Side K
「…あ〜ちゃん、ごめんね」
「なんで、謝るん?」
だってさ…
「私がのっちのこと、頼んじゃったから…。あ〜ちゃんに辛い想いさせちゃったんだよね…」
まさかのっちがあ〜ちゃんから離れるなんて、思ってもいなかったから
好きになってくれたら、ずっと側に居てくれるもんだとばかり思ってたから
私の勝手な思い込み…
手持ちぶたさで、指先であ〜ちゃんの前髪を弄ると
気持ち良いのか、また瞼を閉じるあ〜ちゃん
そしてそのまま話を続けていく
「そんなことないけぇ…ゆかちゃん悪くなぃ」
「けど、実際こんな状態にさせちゃったし…」
こんな風になるんだったら、のっちに頼まなければ良かったのかなぁ、、?
なんて思ってたら、物音を立てないように、こっそり部屋のドアを開けて、そろりそろりと私の隣に座ってきたのっち
あ〜ちゃんが眠ってると思ったのかな?まだ起きてるよ?
「確かに、のっちに止めよって言われたの、やだったけど…あたし要領悪いからさw頭では分かってんだけど、自分の気持ちの整理のしかた分かんなかったから、こんなことになったっていうか…」
自嘲ぎみに笑って、でもなんだか辛そうな感じじゃない
「すごい辛かったんけど…でも、やっと、大丈夫かもって…のっちと二人とかじゃなくて…三人で一緒が良いなって、さっき、そう思ったんよ」
「そっか」
あ〜ちゃんの中で整理できなかったものが、今回のことで、少し気持ちを切り替えるきっかけになったのかも
そうだね、、三人でなら、乗り越えられるよ
あ〜ちゃんとのっちと、私…
「かと言って、のっちの側に居た事、後悔はしとらんよ。ちゃんと幸せだったから…そう思わせてくれたのっちの想い、今は信じたいから」
「そうじゃね」
隣に居るのっちを見ると、ちょっと困ったような顔であ〜ちゃんの話を聞いている
あ〜ちゃん?のっちはちゃんと、あ〜ちゃんのコト好きなんだよ?
ねぇのっち?のっちの想いは、ちゃんとあ〜ちゃんに届いてるじゃん
「じゃぁ…のっちにも言ってあげて?なにも言わんけど、すっごく心配しとるはずだから…。ね、のっち?」
「ぇ?」
あ〜ちゃんの髪を弄っていた手を自分の所に戻して言うと、のっちが居ると思ってなかったあ〜ちゃんはパッと瞼を開けて、すぐにのっちを見つけて止まる
「え、ぃや、その…」
のっちはのっちで、あ〜ちゃんの言葉にどう反応して良いのか分からずに、キョロキョロ
だけどすぐに…
「のっち…」
「あ〜ちゃん…」
二人の視線は重なる
うん、、きっと大丈夫
「私、ちょっともっさんと話してくるけぇ」
「え、ちょっとゆかちゃん?」
二人で、ちゃんと話した方が良い
「あ、のっち、ちゃんとあ〜ちゃんの汗拭いてあげるんよ?」
「の、のっちが?」
「タオル持っとるじゃろ?ほんじゃね」
これからの二人のために、ね?
Side N
タオルを絞って楽屋まで戻る
もしかしたら、あ〜ちゃんが休んでるといけないから、音を立てずにこっそり中に入る
そのままゆかちゃんの隣まで行くと、どうやら二人で話してる最中みたい
「…かと言って、のっちの側に居た事、後悔はしとらんよ。ちゃんと幸せだったから…そう思わせてくれたのっちの想い、今は信じたいから」
「そうじゃね」
目を閉じたまま話しているあ〜ちゃんは、あたしに気付いていない
その言葉に胸がぎゅってなる
あ〜ちゃんは前に進もうとしてる…
ちゃんと見届けなくちゃ
「じゃぁ…のっちにも言ってあげて?なにも言わんけど、すっごく心配しとるはずだから…。ね、のっち?」
「ぇ?」
あ〜ちゃんのおでこに触れていたゆかちゃんの手が離れて、あ〜ちゃんと視線が触れる前に咄嗟に逸らしてしまった
「え、ぃや、その…」
そのまま宙を彷徨った視線は、結局あ〜ちゃんへと戻っていった
「のっち…」
「あ〜ちゃん…」
二人の間で交わった視線に、妙にくすぐったさを感じる
そういえば、今までは、無意識に合わさないようにしてた気がするな
「私、ちょっともっさんと話してくるけぇ」
「え、ちょっとゆかちゃん?」
ゆかちゃん、それはマズイって
あ〜ちゃんと二人って、心の準備全然できてないんだけど?
