思ったとおり、のっちは迎えに来てくれた。

助手席には、彼女。

それも、想定内。


だけど、このイライラ、想定外。

てか、なにこの音楽。
全然、趣味じゃない。
のっちもでしょ?
あ、そっか、彼女の、か。

なのに、なに楽しそうに口ずさんでんの?

うちじゃ、全然、そんなの聴かないじゃん。


のっちは、やさしい。
ほんとに、やさしい。

誰にでも、やさしい?


んーん、そこまで器用な人じゃない。


だから、、、


何分か車を走らせた後
のっちは、ちょっと待ってて
そう言って、彼女を部屋まで送っていった。


車内に一人残された空間は
とても心地悪くて、ココロを
どんどん、黒くしてゆく。


「お待たせ」
のっちが戻ってくる。
「あ、前に乗りなよ」
「…ヤだ」
「え、だって、2人なのに、前と後ろって」
「でも、ヤなの!」
自然と強くなる語気。
「・・別に、ムリにとは言わないけど」
さっきまで、そこに彼女が乗っていたかと思うと…

車を走らせる、のっち。

沈黙に耐え切れず、思わず口にでたのが
「…かわいい子だね」




「そう?ん、ま、かわいいよね」
「てか、タイプでしょ?」
「…別に」
「てか、似てるよね?」
「は?」
「アヤちゃんに」
「…、しらん、わからん」

「好きなんでしょ?」
「…キライじゃないよ」
「ほんとに、付き合っちゃえばいいのに」
「は?さっきから、なに言ってんの?」
「…別に」

「てかさぁ」
信号待ち、バックミラーごしに、目があった。
「なんか、、、不機嫌?」
「・・・んなわけないじゃん」

「だったらさぁ」
視線ははずれない。
「それって、、干渉?」

思わず息をのむ。言葉がぶっ飛んでゆく。

でも、思考だけは妙にリアルでクリア。

そだよ、干渉だよ。
ゆかは、ゆかの知らないのっちなんてヤなんだ。
互いの生活には干渉しない、なんて言っておきながら…
のっちは、ほんとに、ゆかのことには干渉しない。
ちらっと見える、カラダに刻まれた痕を見て
眉をひそめてたり、困ったような、泣きそうな顔をしても
踏み込んでくることは、皆無。
なのに、ゆかは、、、だって、ゆかは、、、?


「冗談。・・干渉だなんて、思ってないよ」
視線がはずされて、車が再び走り出す。


なに言ってんの?
干渉だよ、これは、干渉。

沸いてくるのは、理不尽な怒り。


それを加速させるのは
さっき、戻ってきたと同時に変えられた
お気に入りの音楽。


ゆかが、気に入って
のっちにススメて

最近、ずっと2人で聴いていた

大好きな、音楽。



最低。最高にむかつく。





最終更新:2010年11月06日 01:11