『人がウソを吐くのは、何か守りたいものがある時だ。』

・・・・って昔、なんかの本、、じゃないや、なんかの漫画で読んだ。
でもソレって結局、ウソを吐いたことに対する罪悪感を正当化してるだけじゃんか!なんて少し上から目線で納得できなかったのを覚えている。
だって、ウソなんて大抵は自分のために吐くものであって。
自分自身のプライドを保持するため、世間にカッコをつけるため、、そんな自分の保身のためだけに吐くウソなんか、なんてカッコ悪くて、なんてバカなんだろって思った。

でも、同時に自分には守るものがないってことにも気付いてしまって。自分勝手に生きてきたつもりだったけど、自分のことすらも、守りたいわけじゃないってことに気付いてしまって。
笑えちゃうくらい哀しくなったのも事実。


でも、後悔なんてしない。
どうやったって、過去には遡れない。だから後悔なんて、する方がバカだって思う。

そう、だから。
自分の過去を悔いるなんて、無意味。他人の過去を妬むのも無意味。

時の流れなんて、抗えない世界の秩序なんだよ。

だけど。
それでも。

アノ子の、、ゆかちゃんの過去が、
妬ましく思えたのも事実。




プルルル。。

「はーい、もしもーし」
「ハロー、マイハニー♪あなたののっちですよー」
「・・・ちっ。なんだ、のっちかよ」

「かしゆかさん、今、露骨に声のトーン下げましたよね?しかも舌打ちしたし」
「用ないなら切るよ。ゆか、これからバイトで忙しいの」

「あ、そうそう。ゆかちゃん今日バイト遅くなる?」
「あー・・・、、バイトはいつも通りにあがるけど、そのあと先輩に飲みに誘われてるから。いつもよりは遅くなるかも」
「そっかぁー」

「ってか、今日遅くなるよって昨日言ったよね!?」
「ありー?そだっけ?w」
「まぁ、誰かさんはゲームに夢中だったみたいだけど」

「あ。そうだよ!昨日は塊を作るのが大変だったんよ!なかなか王様のノルマを達成できなくてさー。もう、ただでさえ指が疲れてんのに。のっち、ちょー頑張ったんよ!めっちゃおっきい島が出来たんよ!」
「いやいや、なんの話だかさっぱり分からんし」
「やだーん。『塊魂』ですよ、奥さん。塊を転がして、色んな物を巻き込んで大きくして、動物たちに島を作ってあげるんですよ」
「・・・・・どーでもいいわ」
「そんでー、指が疲れてたって言うのはぁ、、前の夜にゆかちゃんを攻めすg」
「しね!」

ブツッ

ツーツーツー


「あり。切れちった・・・」





プルルル。。

「ちょっと!ゆかちゃん!切らんでよぉ」
「、、まだなんかあんの?!」

「あー、、あのね?のっち、今日お出かけする用事があるんですよ」
「へえ。珍しい」
「だから。ちょっと、お出かけしてくんね」
「んー、お好きにどうぞー」

「・・・そんで、、今日は帰らないかも」
「どーぞ、どーぞ。お好きなように」

「・・・・・・何処に?とか、、誰と?って聞かないの?」
「別にー。だってゆか、のっちの保護者じゃないし」
「・・・そりゃそーだけど、、」
「なに、聞いて欲しいの?」
「・・・・そーゆー訳じゃないけど、、」
「もう、なんなんよ。はっきりせんねぇ」

「あー、、あのね?・・・のっち、、ぁ、あ」
「あ?」

ズキ、

「あ〜、、あ〜、っとねぇ。。今日はのっち、マリちゃんとデートなのでぃーす!」

ズキン。

「・・・・・それ言いたかっただけ?」
「イエースw」
「あっそ。だから、好きにしんさいよ」

ズキ、

「キミが誰と何処にいようが、ゆかには、関係ない、し」

ズキン。

「・・・うん。そうだよね。うん。・・・・・ごめんね?」
「・・だから、何がよ」





ごめんね、ゆかちゃん。
いや、やっぱ「ごめんね」はおかしいか。

ううん。
でも、ごめん。

こんなのっちでも少しは悪いな、って思うからさ。

ごめんね、ウソ吐いて。


「あー、、ほら。ゆかちゃん寂しいかなーって思ってww」
「はあ?」
「一人で寝るの寂しいっしょ?」
「いえいえ、まったく」

「もしも寂しくて一人じゃ眠れなかったら、のっちの匂いの染み付いたパジャマを抱きしめて寝るといいよw」
「ナチュラルにスルーさせていただきます」


わたし、自分の欲望には正直なの。
ウソ吐いてまで、守るものないし。そんな器用じゃないし。


「あ、」
「ん・・?」

「前みたいに鍵忘れんよーに」
「あーオッケ、オッケ」


なのにさ。
どうして?

どうして、ゆかちゃんにウソを吐いたんだろう。


なんで。
どうして。

身体の真ん中が重くて、息苦しいんだろう。








「あ!も〜、のっちおーそーいー!」
「ごめーん!お待たせ。あ〜ちゃん!!」


ズキンズキン、って。
何処がこんなにイタイんだろう。


<07-終>






最終更新:2010年04月05日 22:23