「あったかいねぇ。」
「そうじゃろ!」
ちょっとついてきてと、腕を引かれて来た公園。
まだ桜が咲いている、桃色の風の中。
あやちゃんは嬉しそうに笑う、春だねぇ。
少し上を向けば、ちょっと眩しいけど暖かな光が目に入る。
「のっち、のっち。」
よそ見をしていた間に座ったのだろうか、数m離れたベンチからあやちゃんが手を振る。
「なーに?」
ふんわりとした春の空気に、口から出る言葉も自然と柔らかになる。
小走りで近づいて隣に腰かける。
「綺麗じゃろ、桜。」
目はあたしを見据えたままで、桜を指差した。
まるであたしの返答がわかりきっているよう。
「うん、めっちゃ綺麗。」
「よかった、のっちと花見したかったんよ。」
「花見?」
あやちゃんはえへへと笑って頷いた。
風に遊ばれる髪、運ばれてくるあやちゃんの香り。
悪いけど桜よりもそっちに気がいっちゃう。
「時間なかったけん、こんな形になったけどな。」
あやちゃんはちょっと残念そうに眉をひそめてみせた。
でもあたしは形なんか―
「形なんてええよ、あたし嬉しいよ。」
「そぉ?良かったあ。」
あたしの手に自分の手を重ね、あやちゃんは春の空気よりもふわりと笑んだ。
不覚にも心臓が跳ねる。
「あ。」
あやちゃんは思い出したように声を上げると、あごに指を当てた。
「かっしー待たせとるかも。」
あやちゃんの無理がある弁解と共に、スタジオに置き去りになったかっしー。
戻ったら機嫌取りしなきゃね。
「そだね…戻る?」
「…次はちゃんとしたのしよ、去年みたく!」
あたしの言葉に一瞬表情が曇ったけど、すぐに元に戻った。
去年の花見を想起したんだね、あたしも今したから笑顔だと思うもん。
あやちゃんはあたしの顔を見て、満足そうに一つ笑った。
そして、ポンと自分の膝を叩いた。
「競争じゃ、スターッ!」
ベンチから勢いよく立ち上がったかと思うと、すぐに駆け出した。
何というテンション。
あたしも慌てて立ち上がる。
けど、あやちゃんは意外と速くって。
「ちょっ、フライングー!」
春風の中ワンピースをなびかせて駆けるあやちゃんと、それを追うあたし。
「ちょっ、フライングっしょー!」
春風の中ワンピースをなびかせて駆けるあやちゃんと、それを追うあたし。
なんか…Perfumeのおかげで華のなかった青春、色を取り戻したみたいな。
言い方悪いけど、まさにそんな感じなんだもん。
あたしのウンザリな19年も、こうなるためだったなら悪くない。
そう考えるとちょっとテンション上がるよね、よし。
「好きだぜあ~ちゃーん!」
ほうら、足が止まった。
でも振り向いた顔が桜よりも鮮やかな桃色で、あたしの足も止まってしまった。
春だねぇ。
最終更新:2008年10月10日 00:42