不自然なガール - わ っ ふ る s s まとめ

最近気付いたらいつも目で追ってた、君の姿
大学の知り合いで友達で今まではそれだけだった、そのせいでしょって自分にいい聞かせてた
でも違うんだって気付いた、止まらない気持ち、この気持ちは不自然、お願いだからこれ以上わたしを振り回さないで
目まぐるしい君に目眩がしそう

「ねえ、なにがいいと思う？」
「ん〜」
そんな君にも最近好きな人が出来たみたい
相手はわたしと同じ高校のあいつ、君と同じサークルだっけ。
趣味が合うから前からけっこう仲はいい、だからそいつを誘う口実の相談。
なにがいいか？そんなの知らないよ
「今度やる映画いいと思うよ、最近よくCMしてるやつ」
「なんでなんで？」
「確か前行きたいって言ってたけぇ」
「そうなんじゃ！ありがとう誘ってみるけん」
嬉しそうに弧を描く目に素直に喜べないけど表面だけは笑顔で取り繕う、そんなことばかり上手な自分が嫌い。
次の日あいつからメールが来た
「前見に行こうかって言ってたの忘れてて他の奴と行くことになったごめん、うっかりしてた」だって
気にしないふりでやりとり
ここで気付いたら何か違った？

「でね、映画見とる横顔が超かっこいいんよ！耳の下の顎のラインがすぅっとして」
映画を境にどんどんのめり込む君は今日もマシンガントーク
そんな君に笑顔を作りながら水面下でメール
気づかないふりで大好きなそいつの予定を埋めてしまおう
別に邪魔をするわけじゃない、ただ相談があるだけだから

雨が降る中を歩いて向かうあいつの家。
ざあざあと勢いよく降る雨は視界ばかりか音も奪う。
そういえば前あの子は街の雑踏の中大声でわたしの名前を呼んだことがあった。たまたま見かけたのが凄く嬉しくてつい呼んじゃったんだって。

それを聞いたわたしは恥ずかしくて嬉しかった。
あれは今日みたいに雑然と煩い街でわたしを見つけてくれたから？…それとも君だったから？
こんな雨の中でも君は気づいてくれるのかな？傘を閉じれば気づいてくれる？

「いらっしゃい」
お互いの近況、他愛のない話で時間が過ぎる。気が合うからついつい時間も忘れて話し込んだ。
「…で相談ってなに？」
くだらない話が一段落ついて急に真面目な顔をする君、きっとあの子はこういう顔に惚れたんだろうな
そう思ったら全然どうでもいいような悩みが口から出てしまっていた。
そんな事も知らずに真剣な顔で君は聞いているから本当の質問はまだまだ聞けない。

話は適当に終わってはまた暇なときでも会おって別れた。
昨日のあの子は明日君をまたデートに誘うって意気込んでた。
確かに今日の君はバイトが休みだね、でも今日はあいにくの雨だよ。
君は今何をしてるの？こんな雨の中あいつと一緒なの？
君は今何をしてるの？また暇なときに会おうかって言ったよ？
ただただ君のメールを待ってみる、期待して。画面を見てると思い通りの名前が画面に現れた。
「今から食事でも行かね？」だって。
この前の映画のことが後ろめたいのかな、じゃないとあんなにかわいいあの子の誘いを断るわけない。
前はそのこと、ちくちく責めてやったしね。今日はそんな律儀な君の気持ちそっと利用しよう。
窓の外は暗いけどこういうのは嫌いじゃない。ただ今は少し辛いだけ。

時間がたつほど気づかないふりも限界がきて相談があるからって君にメールを打った。
仲良しの二人だからすぐに話そうってなるのは当たり前で
会話は軽い冗談で始まってお茶を飲んで一息つく。
「で、相談ってなんなん？」

急に真剣な顔で君が聞くから心臓が跳ねそうになった。君のそういう顔が好きなんだ。
「…えと」
上手く言葉が出なくて口が止まる。とりあえず飲み物を取って飲む間にも言葉を探って。
「…もしかして好きなん？」
君の微かな一言に驚いてまた言葉が止まる。ねぇどういうこと？
「…わかった、の？」
「…っていうかあっちが気にしてるっぽいけぇ」
「…え？」
「この前、誘ったら断られたのに…二人で歩いてたけぇ……」
あぁ、そういうこと、か……。悲しそうな顔に僅かな期待はすぐに消えた。
「雨の中でもすぐわかった…二人で凄く楽しそうに笑っとったけぇ、だから…」
「そんなわけないじゃん」
「え？」
「あの日はね、前に約束破られた穴埋めよ。だからたいした意味ない…それにあいつのことなんとも思ってないし」
「ほんとに？遠慮とかしなくてもいいよ？」
「趣味も似てるし大学入る前からの知り合いってだけじゃけ。まぁよく勘違いされるんよね」
「そうなん？じゃあさっきのは？」
「ごめん、ごめん勘違いしとったわー」
「え、それどういう事」
「さぁねー」
なんてニヤリと笑って誤魔化してこういうときは自分でも驚くほどすらすら言葉が出る。
こういう自分は嫌いだ。
「え、えー！じゃあ相談ってなんなんよ！？」
「それはね——」
本当の質問はまだまだ聞けないでしょ？

あれからメールが少なくなった。
二人でいるのを見かけるようになった。
噂も聞くようになった。
これ以上惑わさないで

もう、遅いのかな？

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