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「へーじゃあ、みんなと同級生なんだ〜」
「はい」
「うちの木村さんとも同級生なんだっけ?」
「はい」
「ははは。じゃー、毎日が同窓会みたいだねw」
「そうですねw」

今日は初日の大阪公演。
只今ライブ真っ最中。
あたしはステージ袖であ〜ちゃんたちを見守ってる最中・・・て、言いたいところだけど。

先輩のタカコさんが色々と質問してくるから、ちゃんとライブを見たいけど見れない状態。
この人、めっちゃ美人なんだけどかなりの天然だから、たまに会話にならないんだよね。

そう言えばあ〜ちゃんがタカコさんはあたしと同類のタイプの人間って言ってた。
えー?そうなかな?
あたし、あそこまで美人じゃないしそこまで天然じゃないよ。それなりに会話できると思うけどな〜。

そうこう言ってるうちにライブは大成功を収めた。
あ〜ちゃんもライブに集中してたみたい。
たまに目が合うとお互いにニヤけちゃったけどね。

その後は近くの居酒屋で打ち上げ。
本当はこういう大人数での食事とかって苦手だけど、あ〜ちゃんがいるから喜んで行った。

けど、やっぱりメインのあ〜ちゃんの席の隣には座れなかった。
相手はバンドの顔のボーカル。一方はヘアメイクの見習い。
そりゃ、嫌でも差が出ちゃうのはわかってたけどね。

あたしは下座でチビチビとつまみを食べた。
隣のタカコさんは他のスタッフさんと楽しそうにしゃべってる。
遠くに座ってるあ〜ちゃんもメンバーとかスタッフさんとかと楽しそう。

ヤベ・・・。つまらん。
帰ろうかな。・・・帰ろう。
あたしはタカコさんに挨拶して、ひっそりとその場から立ち去った。



お店を出てタクシーを拾おうとした時、肩を叩かれた。
クルっと叩かれた方を振り向くと、頬に指がささった。

「あんた、いっつもこれにひっかかりよるんねw」
あ〜ちゃんだ。
「・・・あ〜ちゃんも毎回やるなんて、小学生並じゃん」
「もう帰るん?」
「うん。・・・あ〜ちゃんは?」
「あたしも帰るんよ」
あ〜ちゃんの手には可愛らしいバッグ。

「えっ、いいの?」
「なにが?」
「だって、主役がいないとダメなんじゃないの?」
「あー、平気でしょ。えっちゃんたちいるし」
「そうなの?」
「うん。あたしなんかいなくても、スタッフさんたちめっちゃ楽しんでたし。てか、お酒呑めればそれでいいみたいよ?」
「そんなもんなの?」
「そんなもんなの!!」
しばらくするとタクシーが留まった。
後部座席の扉が開くと、あ〜ちゃんが先に乗ってしまった。
あたしが唖然としてるとあ〜ちゃんが早くしんさいって命令したから、仕方なく一緒に乗った。

運転手さんにどこいきます?って訊かれたから、ホテルの名前を言おうとしたら、またあ〜ちゃんが先に言ってしまった。
タクシーは素直にあ〜ちゃんが言った行き先に向かった。

「あたしのホテル、あ〜ちゃんのホテルと違うんだけど・・・」
「知っとる〜」
「なに?・・・誘ってんの?」
「ふふ。どーでしょう?」
なんだかやたらとテンションが高いこと。
でもシラフっぽいし。なんだ?なんだ?

目的地のあ〜ちゃんが泊まるホテルに到着した。
タクシーから降りようとしないあたしを、あ〜ちゃんは無理やり引きずり降ろした。

目の前にはあたしが泊まるビジネスホテルと違って、それなりのきちんとしたホテル。
あ〜ちゃんはそのままエレベーターに直行。
あたしも置いてかれないように急いで着いていった。




部屋に着くとあ〜ちゃんはベッドに腰を掛けた。
あたしはまだつっ立ったまま。

「なんか、テンション高くない?」
「そりゃそーじゃろ!!だって、ライブの後よ?低いほうがありえんじゃろ〜」
まー、そう言われればそうだよね。
「めっちゃ楽しかった〜。お客さん、ノリよすぎwwビックリしたわ」
あ〜ちゃんはニコニコしながら足をプラプラ動かしてる。

