「ん・・・」
少し肌寒くて目が覚めた。
横にはスヤスヤと気持ち良さそうに寝てるのっち。
昨日の夜、初めてのっちとエッチしたんだと思い出したら急に恥ずかしくなった。
しかも二人とも何も身につけてないし。そりゃー、肌寒いに決まってるわ。
あれ?今日は日曜だけどのっちバイトがあるって昨日言ってなかったけ?
あたしはベッドの下に脱ぎ捨ててある下着とパジャマを拾って着直した。
時計を見ると9時を指すところ。
これって・・・のっちを起さないとヤバめ!?
「のっち!のっち!」
あたしは思いっきりのっちの身体を揺さぶる。
「ふぇ?」
「もう!早く起きんさいよ〜。今日バイトじゃろ!!」
「あ!!」
いきよいよくベッドから飛び出したのっちは全裸。
「のっち・・・なんか着て」
「え?あっ、、、ごめんw」
目のやり場に困る。
「あたしバイト終わるの夕方になっちゃうんだ」
「うん。わかったけぇ」
「あ〜ちゃんの今日のご予定は?」
「軽音部の子達と会う!!」
「あぁ。橋本さんたち?」
「うん。みんなにこっちに帰ってきたってメールしたら、歓迎会してくれるってw」
「よかったじゃんw」
「あっ、でもごめんね」
「ん?なんで?」
「だって、帰ってきたばっかなのに、えっちゃんたちと遊んじゃって・・・」
「そんなん気にすることじゃないのに〜。あ〜ちゃんにはあ〜ちゃんの付き合いもあるでしょ?大丈夫だよw」
いつものように眉毛を下げて笑うのっち。
のっちは優しい。
あたしはのっちのそんな不器用で真っ直ぐな優しさが大好き。
「あたしも夕方には帰るから、夜ご飯は一緒に食べよ?」
「うん。そうだね」
「バイト頑張ってねw」
着替えを終えたのっちにギュッとくっ付いた。
「うん・・・。てか、ヤバい」
「なにが?」
「んにゃ、、、昨日の今日で、あの・・・デレられると、、、心臓が持たんw西脇さん、あたしを殺す気ですか?」
のっちはわけのわからん事を言い残してバイト先へと向かった。遅刻はしなかったみたい。
えっちゃんたちとは本当に久しぶりに会う。なんだかちょっと緊張。
待ち合わせ時間よりもすこし早かったけど、みんなもう先に待っていた。
「わー久しぶり!!三人とも変わっとらん・・・って、言おうと思ったけど、あっこちゃん!キンパツになっとるww」
「高校卒業したと同時に染めたのよw」
「えっちゃんとくみちゃんは変わっとらんね〜」
「あ〜ちゃんは可愛くなったねw」
「もう、何言うとんwえっちゃんは!」
「あははw」
あたしたちは待ち合わせ場所の近くのファミレスへと移動した。
日曜日のお昼だからお店は結構混雑していた。
四人集まれば、話題はやっぱり高校時代の話。
「あ!そうそう。見たよ。去年の学祭のライブ!!めっちゃかっこよかったじゃけぇ」
あたしが抜けたバンドは三年生になっても続けてくれてた。
ボーカルは隣のクラスだったなんとかちゃん。顔は可愛かったけど、名前は忘れちゃったw
二年の時に見たあたしたちのステージに感動して、是非ともバンドの仲間に入れてくれてって懇願されたんだって。
その学祭のライブをゆかちゃんが気を利かせてくれてビデオカメラで撮影してくれた。
「ゆかちゃんわざわざDVDに焼いてくれたんだよね。マメだよな」
あっこちゃんはスパゲッティーを食べながら感心してる。
「まだバンド続けてるん?」
今日なぜか、えっちゃんとあっこちゃんはそれぞれギターとベースを担いできてた。
「うーん、まー・・・一応?」
「ほうなんじゃ。ライブとかやってるん?」
「うーん。まー・・・」
さっきからえっちゃんの返事が煮え切らない感じ。
「あぁぁ!!もう!えっちゃんはっきり言おうよ!!」
煮え切らないえっちゃんに痺れを切らせてあっこちゃんがそう言った。
「な、なんなん?」
