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「ダーーー、づかれだーーー」
「ゆかちゃん、お土産買いすぎ・・・」

両手にあった大きなお土産袋をドサっとホテルの部屋に置く。
のっちも両手に持ってるけど、半分はゆかの物。

「これ、ありがとうね」
ゆかはのっちが持ってた大きな袋の中身を取り出す。
「そいつ、ぬいぐるみのくせして結構重かったよぉ」
のっちはハノ字眉になって文句を言う。

のっちがそいつといったのは、ミッ○ーが雪だるまみたいになってるぬいぐるみ。
それはゆかの膝くらいまでの高さのぬいぐるみで結構大きい。
ゆかが物欲しそうに眺めていたら、のっちが買ってくれた。
最初は断ったけど、「ちゃんとした誕生日プレゼント渡してなかったから」って言って買ってくれた。
なんてゆーか、こういうところ男前ずぎるでしょ。また惚れたっつーの。
これ結構なお値段したよ?いくら働いてるからっていっても、普通の友達にここまでせんでしょ。

「あっ!!今何時!?」
突然ののっちの大声。
「わっ!!・・・8時10分前だよ」
ゆかは驚きながらも備え付けの時計を見てのっちに教えてあげた。

「忘れてた。ほら、ゆかちゃん行くよ!!」
「へ?どこに?ゆか、もう疲れたよ?」
「ダメダメ。これからディナーなんだから!」
そういえば、夜ご飯まだだった。そう思ったら、急にお腹空いてきちゃった。

「どこ行くん?」
「ここのホテルのレストランだよ。予約しといたんだ。忘れるところだったけどw」
のっちはこの日の為に、チケットもホテルもレストランもちゃんと予約してたんだ。
それほど、のっちにとってはこのイヴは大切だったんだ。
いや、イヴが大切だったんじゃなくて、のっちはあ〜ちゃんが大切なんだよね。

でもあ〜ちゃんはそうじゃなかったのかな。
こんな尽くしてくれる恋人がいるのに、いくら家族が大事だからってイヴに予定を入れちゃうのって、どうかと思う。
あーーー、嫌。今、ゆかすごい嫌な女だ。
なに、あ〜ちゃんの悪口言ってんの!?最低だよ。親友の悪口言うなんて最低だよ。



のっちが予約したレストランはバイキング式だったから野菜嫌いなゆかにはぴったりだった。
「・・・美味しい?」
「うん」
「よかった・・・」
「のっち?」
「ん?」
なんかレストランに入ってから、のっちが急におとなしくなった。

「どしたん?」
「なにがー?」
「なんか、シュンとしとるから・・・。ごめん、ゆかなんかしちゃった?」
「なんでゆかちゃんが謝るの?変なのーwちょっと疲れただけだよ」
のっちはお皿を持って席を立ってしまった。

ゆかはそんなのっちの背中を目で追う。
そうしないとのっちを見失いそうで怖かった。

そういえば、のっち痩せた?
いつもストール撒いてるからわからなかったけど、首元が痩せた気がする。
あんなに鎖骨が出てったっけ?痩せたというよりか、やつれた?
やっぱり、バックダンサーの仕事キツかったのかな?

「えっ?もうデザート?」
「・・・うん」
戻ってきたのっちの手のお皿にはカットメロンとカットパイナップルとブドウが数粒しかなかった。

「食欲ないん?」
「んー、なんかね。あんまないかも」
「そう言えば、カレーも少ししか食べてなかったよね?」
「んー、そうねw」
「ごめんね。ゆかがハシャギすぎたからいけないんよね・・・」
「ははは。だから、ゆかちゃんのせいじゃないってw」
のっちはゆかに気を使わせないように、笑って誤魔化してる。
ゆかもデザートに取り掛かった。一口サイズのケーキはどれも可愛くて、美味しくてそれだけでも幸せだった。



「ねぇ、部屋で呑もうか・・・」
テーブルに頬杖をつきながらそう呟いたのっちの瞳はどこか虚ろ。
「・・・うん」
そんなのっちにドキドキしながら部屋に戻った。

部屋に戻ってルームサービスのメニュー表を見たら驚いた。
めちゃめちゃ高い。ぼったくりもいいところだよ、これは。

「のっち、これめっちゃ高いよ。下のコンビニでお酒買ってこようよ」
「えー、いいよ。下までいくのめんどいよ」
「じゃあ、ゆかが買ってくるから。のっち待ってて」
「いいって!」
ゆかが財布を持って部屋から出ようとすると、ベッドに寝転んでるのっちに腕を掴まれた。
上目遣いののっちは破壊力抜群だ。ヤバいって、これ。

「でも・・・」
「いいの。てか、前からルームサービスってやつ頼んでみたかったんだw」
「・・・そうなん?」
「うん。だから、ゆかちゃんも食べたいやつ頼んでいいよ。でも代わりに電話して」
「え?」
「あたし、こういう電話すんの、緊張しちゃうから苦手なのw」
「あはは。ええよ」
ゆかが電話するとすぐに、ボーイさんがワインとフルーツの盛り合わせを乗せたカートを運んできた。