この人はなんであたしをホテルに連れて来たんだろう。
明日もまたライブがあるのに。
密室でふたりっきりになっちゃったらどうなるか、それくらい知ってるくせに。

あたしが隣に座ると、あ〜ちゃんは足プラプラを止めた。

「のっち、どうしよ、、、」
「・・・なにが?」
「今ね、めっちゃ楽しいww」
くしゃって笑うあ〜ちゃん。あたしの一番好きな表情だ。

「歌うのが楽しいじゃろ。ライブが楽しいじゃろ。のっちがそばにいてくれて楽しいじゃろ。もうね、楽しいことだらけよ?」
「うん。あたしもそんなあ〜ちゃんが見れて楽しい」
そう言ってキスしながら、あ〜ちゃんをその場に優しく倒した。
深くキスをしようとしたら、肩を叩かれた。

「ダメ」
「なんでよ・・・。だから連れてきたんじゃないの?」
「あんたの頭の中はそればっかりか!!」
「チェっ。だったらなんでよ?」
あたしはすっかりヘソを曲げた。

「だって、こうでもしなきゃ、のっちとふたりになれないじゃろ?」
「だからふたりっきりになったでしょ。だったら・・・」
「ちーがーうーの!!!」
「は?」
「一番早く教えたかったの!!」
「は?」

「武道館ライブ!!」
「へ?」
「しかも2Days!!今年の11月に決定したんよ!!」




マジで!?
すごい。すごすぎ。
デビューして一年ちょっとで武道館ってすごくね?

すごいけど、なんか話が大きすぎて実感がないというか。
別にあたしがやるんじゃないから実感なんてしなくていいんだけど。
なんてゆーか、上手く言えないけど、あ〜ちゃんがまた遠くいっちゃった感じ。
今は辛うじて同じ舞台にいるけど、向こうはスポットライトが当たる場所にして、こっちは舞台の端っこで落っこちない様に懸命にかじりついてるような。

「ビックリした?ビックリした?」
「あ、うん」
「でしょ〜。あたしもライブ直後にもっさんから聞いてビックリしたもん。ビックリしすぎて、固まっちゃったw」

素直におめでとうって言えない自分の小ささが嫌だ。
嬉しそうに楽しそうにあたしに話してくれるあ〜ちゃんに嫉妬してる自分が嫌だ。

「それ聞いた時に早くのっちに言わなきゃ言わなきゃって思ってたんよ?」
「そうなの?」
「そうよ〜。これ知っとるのメンバーとごく一部のスタッフさんしかまだ知らんのよ?」
「なんであたしにすぐ教えてくれたん?」
「だって、前に事前に報告してって言ったじゃろ?」
「あぁ、、、」
「それに一番のファンの人にはやっぱり、一番に知らせたかったんよw」

なんの疑いもない純粋無垢な笑顔でそう言われたら、さっきまでの否定的な感情が浄化された気がした。

そんなあ〜ちゃんを抱きたいと素直に思ったから、あたしはまたベッドに押し倒した。
深いキスしても今度は肩を叩かれなかったから、調子に乗って続けた。

こんな感じで毎回ライブが終わったら、ふたりでイチャイチャを繰り返してた。

あたしたちはきっと大丈夫。
なにがあってもふたりなら大丈夫。
そう言い聞かせながら、あたしはこのツアーの仕事をやり続けた。

ツアーは無事成功。
武道館のチケットもプラチナ化するほどの入手困難な状態。
毎日の様にテレビでもラジオでもあ〜ちゃんの歌が流れてる。

大丈夫。
会えない時間が減ってもあたしたちなら乗り越えられる。
そう言い聞かせながら、あたしは毎日彼女の歌を聴いている。

あ〜ちゃん・・・やっぱり大丈夫じゃなかった。置いてかれる立場って思ってたよりも、ずっとずっと苦しかったんだ。





最終更新:2010年11月06日 01:01