なんだか今夜は眠れないし
春の訪れを告げるかのように
潜む空気はやわかくて
なにかに誘われるように
闇に吸い込まれていった。
「女の子は、夜道をふらふらしちゃダメ!」
そんな風に怒られたのは、いくつ前の、秋?
「のっちだって、女の子でしょ」
どんなに遅くなっても、きちんとゆかをうちまで送ってくれて
当の本人は、ふらふらとそのまま闇の中へ。
「のっちは大丈夫。全身真っ黒の変態さんだから
変態さんだって、近づいてこないってw」
よくわからない理屈を浮かべて笑ってたっけ。
闇も深まった夜道は、とても静かで
ぽつんぽつん、街灯がやたら目に付く。
それは、暗闇からあたしを守ってくれてるようでもあるけど
お前はただのひとりぼっちなんだと
言われてるようでもあって、、、急激に寂しくなった。
光なんてなくたっていい。
暗闇だって、あなたが手を引いてくれれば
寂しくもなんともなかったのに。
生暖かい風は、
カラダの奥から、なにかを乾かしていって。。。
ふと視線を上げると、
街灯なんかより、さんさんと
不気味に浮かび上がるのは、自販機だった。
「オトナになったことだし、タバコでも吸ってみよっかな」
ふざけて囁いたあたしに
「オトナなんだから、そんなバカなことせんで」
呆れたように眉をたらして、あなたは答えたっけ。
「タバコって、オトナが吸うものじゃなかったっけ?」
「そう。でも、吸い始めるときは、みんなコドモ、だよ」
たしかに、そうかも。
「それに、煙臭いゆかちゃんなんて、ヤだ」
そんなふうにやわらかく微笑んで、ゆかの心を簡単にさらっていったのは
いくつ前の、冬?
ガタン。
タバコを横目に、ホットココアを手に取った。
少し前までは、その暖かさも
凍える指先を溶かしてくれたんだけど、、、
今となっては、
ただこの、生ぬるい空間と同化して
ただただ、ゆかの存在ですら
ぼんやりさせるだけで。
最低。
出てこなきゃよかった。
こんな暗闇ですら
くっきりと思い出してしまうのに
こんな暗闇に
紛れてしまったように、消えてしまった。
それはもう、いとも簡単に。
早く帰ろう。
足早になると同時に
思考も急激に回り始める。
いつだって、そばにいれたら
変われた、かな?
んーん
いつだって、そばにいてくれたのに、、、ね。
あ、違う。
そばにいたかったのに
わかりたかったのに
そうしなかったのは
ゆかの、ほう。
つかめないヤツだってわかってたはずなのに
煙にように消えていなくなっちゃうまで
ずっとずっと
そばにいてくれるような
そんな気になってたんだ。
離れて消えちゃったのは、あなた?
つかまえてる気になって、
手放してしまった、、、、あたし?
でもさ、のっちだってズルイよ。
「ずっとずっと、そばにいるから」て。
あなたがくれたコトバ。
あたしがあげたコトバ?
嘘偽りなかったのにね。
「愛してるよ」て。
でも、もう、いら、ない。
だって、こんなにあたしを
弱くしてしまったんだから。
気がつけば、足が向かった先は
うちとは全然、違った方向で
ぼんやりと少しずつ、東の空が色づき始めていた。
うそだよ。
ちゃんとここにあるよ。
むかつくけど、あるんだよ。
忘れないよ。
忘れらんないよ。
だから、
忘れないで、よ?
「いつだって、あなただけだから」
そう、呟いたのは
どっちだったっけ?
いくつ前の、春?
そんなのもう、思い出せないけれど
ゆかはね
いくつ季節が過ぎても
どうやら、あなただけ、みたい。
最終更新:2010年05月17日 20:41