「は?」
今日は休日。
あ〜ちゃんも授業がない日だから、一日一緒にいられる素敵な日になると思ってたのに、彼女が朝からヘビーな事を話始めた。
これから久々のデートをしようというのに、台無しじゃない?
「・・・だから、うちらデビューすることになったんよ」
「デビューって、、、」
「CDデビューよ」
「・・・あ〜ちゃんが?」
「そうじゃけぇ」
「、、、なんで?」
「なんでって・・・実は前からデビューに向けて色々動いとったんよ・・・」
「そう、なんだ・・・。知らなかったよ」
朝からそんな話されても、当然頭はついていってない状態。
あーあ、せっかくの朝ごはんのトーストと目玉焼きが台無しだよ。
「いつ・・・デビューすんの?」
「半年後を目処に目指しとるみたい。それまでに色々準備とかあるんじゃと・・・」
「てか、どうやってデビューすることになったの?」
「この前ライブやったじゃろ?のっちが来てくれたやつ」
「あぁ・・・。新曲披露した時でしょ?」
「うん。あのライブにね、レコード会社の人が見に来てくれてたんよ・・・」
「へー・・・」
そりゃ、あのライブ見たらスカウトしたくなっちゃうよ。
めっちゃかっこよかったもん。あ〜ちゃんも曲も。
嬉しいよ。あ〜ちゃんの歌が色んな人に聴いてもらえるのは。素敵なことってわかってるよ。
でもさ、なんで事後報告なの?
そんな大切な事今まで黙ってたの?
そりゃ、あたしには直接関係ないけどなんか悲しいよ。
事前に報告してよ。
今までバンドの話とかいっぱいしてたのに、肝心な事はなにひとつ言ってくれなかったってことじゃん。
あたしって、あ〜ちゃんにとってそんだけの存在?
て・・・これって、一緒じゃん。
あ〜ちゃんが転校しちゃった時と一緒じゃん。
「ごめん、のっち。怒った?」
「いや・・・怒ってないけど」
「けど?」
「ちょっと悲しかった。・・・あ〜ちゃんが転校しちゃった時思い出しちゃった」
「ごめん・・・」
しょぼくれてるあたしの背中にあ〜ちゃんが覆いかぶさってきた。
「なんで前もって言ってくれんかったの?」
「・・・なんとなく」
「なんとなくって・・・。もしかして、あたしが反対すると思った?」
「・・・ちょっと思った」
「だから言い出せなかった?」
「わからん。ごめんなさい」
首に回ってるあ〜ちゃんの腕の力が強くなった。
「反対、するわけないでしょ・・・」
「え・・・」
「だって、あたしは一番のあ〜ちゃんのファンだもん」
「のっちぃ、、、」
「・・・だからさ、今度からは事前報告にして?」
「うん」
「あーあ、あ〜ちゃんはすぐ泣くんだからw」
「だって〜、、」
あたしはあ〜ちゃんと向かい合わせに座り直して、涙を拭いてあげた。
事後報告には悲しかったけど、泣き顔のあ〜ちゃんを見てるとどうでもよくなっちゃった。
一緒に住んでると、なんだかんだいって相手の悪い部分も見えてきて嫌になっちゃうこともあるけど、最終的にいっつも許しちゃうんだ。
これってやっぱり惚れた弱みってやつなのかな。
「嫌わないで」
泣き虫あ〜ちゃんはまたあたしの首に抱きついてきた。
その勢いであたしは床に頭を打ち付けた。
「イデっ」
「あっごめん」
バっとあたしから身体を離すあ〜ちゃんの腕を引っ張って、もう一度自分の胸に抱き寄せた。
「嫌いになるわけないでしょ」
胸にあるあ〜ちゃんの頭を優しく撫でながら答えた。
「好きすぎて困ってるくらいなのに」
今度はあ〜ちゃんを床に寝せてあたしが上にポジションチェンジ。
「あ〜ちゃんはね、あたしの太陽なんだよ」
チュってあ〜ちゃんの鼻にキスをする。
「なんそれ?w」
「それに天使でもあるんだよ」
チュってあ〜ちゃんのおでこにキスをする。
「えー、天使?なんでーw」
「なんででもw」
チュってあ〜ちゃんの頬にキスをする。
「ふふ」
「太陽で天使のあ〜ちゃんを嫌いになっちゃったら神様に怒られちゃうよw」
あ〜ちゃんの髪を耳にかけてあげる。
「その天使にいつもエッチぃことしてんのはええの?」
あ〜ちゃんも手を伸ばしてあたしの髪を耳にかけてくれた。
「そこはちゃんと愛があるから大丈夫w」
「なんそれ?サムっw」
「えー、サムかったwじゃー、これから一緒に暖まろっか♪」
その言葉をキッカケにあたしたちは何度も何度も愛し合った。
身体は暖まったけど、トーストと目玉焼きはカチカチに冷めてしまった。
「のっち、どうするん?」
「んー?なにがー」
あ〜ちゃんはベッドの中であたしの鎖骨を人さし指でイジイジ触ってる。くすぐったい。
けど、甘えん坊モードのあ〜ちゃんは何しても可愛いから耐える。
「今日出かける予定だったじゃろ?」
「あー・・・そうだったね。でも、あ〜ちゃんダルくない?」
「うん。ダルい」
「だよねwあんだけヤって、何度もイっちゃったし・・・。あたしも手ぇ疲れちゃったしw」
「・・・おっさん。てか、のっち変態。キモイ」
「うえぇぇ!?おっさんはいいけど、変態ってヒドくね?」
「おっさんはいいのかよ!?w」
結局今日は一日中ふたりでベッドでゴロゴロ。
幸せだなって思いつつ、半年後はあ〜ちゃんは芸能人になってしまうのかという寂しさもあり。
あたしの太陽がみんなの太陽になってしまうわけだ。
そう思うとやっぱり複雑。
あたしが止めてって言ったら止めてくれんのかな?
いやいや・・・そんな事言ったら、バンドのメンバーに八つ裂きにされそうだな・・・。
このまま、あたしは美容師の道であ〜ちゃんは保育士の道に進んで、二人仲良く生きていくのも悪くないって思ってたけどな。
まー、あ〜ちゃんが決めた進路だもん。
あたしはそれを応援するしかないっしょ。
一番のファンが応援しなくてどうするって感じだもんね。
あ〜ちゃん・・・あたしは今でもあなたのファンだよ。ずっとずっと一番のファンには変わらないよ。何があっても変わらないよ。
最終更新:2010年05月17日 21:30