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本当のこと、って?
「…行かないよ」

「だから…行かないで」


[023:I don’t know]


「…ゆかちん」


ずっと黙っていたのっちが喋りだしたのは、しばらくたってからだった。
床にしゃがみこんで泣き崩れたゆかの頭を、ポンポンって優しく触れる温度を感じた。




「……ごめん、ね」


その“ごめん”が意味してるのは、何?
ねぇ、のっち。無理なら無理で、、、


「…謝らないで」


謝られるのなんか、みじめになるだけ。


「…ごめん」


ばか。謝らないで、って言ったじゃん。
大丈夫?って、ゆかの頭を撫でるけど、そばにいないなら優しくしないでよ。
そんなことより抱き締めてよ。できないなら全部やめて。




「………帰って…」
「…うん」


のっちの手が離れた。
のっちの後ろ姿、まだ見たくなかったな。
だって、こんなに愛しいのに、こんなに苦しい。
叶わない想いなんて、いくらでもあるんだね。
でも、こんなに苦しいのに、
こんなに愛しいよ、のっち。





座り込んでるゆかの視線の先に、のっちの汚いスニーカーがうつった。
かかとを向けていたそれが、不意に爪先を向けたから、


…え?


視線をあげると、眉を垂らした、笑顔とも言えないような何とも難しい顔をしたのっちがいた。


「…ゆ、かちん」


のっちの声は鼻にかかっていて、その目は少し赤かった。


「あ、のさ?」
「…。」
「いや、やっぱ、いいや」
「なんっ、よ?」


ゆかが慌てて聞くと、のっちは少しだけ笑った。


「DJした時さ、見に来てくれた、でしょ?」
「…うん、」
「最後の曲、…覚えてる?」
「え?…う、ん」
「…そっか」
「…なに?」


今度はしっかり、笑った。
ゆかの胸はまたギュッとなる。
やっぱりね。
こんなに苦しいのに、こんなに愛しい。
ずるいよ、のっち。


「それ、ゆかちんの」
「…?」
「ゆかちんの、曲」
「え?」




「明日デートしよ!」
「はっ?」


またねー、って言って、のっちはさっさと部屋を出ていった。




…意味がわからん。


大体振られた相手と何が楽しくてデートするんよ。
……てか、
ゆか、振られたの、か…。
なんか、呆気ないな…。
よくわかんないよ。
本当によくわかんない。
でも、わかんない人をこんなに好きになった自分のことが、一番よくわかんないよ。


ねぇ、のっち?
そんなん言われたらさ。
期待しちゃうし、想いは募るし、いいことなくない?
諦められないし、忘れられないよ。


ねぇ、それってさ?
それでもいい、ってことなのかな?
わかんないよ。








最終更新:2010年05月17日 20:34