sideA




6年くらい前。


真夜中に有香がお腹が痛いと泣きだした。
パパもママもまだ帰ってこない。
全然治らないし、熱まで出てきた。どーしよ、、。


「ゆかちゃん、大丈夫?」
「うぇぇ、痛いよぉ」


どーしよ、どーしよ。パパの携帯繋がらんし。
ひとりで慌ててると、玄関から「ただいまー」の声。
久しぶりに夜遊びに行ってた妹が帰ってきた。


「のっち!ゆかちゃんが!」
「あ?」


慌てて状況を説明すると、「ばかやろーなんで救急車呼ばねーんだよ!」と、のっちは有香の部屋に走った。
片手に持った携帯で救急車を呼びながら。


「ゆかっ!」


ドアを派手にあけてのっちはすぐにベッドに駆け寄った。


「…ぁ、のっ、、」
「大丈夫か!?」


ゆかは涙をいっぱい溜めた目で、のっちに手を伸ばした。


「救急車呼んだから、大丈夫だから、な?病院行こう」
「うん、、のっ、ち、」
「どした?寒いか?」
「ぅうん。へへっ、、初めて、名前呼んだぁ、、」
「え?」
「ゆか、って、」


泣き顔のまま、へへって笑いながらのっちに手を伸ばす。
のっちは黙ってその手を握った。


こうゆう時ののっちは頼りになる。
だけど、、
こんなにも頼りない自分に気付かされて、嫌になるよ。




「姉ちゃん乗って」
「え?」
「あたし聞いてもわかんねーし、多分忘れるから」


付き添って救急車に乗ったのは私だった。
有香は大事には至らなかった。




と、この時は思っていた。
変わらない日々を送っていた。
でも、その二年後。
今度は昼間に、有香はまた倒れた。






最終更新:2010年04月05日 21:31