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クリスマスが終わると、ゆかは広島に帰る準備を始めた。あ〜ちゃんも同じ広島だから、一緒に帰ることになった。
ゆかは別に一人でもよかったんだけど、あ〜ちゃんがどうしてもって言うから仕方なく。
お決まりの様に、のっちにもお願いされたし。のっちも故郷は広島らしいんだけど、帰らないみたい。
なんか家出同然でこっちに出てきたから、親とは絶縁状態らしいって、前にあ〜ちゃんが言ってた。

のっちが駅まで車で送ってくれるって言ってくれたから、ゆかはふたりのマンションへ向かった。
チャイムを押すと、のっちが応対してくれた。
「どうも」
「なに改まってんの?入って入ってw」
当初の無愛想が嘘のように、のっちはゆかに対して優しくなった。
てか、会うたびに優しくなってる気がする。会うたびに、ゆかは好きになっていってる。どうしよう。

「ゆかちゃんいつ帰る予定なん?」
「うーん、4日の午前中かな?」
「そうなん!?じゃあ、あ〜ちゃんもそうしようかな・・・」
「4日なら、あたし駅まで迎えにいけるよ。あ〜ちゃんも4日にしなよ。二人いっぺんの方が楽だしw」
「じゃあ、そうしよ!ゆかちゃん、帰りも一緒でいい?」
「いいよん」

時間になったからゆかたちはのっちの車がある地下駐車場へ向かった。

「えっ?あ〜ちゃん前に座らないの?」
「うん。たまにはこっちに座るのもいいじゃろ?ゆかちゃん、となり座ってw」
あ〜ちゃんは何故か助手席じゃなく、後部座席に座った。
ゆかはあ〜ちゃんに言われた通りとなりに座った。のっちは何も言わなかった。

走行中のっちとあ〜ちゃんはほとんど喋らなかった。喋っても一言二言くらい。
あ〜ちゃんはずっとゆかだけに話しかけていた。
運転だけしてるのっちは少し寂しそうに見えた。
それはゆかの気のせいであってほしい。



「のっちとなんかあったん?」
新幹線に乗って新横浜を過ぎた頃、思い切って訊いてみた。
「なーんもないよ?どして?」
あ〜ちゃんはあっけらかんと答える。

「だって、いつもあ〜ちゃん助手席に座るじゃろ?今日は後ろに座ったから・・・」
「あー、気分転換?」
「のっちともあんまり喋らんかったでしょ?」
「たまたまじゃよ。そういうときもあるんよwいっつも喋ってるわけじゃないけぇ」
「喧嘩したとかじゃないよね?」
「ないない。喧嘩なんて疲れるだけじゃろ?そんなんしないわw」
「ならいいんだけど・・・」
あ〜ちゃんはなんだかちょっとめんどくさそうに受け答えしている感じ。
やっぱり、なんかあったのかな?でも、喧嘩はしてないって言ってたし・・・。

「そんなことより、ゆかちゃんはどうなん?」
「へ?」
「前に好きな人おるって言っとったじゃろ?なんか進展あったん?」
ゆかの話題に切り替えたあ〜ちゃんは途端に目をキラキラさせてる。女の子って人の恋バナ大好きだもんなw

「進展も何もないけぇ。だたのゆかの一方通行の片思いじゃけw」
「えー!?そうなん?協力してあげたいけど、あ〜ちゃんの知らない人なんよね?」
「・・・うん」
あ〜ちゃんに協力なんて、無理でしょ。無理無理w

「・・・でも、恋人になっても幸せになれるとはかぎらんけぇ。もしかしたら、片思いが一番楽しい恋かも・・・なーんてねw」
あ〜ちゃんがそんな事言うなんて意外。
てか、それってのっちの事否定してんじゃん?
ねぇ、どうしたの?あ〜ちゃんってば。