「あ、のっち、ちゃんとあ〜ちゃんの汗拭いてあげるんよ?」
出口の手前で、思い出したように振り返ってそう言ってくる
「の、のっちが?」
「タオル持っとるじゃろ?ほんじゃね」
いやwだから心の準備がぁw
そんなあたしの思いも虚しく、バタンと部屋のドアが閉まった
必然的にあ〜ちゃんと二人
妙な緊張感に、おそるおそる視線だけあ〜ちゃんの方へ向けると
しっかりあ〜ちゃんと目が合って、また少しくすぐったくてエヘwって笑って顔ごと向けた
そしてゆかちゃんに言われたように、絞ったタオルで額や首に滲む汗をそっと拭いてると
あ〜ちゃんは申し訳なさそうに「自分でする」って言うけど、あたしがしておかないとね?ゆかちゃんに怒られちゃうからw
一通り拭き終わって、最後にきれいな面を表にしてタオルを畳みなおして、あ〜ちゃんのおでこに乗せる
ゆかちゃんが作ってくれた機会だから
ちゃんと、、話さないと、ね
「あの、、さ」
「ん?」
まずはやっぱり…
「ごめんね?」
「…のっちも謝るん?」
小さく笑うあ〜ちゃん
“も”ってことは、ゆかちゃんも、ってことかな?
「そりゃ、少なからず、あ〜ちゃんが倒れた原因はあたしにもあるじゃろ?」
「ゆかちゃんにも言ったんけど…あたしが、ちゃんと、出来んかっただけなんよ」
あたしだって、あ〜ちゃんが居てくれなかったら、きっともっと酷かったと思う…
「それに、さ?自分は辛い時に、あ〜ちゃんから助けて貰ったのにさ…。あ〜ちゃんのこと、凄い心配なのに、なんも出来んで、ごめん」
側に居たいのに、居れなくて、、一人で泣かせちゃって、、ごめん
「えぇんよぉ、あたしがそうしたかったんもん。のっちが気にする事なんて、な〜んもないけぇ」
もぅ…
相変わらずおっきいな、、あ〜ちゃんは…
ジワジワとあ〜ちゃんへの想いが、体の中を流れていく
なんか、切なくなっちゃうよ…
「あ〜ちゃんも、もう大丈夫じゃけぇ」
「ホンマに?」
「100%とは、言えんけど…」
「うん…」
大丈夫、、かぁ
嬉しいけど、ちょっと寂しいな…
「のっち?」
「なに?」
まだ戸惑い気味な、その瞳で
「のっちと抱きしめ合った日々は、間違いじゃないよね?」
確かめるように尋ねてくる
あ〜ちゃんが進むための手助け、ほんの少ししか出来ないけど…
「うん、もちろん。あ〜ちゃんの想いには適わないけどさ…あたしも、ちゃんとあ〜ちゃんのこと想ったよ?」
これだけは自信持って言えるよ
今も…
大好きだよ
「ぅん…ありがと…」
へへwって笑って、いつものやわらかい表情
そして…
「のっちと愛し合えたこと…あたしの誇りにするけぇ」
あ〜ちゃんは一歩を、踏み出した
「あ〜ちゃん…w」
ドヤ顔のあ〜ちゃんに思わず吹きそうになりながら
その言葉をかみ締める
誇り…
そんな風に思ってもらえるなんて
あたしには勿体無いくらいの言葉だけど…
大事に心にしまって、これからあ〜ちゃんを想っていく力にするね?
こんなあたしの側に居てくれて
ありがとぉ
あ〜ちゃん…
「ちょっと、、寝る、ね?」
大分、頭の痛みも引いたみたいで、ようやく休めそうな感じ
「ん、今は休むんがあ〜ちゃんの仕事じゃけぇ。しっかり休むと良いよ」
「あの、手…握ってくれる?」
「え?」
「その方が安心するけぇ」
「あー、なるほどwんじゃ、はぃ」
差し出した手に置かれた、あ〜ちゃんの可愛い手を、ギュッて握って
一人になんてさせないよって、これからも、ゆかちゃんと二人で側にいるからって想いを込めて包み込む
何かあったら、今までと変わらずに
いつでも助けるから…
「起きるまで、待っとるけぇ。起きたら、また三人でリハ戻ろ?」
「ぅん、、三人で、ね?」
ゆっくり閉じられた瞳と一緒に、ふっと全身の力が抜けて、規則正しい呼吸音
微笑んでいるようなその表情に、もう、大丈夫なんだなって、安心した
でもやっぱり、ちょっと、寂しいけど…
…
ここからがきっと
あたしの本当のスタート
ねぇ、あ〜ちゃん?
これから
あたしが願うのは…
あ〜ちゃんの幸せ
だからね?
—つづく—
最終更新:2010年04月05日 21:44