その日は、とても、、、、
「ゆかちゃぁん・・・」
「…んー・・おはょ、のっち」
そっと触れた額は、すごく熱かった。
「しんどい、、ね?」
「うん、、、、ねぇ、のっち?」
「ん?」
「今日は、ずっと、そばにいて?」
そんなこと言われたのなんか、はじめてで
ほんとは今日、どうしてもはずせない仕事だったんだけど、、、
「うん、いいよ」
考えるまでもない、、、答えは一つ、だった。
ベッドに横たわる、ゆかちゃん。
ベッドにもたれかかる、のっち。
二人お気に入りの音楽をかけて
ゆったりと、流れる時間を感じる。
ずっと、手は繋いだまま。
絡みあう指と指、そして体温。
熱くて、とても熱くて、、、二人の境目が曖昧になって。。。
「ねぇ、のっち?」
「なに?」
「ゆか、アイス食べたい」
「あぁ、、、買ってこようか?」
「そうしてくれたら、嬉しい、なぁ」
「・・大丈夫?」
なんとなく、不安になっちゃって零れた言葉。
「ふふっ、大丈夫、だよ?」
汗ばむ額に手をやり、そっと前髪を撫でる。
「うん、じゃ、行ってくるね」
指と指がほどけて、熱が下がって、急激にさみしくなった。
外に出ると、すでに夕暮れ時で、びっくりした。
でもそっか、時間は過ぎ去ってゆくものなんだ。
風は冷たくて、思わず、羽が震えたけれど
しゃんとして、羽ばたいて、お買い物に出かけた。
焼けるようなその日の夕日の赤色は、今でも鮮明に覚えている。
どうせなら、と
キミがお気に入りのアイス屋さんまで、行った。
少し遠いんだけど、、必死で飛んでいった。
少しでも早く届けたくて、、、少しでも早く、戻りたく、て。
うちに帰ると、しんとしていて
一瞬、どきっとした。
部屋に入ると、キミは熟睡していて
すーすーと聞こえる寝息に、ほっとしたんだ。
あ、だめだ、、、泣きそう。
最近、どうも涙もろくて困る。
手の甲で、そっと頬に触れる。
ぴくっとして、「っん」て言って、、、
「あ、ごめん、起こしちゃって」
「きもちぃ・・・」
「えっ?」
「のっちの手、冷たくて、きもちいぃ」
「あぁ、うん。外、寒かったから。。よかったらどうぞ」
もう一度、手を差し出すと、ほんと嬉しそうに
「ありがとう」
そう言って、ふにゃりと笑った。
「ご飯どうしよう?なんか、食べられそう?」
「んー・・アイスでいい」
「アイス、だけ?…食べられるなら、ちゃんと食べたほうがいいよ?」
「うん、わかってるよ。けど、アイスが食べたい、の」
「そっか、、、じゃ、のっちもアイス食べよう!」
「え、のっちこそ、ちゃんと食べないと」
「うん、でもあんまりお腹すいてないし。働いてないからかな?」
「…そっか、、、、でも、ちゃんと食べて、、、ね?明日から、は・・・」
「はぁい」
「約束、だよ?」
「わかってるってw」
わかってたのかな?・・・うん、わかってたような、気がする。
そうだよ。やっぱ、のっち
このときも、気付かないフリしてた。
そんな気がする。
いや、、、、曖昧かも。
うん、そのあたりのことは、あやふや。
けど
あの時、キミに触れていた手のひらは
とうにキミの熱を吸収して、
おんなじように、熱くて、溶けそうになっていたこと
と
その約束は、結局、
守れなかったことは
ちゃんと覚えてるよ。
あ、それと
あの日は、とても
月がキレイな夜だった、ね。
最終更新:2010年04月05日 22:16