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「焼肉おいしかったねw」
「はい。久々に焼肉食べました。ご馳走様でした」
「いえいえ。どういたしましてwてか店長がバイトと割り勘ってカッコ悪いっしょw」
「いやいや、店長は大人で、すごくかっこいいですよwゆか、憧れちゃいます!」
「えー、そんな面と向かって言われると照れるっスw」
店長は本当に照れくさそうにして頭をポリポリかいてる。なんか可愛い。

なんか今日はまだ帰りたくないな・・・。
もう少し店長と一緒にいたいな。
なんかもっと店長の事知りたいな。

「樫野ちゃん明日学校?」
「明日は午後からですけど?」
「んじゃさ、もう一軒行かない?」
「はい。大丈夫です!」
「よっしゃ!行こ!行こ!」
ヤバイ、これ超嬉しい。店長から誘ってくれた!
店長もゆかと一緒でまだ帰りたくないって思ってくれたのかな?一緒にいたいと思ってくれたのかな?

いつのまにか『樫野さん』から『樫野ちゃん』って呼び方が変わってるし。
店長に気に入ってもらえた証拠かな?

向かったお店は路地裏にあるオシャレなバー。
なんかお店の中はジャズ?っぽい音楽が流れてるし、マスターは渋いし、他のお客さんはみんな紳士と淑女しかいませんって感じ。
その中でゆかはひとりだけ浮いちゃってます感バリバリで、恥ずかしかった。
けど店長が選んだ席は出入り口から一番離れてるカウンターの端にしてくれたから、幾分恥ずかしさは和らいだ気がする。

「なに呑む?」
「えっと・・・」
こういう大人なお店に入った事ないから何があるのがわかんないよ。
ゆか普段お酒呑まないから、名前とか種類とかわからないし。

「甘いやつがいい?」
「はい・・・」
「すいません。カルーアミルクとカシスソーダ」
ゆかが困ってるとさりげなく助けてくれるって素敵。かっこいいな。
カシャカシャとお酒を作るマスターもかっこいいけど、店長の大人の態度がかっこよすぎ。



「あ〜ちゃんおもしろいねw一緒にいて楽しいでしょ?」
「はい。あ〜ちゃんは可愛くておもしろくて一緒にいて楽しくて、ゆかはそんなあ〜ちゃんが大好きなんです」
店長が頼んでくれたお酒はコーヒー牛乳みたいに甘くておいしかった。

「あたし、あ〜ちゃんと仲良くしゃべってたから、のっちちゃんに嫌われちゃったかもな〜」
赤いお酒を呑みながら店長は意味深な事を呟いた。

えっ?それはどういう意味ですか?店長。

「あの二人、恋人同士でしょ?」

なんでわかったの?普通、わからないよ。あ〜ちゃんとのっちを見て、普通の人なら仲のいい友達同士って思うよ。

「あっ!もしかして二人の事知らなかったとか?」
「いえ・・・知ってますけど・・・あの・・・えっと・・・」
「『なんでわかったんですか?』って事?」
ゆかはコクコク頷く。

「だってあたしもあの二人と同じだもん」
そう言って店長は赤いお酒を口につけた。

「同じって・・・」
えっ、マジで?嘘ぉ・・・。

「そう。あたしも女の子が好きな人なの」
ビックリした。まさか店長もそっちの世界の人だったとは・・・。てか、今ゆかもそっちの世界に入っているんだけども。

「驚いた?」
またコクコク頷いた。

「ドン引き?」
今度は首を横にブンブン振った。

「気持ちわりーって思った?」
首をブンブン振る。

「もう一緒にご飯なんか行きたくないって思った?」
また首を振る。



「ありがと。嘘でも嬉しいよ」
店長はテーブルに頬杖して優しい顔でゆかを見ている。
「嘘じゃないです!また一緒にご飯食べたい・・・です」
「ありがと。ゆかちゃんは優しいね・・・」
優しい顔しながらゆかの頭を優しく撫でる店長。
「樫野ちゃん」から「ゆかちゃん」と変わってその呼ぶ声にちょっとドキっとした。

コーヒー牛乳みたいな甘いお酒はその時は甘いだけだったけど、後から酔いが急激にゆかを襲った。

バーの帰り道、また店長と歩く。
ゆかは酔いが回ってきたからあんまりしゃべれなかった。
店長もさっきまでよりかは口数か減ってて、沈黙する時間が多くなった。

たまに目が合ってお互いに笑う。
それがなんだか心地よかった。

店長はゆかのアパートの前まで送ってくれた。
ゆかは深々とお礼を言って部屋に入ろうとすると呼び止められた。

「ゆかちゃん、ごめん」
「えっ?何がですか?」

「好きになっちゃった」
「へっ?」

「ゆかちゃんの事好きになっちゃった。ごめん、迷惑だよね?」
ゆかは首を横に振った。なんで横に振ったんだろ。反射的に振っちゃった。

「ねぇ、よかったら付き合ってみない?」
「えっ!」

「そんな真剣に考えないでいいよ。なんつーの?軽い感じでさ?」
「はぁ・・・」

「あたしの事が嫌いじゃなかったら考えといて。そんで次のバイトの時に返事聞かせて?」
「はい・・・」

突然すぎる店長の告白に驚いて酔いが一気に醒めた。

なんでその場で断らなかったの?
ゆかはのっちが好きだから店長とは付き合えないでしょ?
でものっちはあ〜ちゃんの恋人で、あ〜ちゃんはゆかの親友で、のっちがゆかの恋人になるのは100%ないわけで・・・。
このままのっちを好きでいても不毛な恋で終わってしまうのは目に見えてる。
絶望的な相手を好きでいるよりも、ゆかを好きと言ってくれる人と一緒にいる方が希望はある?

きっとあの人は神様がゆかにくれた贈り物。
可哀相なゆかに神様が見かねて、のっちに似てる店長に逢わせてくれたんだ。

店長はのっちよりも大人でかっこいいし。
のっちなんか、無愛想だし、すぐすねるし、自分勝手だし、怒ると怖いし。第一、ゆかなんかに興味ないだろうし。
だったらゆかは店長にする。神様がくれた店長にするよ。

のっちへの恋心は地獄にでも捨てるよ。

三日後、ゆかはバイト終わりに店長にOKの返事をした。
店長はすごく喜んでくれた。笑った時また八重歯が見えた。

思わず胸がキュンとした。
その笑顔にキュンとなったのは、店長に?それとも・・・。

人って、愛するよりも愛される方が幸せなのかな?






最終更新:2010年04月05日 21:15