「こりゃ、高いだけだな」
のっちはベッドに寝そべりながら、ワインをチビチビ飲んでる。
「ねぇ、ゆかちゃんもこっちおいでよ」
窓側の椅子に座ってるゆかに手招きするのっち。
レストランでのローテンションは一体どこへいったのやら。
のっちはワイン呑んだら急にハイテンションになった。まー、ゆかはそっちのほうがいいけどね。

「ゆかちゃんも呑む?」
「・・・うん」
のっちは自分の呑みかけのワイングラスをゆかに渡した。
ゆかはお酒の味はわからないから、この高いワインも美味しい味なのかはわからなかった。
けど、のっちが美味しくないって言ってんだから、美味しくないんだろうな。



「あいつといると、思いっきり呑めないんだよね・・・」
「あいつって、あ〜ちゃん?」
「うん」
ここに来て初めてのっちから、あ〜ちゃんの話題を出してきた。

あ〜ちゃんの話は今日一日ふたりとも極力避けていた。と、思う。

「ゆかちゃんとだと、安心して酔えるw」
「あ〜ちゃんだとあ〜ちゃんが酔うと大変だから、自分が気持ちよく酔えないってこと?」
「そういうことw」
ヘラっと笑うのっち。

「今日、楽しかった?」
横たわって頬杖をついてるのっちは妙に色っぽい。
変なの。ゆか、もう酔いが回ってるのかな?
「うん。楽しかったよ?のっちは?」
「チョー楽しかったw」
「イヒヒ」
「ゆかちゃんも横になりなよ。楽だよ?」
のっちはポンポンとベッドを叩く。
ゆかはちょっと緊張しながらのっちの隣に寝そべる。

のっちはワインのコルクで手遊びしてる。
少し、酔ってるのかな?ほっぺがほのかに赤い。目はトロンとしてる。

「前から思ってたんだけどさ・・・ゆかちゃんって彼氏いないの?」
「いないよ・・・」
「なんで?」
「なんでって・・・いないもんはしょうがないじゃろw」
「だってゆかちゃんくらいの歳の子ってみんな彼氏作ってるでしょ?」
「・・・そうだけど」
「好きな人はー?いないの?」
「・・・いるよ」
目の前に。



「その人に告っちゃえばいいじゃん」
「言えないよ」
「なんで?」
「だって、100%叶わない相手だもん」
「100%!?マジで?1%も可能性はないの?」
「ないよ。だって、その人言ってたもん。他の人を好きになるのは完璧にないって」
「そんな事言ったの?その人、すごいね。でも、なんで?」
その人って、あんたの事なんですけど。この前、練習生の子にそう言ってたじゃろうが。

「その人にはもう付き合ってる人がおるから」
「そうなのか・・・。じゃあ、ゆかちゃんは彼女がいる人に恋してるのか・・・」
「うん」
「彼女から奪っちゃえばいいじゃん。その人のこと好きなんでしょ?」
「・・・そんなこと出来んよ」
出きるわけないじゃん。そんな事考えたくもないよ。そんな事したら、あ〜ちゃんものっちも失っちゃうよ。

「じゃあ、ゆかちゃんはその人の事諦めるの?」
「諦めたいけど、どうやったら諦められるかわからんの・・・」
「そっか・・・。ゆかちゃんは叶わぬ恋をしているのか。辛いね・・・」
のっちはよしよしって言いながら、ゆかの頭を優しく撫でてくれた。
叶わぬ恋の相手に、慰められてるこの矛盾。可笑しい。

「ゆかちゃんは可愛くて良い子なのに、もったいないよ」
「のっちはゆかの事、勘違いしてる。ゆか可愛くもないし良い子じゃないもん」
「勘違いしてるのはゆかちゃんだよ。自分がわかってないね〜」
のっちの手がゆかの頬に触れた。それは壊れ物を扱うみたいにそっと優しく触れた。むずがゆい。

のっちの言動がおかしい。
酔ってるから?ゆかさっきから死にそうならい緊張してるだよ?それ、わかってる?



「今日さ、ずっと一緒にいてさ、思ったんだ。

もし綾香と付き合ってなかったら、

あたし・・・」


え?この人なに言おうとしてんの?


「きっとゆかちゃんのコト・・・」


まさか。


「好・・・「お風呂!!」

ゆかはのっちを言葉を遮った。

「お風呂?」
「うん!ゆか、お風呂入れてくる!!」
ベッドから飛び出し、急いでお風呂場へ駆け込む。

聞きたくなかった。

のっちは『きっとゆかちゃんのことす』の後の言葉は何て言うつもりだったの?

ゆかが予想した言葉だったら、嫌だ。
だから遮った。

なんでそんな事言うの?
そんな言葉いらないよ。
そんな言葉言われても嬉しくないよ。

だって実際はあ〜ちゃんと付き合ってるじゃない。
仮定の話されても何も変わらないじゃない。
期待させるだけさせて何も変わらないじゃない。
だたゆかひとり勘違いして舞い上がるだけじゃない。

ひどいよ。ひどいよ、のっち。

色々な想いがこみ上げてきて、ゆかはお風呂場で泣いた。
お湯を流しっぱなしにして泣き声を隠す。

腕時計を見たら12時を回っていた。
あぁ、そうか。
イヴの魔法がとけたから、ゆか泣いてるんだ。

魔法がとけたから、辛いんだ。







最終更新:2010年02月19日 20:12