押し倒した彼女の腕が、私の首の後ろに回される。
ソファの上、夕方から夜にかけての静かな変化が起きている中で、私の部屋はどんどん暗闇に近付いていく。
目の前、にあるはずの彼女の服はいつもみたいにワンピースなもんだから、上半身はそんなに開けてないはずで。でもヒラヒラとした裾は私の手によって太腿の上まで、上がっているはずで。
さらさらと力無く撫でたら、指先に感じたのは熱と、反応している事を教えてくれる小さな振動。
暗闇が酷くなる前に、彼女の首筋に顔を埋めて。
見えなくなってしまう前に、私のカラダ全部で触れて。
埋め尽くしてしまおう。
そんな言葉が、頭の片隅に浮かんだ。
「ここでするん?」
「ここがいい」
「ほんまに…?」
「動きたくない。ガマンできん」
「…しょうがない子じゃね」
暗闇に少しだけ慣れた私の瞳に、至近距離で彼女の顔が映る。
は、っと息を吐きながら、私の指の動きに時々堪え切れずに声を洩らして。
下唇を咬みながら、視線がちょっとだけ下を向いてる。
それを私の方に向けさせたくて、頬を撫でるように添えた手でそっと顔を上げさせた。
…瞬間、後悔した。
彼女が私を見て、笑って見せたから。
いつもそうだ。
私がこんな風に彼女を欲しても、彼女はいつでも笑ってる。
それをどうにか崩そうとしても、それでちょっとだけ酷くしてしまっても。
咬み付いても。
痕を付けても。
服を汚しても。
少し傷付けても。
…彼女はいつも、笑ってる。
首の後ろに回ったままだった腕が、一瞬私を強く締め付けた。
片方の手が私の髪をくしゃくしゃにしてるのがわかる。
少しだけ反り返ったカラダとソファの間に片腕を差し入れて、私も離さないように抱きしめた。
何度か大きく震えた後、力の抜けたカラダが、ソファに沈もうと、したから。
「…まだ、足りん」
そう、彼女の耳に直接言葉を注ぎ込んで、思いっ切りカラダを持ち上げた。
「っ!?……のっ……!」
驚く声を無視して、私の足の上に座らせる。
片方の手、の指は、まだ彼女の中。
「まだ、足りない」
もう一度、彼女に伝えた。
もっと乱したい。
もっと刻み込みたい。
私で埋め尽くしたい。
暗闇の中、私の指はまた、彼女を何度も貫いた。
焦り、とは違う。
独占欲、とも違うかもしれない。
でもいつも感じるものは。
腕を回して、それが彼女の背中の方でちゃんと繋がったのを確認しても、満たされないこの気持ちは。
何度も首筋を食んで、痕を残す。
腰側に落とした手でも、乱暴に、執拗にカラダをまさぐる。
指の動きに合わせて上下にカラダを揺らす彼女の顔は、私の首筋に隠れて見えなかった。
どんな表情をしているのか。
「…あ〜ちゃん」
見たくなって、名前を呼んだ。
…瞬間、また後悔した。
私の声は、思ったより余裕がなくて。
そして、見せてくれた表情は。
「…ほんまに、しょうもない子じゃ…」
同じように余裕がないくせに。
私の上にいるくせに。
まるで、私を掌に乗せてるみたいに。
彼女は、やっぱり笑ってた。
END
最終更新:2010年04月05日 21:11