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「おぉ!?どしたぁ?」
一人でお店を閉めてた店長はゆかが突然来て驚いていた。

「なんか・・・店長に会いたくなっちゃって来ちゃいました」
「おぉ〜嬉しいこと言ってくれるねw」
店長はサラっと受け流して、床掃除を始めた。
ゆかも手伝おうともう一本あるモップを手に取った。

「いいって。今日バイトじゃないんだから、更衣室で待ってて。すぐ終わらすから」
そう言って店長はゆかが持ってたモップを取り上げて、更衣室に行くように促した。

おとなしくパイプ椅子に座って待ってると、扉が開いた。
「夜ご飯食べた?」
「まだです」
「じゃーなんか食べてく?」
「・・・はい」

店長は素早く着替えて、オシャレなイタリアンレストランに連れてってくれた。
そこは高い割にはあまり美味しくなかった。
「うーん・・・。値段にだまされたねw」
それは店長もそう思ったみたい。
「店長・・・」
「うん?」
「あの・・・」
「んー?」
「早く・・・」
「ん?」
「ふたりっきりに、、、なりたい・・・です」
「ふふ。可愛いこと言ってくれるね〜。わかった。うち来る?」
「はい・・・」

いつもと違うゆかの態度に店長は柔軟に対応している。
さすが頼れるカッコイイ大人。ゆかは今そういう人に思いっきり甘えたい気分なんだ。

「まっ、適当に座ってよ」
店長の部屋は殺風景だった。てか、ダンボールが散かってる。
「あっごめん。まだ引っ越してきて間もないから荷物ほどいてないんだよねw」
「それって、転勤ってやつですか?」
「そうそうw前は横浜で店長やってたんだけど、こっちに呼ばれてさ、通勤時間が惜しいから引っ越してきちゃったんだw」
「大変ですね。大人って・・・」
「そーだよぉ。ゆかちゃんも働き出すとわかるよwてか、もうそろそろ就活でしょ?」
コンとテーブルに淹れ立てのコーヒーを置いてくれた店長。



「そうなんですけど、なんかピンとこなくて。将来の自分が見えないってゆーか・・・」
ゆかはコーヒーのマグカップを手に取る。
あっ、スヌーピーだ。そういえば、あ〜ちゃんこの前スヌーピーってあんまり好きじゃないって言ってたよーな・・・。

「やりたいこととかないの?」
「やりたいこと?」
「うん。例えば、将来独立したり、自分のお店出したいとかね?」
「店長は今の仕事はやりたかった仕事ですか?」
「うーん、あたしはねー今は通過期間ってやつかな?」
「通過期間?」
「まー、近い将来自分の店を出す為の勉強中ってとこ?」
「すごいですね・・・。やっぱり店長は強くて頼りになってカッコイイ人です」
「えっ!?なに急に?褒めてもなにもでないよ?w」

カッコイイな、店長。ちゃんと将来を見てる人ってかっこいいな。
のっちも自分に合ってるダンスを仕事にして生活してるんだもん。
あ〜ちゃんも保育士になりたいって言ってた。

なんだ皆ちゃんと先の事考えてんだ。

ゆかだけじゃん。
なんも考えてないの。フラフラしてんの、ゆかだけじゃん。
ゆかだけカッコ悪いじゃん。

「その近い将来のお店出す時、ゆかも一緒にいていいですか?」
「はは。いーよ。でもめっちゃ給料安いかもよ?w」
「・・・それでもいいです」
「今日のゆかちゃん・・・すごい可愛いね」
「ゆか・・・可愛くなんてないです」
「すんごい可愛いよ?今日ゆかちゃんと会ってからずっとキスしたいと思ってたんだよ?」
「・・・ゆかも、、、同じです」
「そんな顔して言われると、きっとキスじゃ止まらなくなるんだけど・・・いいの?」
「いい、です」
店長はゆかが持ってたスヌーピーのマグカップをテーブルに置いた。
こんな間近で店長の顔を見たのは初めて。やっぱり美人はどんな距離で見ても美人だ。

早く人肌に触れたかった。
こんな雪が降る寒い冬は人肌が恋しくなる。

だから冬は嫌い。自分が生まれた季節だけど嫌い。

いつの間にかゆかはベッドに押し倒されてた。
キスしたのいつぶり?あー、そういえばこの前の合コンでメガネヤローにされた以来か・・・。

でもこんなキスしたのはいつぶり?覚えてないや。



「あ・・・」
店長の唇がゆかの首筋に這うから思わず声が出てすごく恥ずかしくなった。
「電気・・・」
「え?」
「電気、、、消して・・・ください」
「おっけー」
少しでも恥ずかしさを隠す為、店長にお願いした。店長は笑って電気を消してくれた。

人肌に触れるのはいつぶりだろ?
もうずいぶん触れてないから恋しくてしょうがなかった。
寂しくてしょうがなかった。

耳元で店長の息遣いが聞こえる。
きっとゆかも同じような息遣いなんだろうな。

下の方からいやらしい音が聞こえてきた。それはゆかが出してる音なんだけど。
久しぶりなのになんでこんなになってるんだろ。久しぶりだから?自分どんだけ欲求不満だったんだよって感じ。

あ・・・。

「ゆか」
店長が耳元で甘く囁く。「ゆかちゃん」じゃなくて「ゆか」って。
「てん、、ちょ」
ゆかもそれに応える。
「名前で、呼んで・・・」

名前?

店長の名前ってなんだっけ?

思い出そうとしても、身体中が熱くて刺激が強すぎて出てこない。

「のっ、ち・・・」

ゆかが咄嗟に呼んだのは店長の名前じゃなかった。

店長の動きが一瞬止まった。
目が合った。それは電気がついてない部屋でもわかった。
次の瞬間、店長は寂しそうに笑った気がした。

しまったって思った。
思ったけど、それどころじゃなかった。店長の動きが再開してそれどころじゃなかった。
ゆかは今人肌が恋しいからそれどころじゃなかった。

事を終えると、店長はゆかの隣で寝息を立て始めてる。
店長の細くて長い腕がゆかにのしかかってる。それは重くないんだけど、ゆかにはすごく重く感じた。

「ユカ・・・」
「はい?」
「・・・」
あっ、もしかして寝言?
寝言でもゆかの事呼んでくれるのに、ゆかは店長に最低な事しちゃったよ。
マジで最低だ。なんでのっちなんて言っちゃったんだろ・・・。謝っても済む問題じゃないよね・・・。
罪悪感でいっぱいだよ。

「ユカ、、、リ」
「ん?」

「ユカリ、、、」
「え・・・」
ゆかり?

「おいてかないで・・・」
店長?

ユカリって誰ですか?
なんで泣いてるんですか?
どんな夢みてるんですか?
おいてかないでってどういうことですか?

もしかして店長もゆかと”同じ”なんですか?







最終更新:2010年04月05日 21:28