「やっぱり、のっちとなんかあったの?」
ゆかは心配になってもう一度訊いた。
「のっちとはなんもないよ・・・。ちょっと、わからなくなっただけ」
「えっ?何がわからんの?」
「んー、色々?まー、この年末年始は丁度よかったかもw」
「よかった?」
「うん。ちょっと、色々考えようと思ってさ。そろそろ就活も本腰でやらにゃーいけんでしょ?w」
「・・・あぁ。そうだよね」
「今の生活がいつまでも続くわけじゃないけぇ。大人にならなきゃいけん」
窓際に座ってたあ〜ちゃんはそれからずっと景色ばっかり見ていた。
ゆかはそんなあ〜ちゃんを見ることしか出来なかった。



あ〜ちゃんが言いたかったのは、年齢的には二十歳すぎてるから大人って意味じゃないんだよね。
ちゃんと社会に認められた人間にならんといけないって事なんだよね。

学生から社会人に変わるって事が大人って意味なんでしょ?わかるよ。
もしかして進路に不安があるから、のっちとの関係が危なくなってるの?

でも悩む必要ないじゃん?
あ〜ちゃんは保育士さんになりたいって言ってたじゃん。ちゃんとやりたい仕事見つけてるじゃん。
のっちは元々働いてるし、ちゃんと税金も払ってるんでしょ?立派な大人じゃん。

それにあ〜ちゃんはのっちにめっちゃ愛されてるじゃん。
なにが不満で、なにが不安なの?

ゆかはあ〜ちゃんが羨ましいんだよ?
だからそんな事で悩んでるあ〜ちゃんがちょっと嫌。

「じゃあ、あけおめメール送るからね〜」
「うん。よいお年をー」
広島駅に着くと、すぐにあ〜ちゃんと別れた。別れる時、あ〜ちゃんはくしゃって笑った。それを見て少しホッとした。

大晦日の夜は地元の友達と地元の神社へ繰り出した。
ゴーンっと鐘が鳴った。

年が明けた。
新しい年に変わった。

去年はあ〜ちゃんとのっちと知り合えた奇跡の年だったなって、しみじみ思いながら、みんなにあけおめメールを送信した。

カチカチ携帯をいじってたら、知らない番号から電話が掛かってきた。
普段は知らない番号だと無視するんだけど、ちょうどメールを打っていたもんだから勢いで通話ボタンを押してしまった。

仕方なく出てみる。



『・・・はい』
『あー、えーっと、ゆか・・・ちゃん?』
えっ、この声は・・・

『のっち!?』
『はい。そうですw』
『なんで!?チョー、ビックリしたんだけど!!』
だって、のっちとはまだ番号交換してなかったし、掛かってくるはずないと思ってたから。

『あははwマジで?』
『うん、だってのっちから電話掛かってくると思わなかったもん。番号知らなかったし』

『あー、ゆかちゃんの番号は綾香から教えてもらったw』
『・・・うん』
なんでゆかに電話してきたの?なんて、訊けない。から、相槌しか出来なかった。

『なんかね、年が変わった瞬間に「おめでとう」って言いたくなってさ。ゆかちゃんに』
『・・・そうなん?』

『うん。明けましておめでと』
『・・・う、ん』

『うんってwゆかちゃんも明けましておめでとうって言ってよw』
『・・・ごめん。あけま、して、おめ、でと』
なんかすごくビックリして、嬉しくて、嬉しすぎて鼻の奥がツンとしたから、上手くおめでとうが言えなかった。

『今年も綾香のことよろしくね』
『・・・うん』
それでもやっぱりのっちの頭の中はあ〜ちゃん一色なんだ。それだけは変わらないんだね。

『変わらないで・・・』
『えっ?なにが?』

『のっちはずっと変わらないでいて。ずっとそのままでいて・・・』
『うーん、よくわからんけどwうん。大丈夫だよ?』

のっちはずっとあ〜ちゃんを好きでいて。
変わらずにずっと、ずっと。約束だよ。


年が変わり、二週間ぶりにバイト先に行ってみると、性悪女店長が辞めていた。
かわりに新しい店長がいた。

ここにも変化がおきていた。







最終更新:2010年02月19日 20:30