アットウィキロゴ
携帯に電話!って思って鞄を漁る。
けど一向に携帯は見つからない。あ・・・もしかして、あ〜ちゃんの部屋に忘れた?最悪。
いるかどうかわからないけど、とりあえず走ってのっちの仕事場のダンススクールに向かった。

スクールの前に着いたけどもう閉まってた。
閉まってるけど、奥から明かりが漏れてる。
誰かいるんだ。もしかしてのっちかも。

「すいません!!」
そう思ってゆかはドアを叩きまくった。
走ってきたから息が上がってて上手く叫べない。
「はぁ、はぁ、はぁ、、、、ダメかぁ」
疲れてその場に座り込んだらドアが開いた。

「ゆかちゃん!?」
やっぱり中にいたのはのっちだった。

「はい」
「ありがと」
のっちはゆかにパイプ椅子と水をくれた。

「・・・綾香から訊いたの?」
バツが悪そうなのっち。
「う、ん・・・。さっき」
「で、、、、捨てられたあたしを心配して走ってきてくれたんだ?」
「・・・」
「はは、大丈夫だよ。振られたくらいで死にゃーしないってw」
ゆかのまえではそんな無理して笑わなくていいのに。

「でも、ありがとね」
のっちはいつものようにポンポンと頭を触ってくれた。
「さ、帰ろうか。車で送ってくね」
そう言うのっちの背中が切なくて、切なくて、思わず後ろから抱きしめた。



「そんなの、いいよ」
「うそつき・・・」
「え?」
「ゆかちゃん、この前綾香は消えないって言ったじゃん」
「あ・・・」
「でも、やっぱり消えちゃった、じゃん」
ズルってのっちの身体が崩れ落ちた。

「ごめん。ごめんね。ごめんね、のっちぃ」
崩れ落ちたままののっちを支えるようにゆかは抱きしめ続けた。
「こんな日がいつか来るってわかってたのに、実際に来るとしんどいね・・・」
「え?」
「綾香と別れるってわかってたのに」
「え・・・どして?」
「だって、そうでしょ。綾香はまだ学生だし、若いし、子供だって欲しいでしょ。特にあいつ子供超好きだし」
「でも・・・」
「二年半か・・・。はは、よくもったほうだよ」
「のっちはそれでいいん?」
「よくねーよ!!」
ゆかの方に身体を捻ってのっちは怒鳴った。
ビックリした。
怒ったのっちを見たのは初めて。

「よくないよ!全然よくないよ!でもしょうがないじゃん!」
ゆかの腕から離れてのっちは体育座りをして小さくなってる。

「全部あたしが悪いんだからしょうがないじゃん」
「なんで、のっちが悪いんよ。悪いのは、あ〜ちゃんでしょ?」
「綾香はなんも悪くないよ。あいつのこと悪く言うな」
捨てられたのに、なんでまだこの人はあ〜ちゃんを庇うんだろうか。

「あたしがちゃんとあいつのそばにいなかったからいけなかったんだ。あいつに好きな人を作らせる隙をあげちゃったのがいけなかったんだ」
「そんなん・・・のっちのせいじゃないじゃん」
「あたしのせいだよ。あぁ、ダメだなー。ほんと、あたしってダメだな、、、もっと強い人になりたいのに」
「のっちは強いよ。ダメじゃないよ」

「ダメダメだよ。だってそういう時が来たらちゃんと綾香を送り出そうって思ってたのにさ、、、。
”そいつと幸せにね”って笑って心から言わないとって思ってたのにさ、、、。
でもさ、実際にきたら震えた声でしか言えなかった。作り笑顔しか出来なかった。あー、かっこわりー」

この人はバカがつくほど健気だ。
この人はバカがつくほど優しい。

一番傷ついてるのは自分なのに最後の最後まであ〜ちゃんを庇ってる。
そんなのっちを見てたらまた泣けてきた。なんの涙かは分からないけど。

「て、なんでゆかちゃんが泣くん?」
「のっちが、泣かない、からぁぁ・・・かわり、に泣いてるのぉぉ」



ゆかは小さくなってるのっちに抱きついた。
抱きついて思いっきり泣いた。声を出して泣いた。まるで小さい子供のように泣いた。
のっちはそんなゆかを包み込むようにその長い腕の中に入れてくれた。

どれくらい泣いたんだろ。
いつのまにか、ふたりして壁に寄りかかって地べた座りしてる。
ゆかはのっちの広い肩に寄りかかってる。

「落ち着いた?」
「うん・・・。ごめんね」
「ふふ。いいよ、別に。ゆかちゃんは泣きべそちゃんって知ってるし」
「もー!バカにせんでよ」
「ははwごめんごめん」
ダランと伸びたのっちの手を軽く握った。
のっちも握り返してきた。ゆかの親指をにぎにぎ触ってる。

「あの、ね?」
「ん?」
「のっちってさ、あ〜ちゃんと一緒にいる時は”あ〜ちゃん”って呼んで、ゆかにあ〜ちゃんの事話す時は”綾香”って呼ぶじゃん?」
「うん」
「ゆかね、あれすごい好きだったんだ」
「・・・あたしのために色々ごめんね」
のっちはそう言って今度はあたしの肩に寄りかかった。
まだゆかの親指をにぎにぎ触ってる。

「有香」

バカ、そんな上目遣いで言わないでよ。

この人は何度ごめんを言えば済むんだろう。
ゆかは何度言わせちゃったんだろう。
あ〜ちゃんは、あ〜ちゃんは何度言わせたの?

のっちが握ってるゆかの親指から気持ちが伝わりそうな気がした。
そんなことは絶対ないけど。

ゆかはまた泣きそうになった。
なんでかはわからなかったけど。

静まってるレッスン室から急に機械音が鳴り響いた。
ゆかの手を握ってたのっちの手は解けて、かわりに携帯を握った。

「あ・・・綾香だ」
携帯のディスプレイを見て独り言のように呟くのっち。

あ〜ちゃんから?
なんで?だって今頃新しい彼氏といるんじゃないの?
なんでなんでのっちに電話すんの?

「はい・・・」
「え?・・・ん?、、、どした?あ〜ちゃん?・・・綾香?」
「なに?聞き取れんよ、、、」
「わかった!すぐ行くから!大丈夫だから!!待ってて!!」
電話に出たのっちは慌てて部屋から出た。
ゆかものっちの後を追う。

「の、のっち?あ〜ちゃん、なんかあったん?」
「わからん。わからんけど、すんげー、苦しそうだった」
「え?」
「とにかく早く行かないと!!ゆかちゃんも乗って!!」
「う、うん」

のっちは血相を変えて車に飛び乗った。
ゆかも転がるように乗った。

もうなにがなんだかわけわからないよ。





最終更新:2010年04月05日 22:42