—連絡遅くなってごめん。今夜は帰れないと思う

あらら、せっかくご飯作ったのに、残念。
それにしても、“ごめん”だなんて。
なんか、おかしいの。
暮らし始めたころは、もっと早く連絡できなかったの?
なんて時間に、さらっと連絡してきてたくせに。

でもそっか、一緒に暮らしてるんだもん、ね。


一緒に暮らしてるんだし
当たり前っていえば当たり前なんだけど
それに、あたしがお願いしたことなんだけど
“干渉しないで”と言う彼女が
こうして、律儀に連絡をくれることが
なんだか、とてもくすぐったい。


用意していたご飯を片付けてリビングに戻る。

あたしのものっていったら、ゲームくらいで
彼女の好きなように、彩られた空間なんだけど
とても、心地いい。

“彼女”のときは、、、、
おんなじように、“彼女”の好きなもので溢れていて
それはそれで、とてもかわいらしかったんだけど
なんだか、妙に落ち着かなかっ、、、


うっわ、最悪。
思い出すなんて、、、いや、ゆかちゃんと比べるなんて。
どうかしている。


でも、おかしなものだよね。
“彼女”と暮らすために、借りた部屋なのに
今じゃ、当たり前のように、ゆかちゃんと暮らしているんだから。

たしかに、“彼女”は、ここにいたはずなのに・・・


『結局、誰でもいいんじゃん!!』

あぁ、もういいよ!
いつフラッシュバックしても、最高に痛いフレーズ。

『好きでもなんでも、なかったってことでしょ!?』

だから、違うよ!
それだけは、絶対に違う!


『やさしさと、愛情とは違うんだよ…』


あぁ、もう最悪。
どうして、こうも
アノ感じが、べっとりとひっついたまま
今なお、剥がれてはくれないんだろう。


愛、情、、、か。

わかんないよ。
だって、だれも教えてくれないじゃん。


だめだ、ダメダ。
もう、寝よう。夢に逃げ込もう。


ガチャリ。

え?


「ただいまぁ」

微かにだけど、ゆかちゃんの声。

「おかえり。って、あれ?今夜は、帰っ、て、、

は?なにそれ?

「ありゃ、まいったなぁ、のっち起きてたんだ」

そう、ばつが悪そうに、呟いたゆかちゃんの右頬は
うっすら赤く、腫れていた。






最終更新:2010年05月17日 21:39