あたしはよくわかってない状態。くみちゃんに目を向けると、苦笑するだけだし。
「あ〜ちゃん・・・戻ってきてよ」
えっちゃんがボソっと呟いた。
「え・・・?」
「やっぱりうちらは、あ〜ちゃんがいいのよ。てゆーか、このバンド作ったのあ〜ちゃんだしw」
「実は今はコピーじゃなくて、オリジナルやってるんだよ。スタジオで練習もしてるし。ライブもたまにだけどやらせてもらってるし」
「だって、あの新しいボーカルの子は?名前なんだっけ?お人形さんみたいな可愛い顔の」
「あいつはダメ!やっぱり合わない!あいつの後ろで引いててもつまらん!楽しくない!!」
「あたしもあ〜ちゃんの歌じゃなきゃ嫌だ。くみこもそうだよね?」
「うん。やっぱり、あたしもあ〜ちゃんだなって思ったよw」
あたしは三人の突然の告白に驚いた。
でもそれ以上に嬉しかった。だから思わず涙が出た。
本当はライブ映像を見て、寂しかった。
あたしの居場所が他の人に取られちゃった気がしたから。
『お前の場所はもうないんだ』って言われてる気がしたから。
戻ってきてもちゃんと自分の居場所があるんだって。
突然の転校で三人には迷惑を掛けたのに、変わらずに待っていてくれたなんて。
また四人で音楽をやれるなんて、想像してなかったのに。
あたしって、バカだな。
こんなにみんなに想われてたのに卑屈に考えちゃって。
「ありがとう。あたしもみんなと一緒にやりたい」
「よし!!決まりだ!!・・・ということで、あ〜ちゃん!!突然で悪いけど、今日の夜早速ライブデビューです!!」
は?
このキンパツ娘は何を言うとん?
「実は知り合いにライブの穴埋め頼まれちゃったんだよwでも大丈夫。うちらメインじゃないから。前座みたいなもんよw」
「そ、そんな急に言われても」
「大丈夫。大丈夫。あ〜ちゃんなら出来る!」
「いやいや、出来るって言われても。曲、知んし・・・」
「平気平気。これから一時間スタジオ押さえてあるから。そこでみっちり練習しよう!」
「えぇぇ!!??」
さっきのあたしの感動返して下さいって感じの急展開。
感動に浸る間もなく練習開始。
ここで初めてえっちゃんが作った曲を聴いた。
正直、グってきた。
今回はえっちゃんの曲に免じて、目をつむろうか。
「あ!!!」
練習に夢中になってて、のっちとの約束を忘れてた。
携帯を見ると、のっちから着信が入ってた。
『ごめん!!着信気付かなかった!!』
『ううん。いいよ。てか、あ〜ちゃん今どこ?あたし駅前にいるんだけど〜』
『あー実はね・・・』
とりあえず端的にさっきまでの出来事を話した。
『えっ!マジで!?すごいじゃん!!それって、あたしも見れる?』
『え・・・のっち見たいん?』
『見たいよ〜。あ〜ちゃんの歌ってるところ見たいもん』
あっこちゃんに訊いたら、チケットないけど特別にのっちを入れてくれることにしてくれた。
『わっ!やった。じゃ、すぐにライブハウスに行くねw』
『はーい・・・』
「相変わらず、相方と仲がよろしいことw」
「そ、そう?」
のっちとの関係はこの子たちには直接言ってないけど、みんなわかってくれてるみたい。
そういうところも大好きなんだよね。
ほぼぶっつけ本番のライブはそれなりの形にはなった。
でもお客さんはあたしたちが目当てじゃないから完全アウェー状態だったけど。
でも久々にみんなの演奏で歌ったのは嬉しかった。
初めてのライブハウスも思いのほか楽しかった。
なにより嬉しかったのは、一番後ろでのっちが目を細めて優しい顔しながら見てくれたことだよ。
こんな感じがいつまでも続くと思ってた。
この頃は。
でも甘かった。
現実はそんなに優しくはなかった。
のっち・・・今でもあたしの歌聴いてくれる?
最終更新:2010年05月17日 21:00