Side K
ツアーの日程はあっという間に過ぎて、気がつけばホールツアーは最終日を迎えていた

「しばらくライブはお預けじゃね?」
「ホンマよ〜。次何時だっけ?27日?」
「あ〜ちゃんそれ2Daysの二日目w次回はその一日前じゃけぇw」
「あれ?そうだっけ?あはははw間違えちったぁw」
「あ〜ちゃんてばもうw」

「へへwでも、ライブでいっぱい力貰ったけぇ。学校もがんばりゃなぁw」
「そうじゃね?私もがんばろw」

あ〜ちゃんとっても幸せそうw
私たち三人ともライブ大好きだもんね?

「あ〜ちゃん、、」
「なに?」
「…呼んだだけぇw」
「はぁ?なんよそれぇ?」

本当に、ただ口からぽろっと、、あ〜ちゃんの名前が零れたの

「や、あ〜ちゃんホンマ楽しそうじゃな思って」
「うん!めっちゃ楽しいw」
そう言うあ〜ちゃんの笑顔を見て
「私もめっちゃ楽しいw」

気持ちだけは、まだ溢さないように言葉を選ぶ
あ〜ちゃんはきっと、まだのっちを想ってるって、そう思うから
ツアーが終わるまでは、しっかり止めておかないとね



それから、ある日の収録日
あ〜ちゃんにしっかりメールして、授業が終わって楽屋に向かう私

そういえばあ〜ちゃん、今のっちと二人?
思えば、二人の関係が終わってから一年経って、やっぱりのっちの気持ちは変わらないままで
のっちも、そのうち想いを伝えるんだろうな

う〜ん…
これはもしかして、先に伝えておいたほうが良いのかも…

そんなことを考えながら楽屋の前まで来ると、なんとなく中が静かなのが気になって
少しだけドアを開けてみると、、中の雰囲気がちょっとおかしい




「ごめん、そんな顔させたかったわけじゃないいんよ…」
「のっちのせいじゃ、ないよ…」

何コレ?
あ〜ちゃん何でそんな顔してるの?
のっちが何を言ったら、そんな困った顔するの?
全然、展開が読めないんだけど…

なんだか気まずい雰囲気で、私も中に入るのを躊躇ってしまう
二人が何話してたかにもよるし…

しばらく沈黙が続いた後、先に話し出したのはのっちだった

「はぁ〜…、ホントはツアーが終わってから言おうと思っとったんけど…さっき中途半端に言っちゃったし…」
「なに?」

ツアーが終わってから言う?
のっちもしかして、それって…?

「なんていうか…ちょっと急すぎるけど…のっちは、あ〜ちゃんが、好きなんよ
だからその…あ〜ちゃんさえ良かったら、今度はちゃんと、あたしと恋人になってくれませんか?」

あぁ、やっぱり、、そういうことね
のっちもツアー終わってかから、言うつもりでいたんだ
ホント似過ぎでしょw

のっちが断られる覚悟でした、一年間の想いを込めた告白
そしてあ〜ちゃんの返事は、私が思ってた通り

「言ったじゃろ、『ずっと、のっちだけ』って」
「あ〜ちゃん…」
「だからあたしを、のっちの恋人に、、して?」
「…もちろん、喜んでw」

あ〜ちゃんも変わらずのっちを好きでいたんだ
ちょっと残念だけど、なんかすごく嬉しかった
これでまた、のっちの隣で笑うあ〜ちゃんが見られるから

二人が手を取り合って、さっきの気まずい雰囲気なんてどこにもなくて
温かな空気が部屋に漂ってる
ちょっとお邪魔だけど、もう入っても大丈夫だよね?

ガチャ
「おっはよーw」





私の声に慌てた二人は、パッと手を離して、テーブルにある写真を適当に取ってぎこちなさ全開

「ぁあ、おはよぅ、ゆかちゃんw」
「おはよーw」
「どうしたん?二人とも慌てて」
「え?いや?慌ててなんかおらんよ?」
「うそぉ?絶対慌ててた」
明らかに動揺してる二人

私はカバンを置いて、あ〜ちゃんの隣へと座って体ごとあ〜ちゃんの方へ向けた

「あ〜ちゃん?」
「な、なん?」
「うそはいけんよ?自分で言ったことは、ちゃんと守らんとぉw」

ちゃんと聞きたい
あ〜ちゃんからちゃんと…

「ぁ、ぁー…ウソはいけんよ。うん」
確かめるように頷いて
「のっち、、良いよね?」
のっちの方へ向いたあ〜ちゃんと一緒に、私ものっちの方へ向くと、チラッとコッチを見てから
「うん、良いよ」
そう言ったのっちの返事に私の方へ向き直って、両手を握ってくるあ〜ちゃん

「うちら、、ちゃんと付き合うことんなったんよ」
少しだけ緊張してるその顔を、真っ直ぐ見つめる

やっと、、聞けた

私はそれだけで幸せだよ

「そっか、良かったねw」
私がそう答えると
「ありがとw」
嬉しそうに笑ってくれる

そんなあ〜ちゃんから視線を離して、今度はのっちへと顔を向ける
「のっち」
「ん?」
散々待たせたんだから、今度はちゃんと、、私の分まで
「あ〜ちゃんのこと、お願いね?」
「うん、大切にする」




とういか、のっちが私に告白しないの?って言ってきたんじゃなかったっけ?
あんたが先にしちゃったら、私できる訳ないでしょw
まぁ、、なんていうか、、のっちらしいけど…

ホントに、今度こそ手離さないでよね?
そんなことしたら、私が迷わずあ〜ちゃん捕まえるからね

けど、今こんなこと口で言えないから、ただ視線でのっちに伝える
それはのっちにちゃんと伝わったみたいで、分かったよって言うみたいに、ニィって笑ってきた

その笑顔に安心して、私は反射的にあ〜ちゃんを抱きしめた

「?ゆかちゃん?」
「なんかあったら、いつでも言うてよ?のっちにビシバシ言うからw」
「うんwありがと」

あ〜ちゃんも、もう離れちゃダメだからね?
ちょっとくらい我儘言ってやった方が、のっちは喜ぶから、たまには我儘になりなよ?

結局届けることが出来なかったこの想いが、、
今触れ合うやわらかい肌を感じて、一欠けらでも伝わってくれたら、、それで十分…
なんて、そんな都合のいいことないわwって思いながら、それでも微かな期待を秘めてほんの少しだけ力を込めて、すぐに抱きしめてる腕を離した


その後は、せっかく二人がめでたく付き合うことになったんだからってことで、残るツアーでそのラブラブっぷりを発揮してもらう為に、のっちとあれこれと話してると、早くもあ〜ちゃんのデレが出てきて、個人的には大満足w

ツアーでも一番近くで、こんな二人が見られるんだから、私一番幸せでしょ?


ツアーの後もずっとって、、

でも、逆に幸せすぎて
自分の気持ちにしたフタが緩んでるのに、気付かなかったんだよね


—つづく—





最終更新:2010年11月06日 01:26