首筋に走るゆるくむず痒い感触に反射的に肩が竦んだ。
何度も何度も啄むように落とされる唇。
くすぐったいのは昔から苦手で。
ゆかちゃんだって、それはよく知っている筈で。
でも、……他ならぬ彼女のすることだから、嫌とは感じなくて。
可愛いことしてくれちゃって、と思うと、余計に動けなくて。
逆に、触れられる部分に神経を集中させたくなって。
だから
しばらく目を閉じて、されるがままで…
唇が離れる瞬間には、名残惜しい気持ちすら頭を掠めた。
「急にどしたん?」
掻き上げた長い髪を耳にかけて囁いた。
「どうせなら、口にしてよ」
こんなんで本当にしてくれたら儲けものだ、なんて思った。
でもゆかちゃんのことだから、バカのっち…って笑うだけだって分かってもいた。
なら、それだけでもいい。あの笑顔、大好きだから。
なのに……
見上げたゆかちゃんの瞳は、予想に反して、見たこともないような色をして揺れていた。
「…ゆかちゃ……?」
「……きん」
「ん……?」
小さな…本当に小さな声。
「……うまく…できん…」
要領を得ない言葉。それに焦れて、頬に触れて続きを促しながら、瞳の色を見つめて思った。
『………見たことも……ない…?』
「…のっちにも……ゆかの痕、つけようと思ったのに…つけれん」
ゆか下手なんかな……ひとりごちて、のっちの肩に顔を伏せた。
『…………っ…』
……頭が真っ白になった。
『ゆかちゃんな、何言っ…………ダメだ、めっちゃにやける…』
顔は真っ赤だ。自分では見えないけど、多分赤い。
ゆかちゃんでもそんなこと思うことあるんじゃ、と思ったらたまらなくなった。
たまらなく幸せな気持ちになって、髪に指を滑らせ、そのまま抱き締めようとした。
でも、それは叶わなかった。ゆかちゃんが身を起こしてこちらに背を向けてしまったから。
「まぁ…別にええけど…ね」
長い髪が小さな背中を覆い隠して、さっき夢中でつけた痕も今は見えない。
「別にいいって……何が…」
「…痕なんかつかんでええ言うたんよ」
別に…いい、のか。ゆかちゃんは、そう…なんじゃ。
「………だって…消えるもん…」
消えちゃうんだから…、そう繰り返す声を聞きながら、思い出していた。
あの瞳の色。今日どこかで見たような気がする。
思い出したら、分かるような気がした。
つづく
最終更新:2010年05月17日 21:11