった。じゃ、そうしよ」
「うん」
「じゃ、いってきます」
「いってらっしゃい」

のっちは、いつものように
ゆかの頬に口付けて、
おっきな黒い羽を羽ばたかせて、行った。


のっち?

ゆかはね

ふつうのことを
フツウにしたいだけ。

それだけ、だったんだよ?






最終更新:2010年02月19日 20:00