のっちがいい。
のっちしかいない。
そうでしょ?あ〜ちゃん。
のっちが好きなんでしょ?
言ってよ、ねぇ。
「のっちかわいい…」
くしゃっとのっちの髪をなでてあ〜ちゃんはそう呟いた。
のっちはただただ待つ。あ〜ちゃんの口から好きだって聞けることを期待してただただ、待つ。
待つ。…
待つ待つ。……
待つ待つ待つ。………
待つ待つ待つ待つ待つ待つ待つ待つ待ま
っていっこうに言いやしねー!ちょっとあ〜ちゃん!焦らしプレイはやめてっ。
そうこうしていると、あ〜ちゃんはのっちの二の腕をふにふに揉みながらセーターについてる毛玉をぶちぶち取り始めた。
「あ〜ちゃん!」
「ん〜?」
「あの、」
「ん〜?」
ん〜?なに〜?ってさっきまでのやり取りなんて知らんぷりで毛玉をぶちぶちぶちぶち…。
やる瀬ない…やる瀬ないよあ〜ちゃん。
もうこうなったら仕方ない、恥を承知で、仕方ない…。
「…のっちのこと、好き?」
「…」
ぎゃー!
なーにが、好き?だ!
自分の口からとかほんと寒い!さむいぼ立つ!
だからあ〜ちゃん早く、早くのっちを暖めてよ。あ〜ちゃんの声で暖めてよ。
それでも俯いて二の腕を掴んだままあ〜ちゃんはうんともすんとも言わない。ふにふにぶちぶち毛玉遊び。
…え、何違うの?のっちの勘違いなの?いや、そんなはずは…ない!
もう待ってもいられないのっちはまたあの言葉を言うはめになる。
「あ〜ちゃん…好き?」
「……」
歯痒い。
手を伸ばせば捕まえられるのに。てゆーかもう触れ合ってんのに。もう手に入れたも同然なのに。
歯痒い。
「あ〜ちゃん」
「………」
言ってよ、聞きたいよ早く…早く両想いになりたいよあ〜ちゃん。
「好き?」
早く
「………ぅん」
コクリとあ〜ちゃんは頷いた。
のっちの肩に額を寄せて
のっちのセーターに顔を押し付けて
のっちの二の腕をこれでもかってくらいに掴んで
あ〜ちゃんはのっちの横で最大限に照れて見せた。
かっ
かわいいー!!!
やばいやばい心臓が、心臓が疼く!!
「あ、あ〜ちゃん。ねぇあ〜ちゃんっ」
頭をぽんぽんしてみても張り付いてる腕を揺さぶってみてもあ〜ちゃんは頑なに顔を上げてくれない。
「あ〜ちゃーんちょっと離れて」
「…やだ」
「やだよ、顔見せてよ」
「やだ!」
「も〜んじゃこうしたる!」
未だに腕に絡み付くあ〜ちゃんを無理矢理振り切って、力の入りきったその両手を捕まえた。
「ちょ、やめんさいっ」
「顔真っ赤ー。ふへへ」
「…バカ、アホ、」
「うんうん」
「……好き」
目が合ってすぐにあ〜ちゃんが消えた。
のっちから見えてるのはふわふわ柔らかいあ〜ちゃんの髪の毛と、行き場を失った自分の両手。
「…のっち、好き」
すぐそこで聞こえるあ〜ちゃんのちっさい声がのっちの体温をまた上げて、しがみつくみたいにして抱きしめてくるあ〜ちゃんの両手がのっちの胸をえぐる。
「のっちも…大好き」
ふらふらしてた両手をあ〜ちゃんに回してぎゅっとしたら、嘘みたいに温かくて柔らかくて。
息を吸うことも忘れちゃうくらい全神経があ〜ちゃんに持ってかれた。
ああ神様!
彩乃は今死んでも悔いはありません!
お父さんとお母さんによろしくお伝えください!
ああ神さ、
「…じゃ、帰るけえ離して」
「へ?」
あ〜ちゃんはそう言うと、ぐいっとのっちの肩を押してのっちの腕から逃げた。
もう帰っちゃうの?そんな〜!
「帰るん?」
「もう夜だし…」
「…そっか」
そそくさと帰り支度を始めたあ〜ちゃんをベッドに腰掛けて見つめる。
なんだよ、なんかえらくあっさりしてんのねあ〜ちゃん。もっとさーこう…もっとさー。
「のっち」
すっかりコートまで着ちゃったあ〜ちゃんが座ってるのっちの前に立った。
髪に触れてきたからその手を捕まえてぐいっとひっぱる。あまりにも簡単にあ〜ちゃんの体が近づいたから、すかさず抱きしめた。
本当はもっとこうしてたいのにな。もう帰っちゃうんだね…。
「…ばいばい」
明日もまた学校で会えるのに、もうこれで最後みたいな声が出た。
はぁ、情けないなー。
「また明日、ね?」
「うん」
のっちの頭を抱えたあ〜ちゃんは、一回ぎゅっとしてから体を離した。
あーまた離れちゃった。
あ、そう言えば
「ひざ枕!」
「何?」
「ひざ枕してもらおうと思っとった…」
見上げたあ〜ちゃんはぷははっと笑って犬にするみたいにのっちの髪をくっしゃくしゃにしてくる。
「なんで笑うん!」
「そういやそんな約束したねー」
「のっち忘れたことなんてないよ?」
「あら、それはそれは」
「今日、だめ?」
自分でくしゃくしゃにしたのっちの髪を今度はキレイに整えたあ〜ちゃんは、とびっきりの笑顔でこう言った。
「また今度ね?」
つづく
最終更新:2010年04月05日 21:42