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…言っちゃった。
言わんでもいいことを。
言わんかったら分からんかったかも…、あ、それはないか、ゆかちゃん相手じゃ。
「あ〜ちゃんは、気づいとらんし、全然、相変わらず、もう完璧レベルに、片思いなんだけど」
あらためて口に出すと、惨めだなコレ。
自虐だな、うん。
自虐ついでに、目を上げてバスケットコートのあ〜ちゃんを見る。
風にのって聞こえてくるあ〜ちゃんの笑い声が耳をくすぐって。
やっぱり、のっちはあ〜ちゃんが欲しい、って思った。
「…諦めるつもり、ないんだよね。
…てゆうか、出来んし」
「…うん、それでいいんじゃない?」
へ!?
あっさりさっぱりなゆかちゃんの言葉に、あたしはぽかんとした。
ゆかちゃんは相変わらず静かに、コーラを飲んでる。
えらくばっさりと片づけてくれるじゃないの。
のっちとしては、結構乙女な、重い告白をしたつもりなのに。コカ・コーラライトな感情にしてくれちゃって。



「諦める必要なんか、無いじゃろ」
淡々とした、ゆかちゃんの声。
「…てゆうか、のっちに諦めてもらったら、ゆかが困る」
「…何それ。いじめ、ですか。もっと苦しめ、と?」
「じゃなくてえ」
ゆかちゃんは、ふって笑った。
そして平然と、穏やかに続けた。
「もし、ゆかとあ〜ちゃんが別れることになったら。
その後のっちが、あ〜ちゃんとつき合ってくれんと困る」
「っはああああ!?」
何、考えてんだ、この人!?
思わず飛び出たあたしの大声に、バスケットコートのあ〜ちゃん達が振り返る。
ゆかちゃんはひらひらと手を振って、スイマセンうちの駄犬がうるさくて、のポーズをした。
ほんと、何なんだ、この人。
「な、何考えとるん、ゆかちゃん!?」
「何って…。起こりうる可能性を全て計算して、シミュレーションしたうえで言うとるんよ。
ま、うちとあ〜ちゃんの別れる確率は低いけえ、のっちがそんなに興奮せんくっても…」
「そうじゃなくて!おかしいじゃろ、そんなん!!」
じたばた泡をくってるあたしを、ゆかちゃんは例の小悪魔顔で見てる。



「あたしは、もしあ〜ちゃんとつき合えたら、そんな、別れる場合なんて考えんし、考えたくない!」
「でも可能性としてはゼロじゃないじゃろ?」
「いや、そこをゼロにするよう努力する、って言ってんぬ!」
「のっち、カッコいいこと言っとるのに噛んどるよ」
「…てゆうかさ、ゆかちゃんはそれでいいの!?
あたしとあ〜ちゃんがつき合い出しても別にいい、って思ってんの!?」
「…ゆか以外の誰かだったら、のっちがあ〜ちゃんとつき合ってほしい」
「い、言っとくけど、く、苦しいんだからね!!
やきもちなんて可愛いレベルじゃない、ほんまに苦しいんじゃけえ!!」
「うん、そうじゃね、…苦しいだろうね。
ゆか、けっこう嫉妬しちゃうし。うん、めちゃくちゃ嫉妬するんよ、想像しただけで。
のっちの幸せそうなマヌケ面を想像しただけで殺意が抑えきれんわ。
…でも」
静かな、呼吸。
殺意という言葉を、コーラみたく爽やかに言い放った笑顔で。
「あ〜ちゃんを、見失っちゃうより、いいもん。
あ〜ちゃんが、嫉妬も出来ないような、どっか遠くに行っちゃうより、いい」
そうぽつんと言った後で。
ゆかちゃんは、ひひっ♪てイタズラっぽく笑った。



あたしは、力が抜けて。
ゆかちゃんから目をそらして、ぼんやりと空を見上げた。
…ゆかちゃんは、そうかもしれない。
あたしは、何となく分かる。
ほんとのとこ、理解も共感も出来ない部分もあるけど、何となく分かる。
ゆかちゃんは、どんなかたちでもいいから、あ〜ちゃんを側に置いておきたいんだ。
どんな歪んだかたちになっても。自分が傷つくかたちになっても。
…ううん、むしろ。
痛みを感じることが出来るくらい近くに、あ〜ちゃんを留めておきたいんだ。
だって想像がつかないから。
「あ〜ちゃんのいないゆかちゃん」、なんて。
きっとゆかちゃんも想像出来ないんだろうな。
ううん、想像したくない、ってのがホントかも。
熱しやすくて冷めやすいゆかちゃんが、唯一執着してるもの。
要領良くってさばさばしてるゆかちゃんが、唯一依存してるもの。
…それが、あ〜ちゃんだ。
あ〜ちゃんがいないゆかちゃんは、どこかバランスを失って見える。
それは、ずっと昔から。
あたしだけが、そのことを知ってる。

#3へつづく







最終更新:2010年05月17日 21:05