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「ふぁぁぁ・・・」
「大丈夫?」
「ん、、、あぁ。ごめん。あくび出ちったw」
「最近しんどそうじゃね。ちゃんと寝とらんでしょ?」
「んー、大丈夫だよ。暇な時間にちょいちょい昼寝してるからw」

のっちがミキちゃんの担当になって約二ヶ月。
この二ヶ月のっちはいつも眠そうな顔してる。
のっちはあたしにあんまり仕事の話はしないからよくわからないけど、結構ハードみたい。

何よりも、寝るのが大好きなのっちが全然睡眠をとってないってことが心配。
でものっちはあたしに辛い表情はみせない。
あたしが心配すると、今みたいに「なんでもないよー」って顔する。

ちょっとでもいいから頼ってほしい。
仕事のグチ聞くくらいの相手は出来るのに。
あたしってそんな頼りないんかな?

「来週のライブ来れるんだよね?」
「うん。ちょうどドラマの休撮日だから平気だよw」

来週、代々木でワンマンライブをやる。
ワンマンは去年の武道館以来だから他のメンバーもスタッフさんも、すごく力が入ってる。
もちろん、あたしもすごく楽しみ。
なにより新しい曲を直でファンの人に届けられるのが嬉しい。
そこにのっちがいるならさらにやる気が出る。

「あっ、ヤベ。そろそろ出ないと!」
「あれ?今日は3時からで大丈夫じゃなかったん?」
「仕事自体はそうなんだけど、ミキちゃんに呼び出し受けたのよ、、、」
「えっ?それって仕事なん?」
あたしの中の小さな小さな不安が芽生え始めた。




ミキちゃんはなぜか仕事以外でものっちを呼び出して会ってるらしい。
それで自分の買い物に付き合わせてるみたい。
最近じゃ、あたしよりもミキちゃんと一緒にいる時間の方が多いし。
あたしはそれを聞いて、ちょっと嫌な予感がした。

どうして、ミキちゃんはヘアメイクののっちを連れまわしているのか。
そんな役目はマネージャーさんや友達でいいのに。

どうやらのっちが担当になったのも、ミキちゃん本人からの指名だったってことがわかった。
てか、どうしてのっち?
そう訊いても、のっちもわからんの一点張り。

そしてのっちの社長曰く「この業界はコネがモノをいうから、仕事取るためにはクライアントに気に入られろ!」
てことで、のっちはミキちゃんのご機嫌を損ねないように、日々睡眠を削りながら頑張ってる。

「ごめんね。今日あ〜ちゃん休みなのに・・・」
「いいよ〜」
「これは浮気じゃないからね。接待接待!」
「ふふ。わかっとるけぇ。あっ、そうだ!今日ね、ゆかちゃんと会うんよ」
「へ?ゆかちゃんって、保険医だった?」
「そうじゃよ〜」
「えぇぇ!?いいなーー!あたしも会いたいよ〜」
「だってのっち接待じゃろw」
「そうですよー。いやーな接待ですけどねw」
「なんかゆかちゃんに伝えることある?」
「そうだなー・・・」




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「どこのシャンプー使ってるの?だって」
「はぁ?なにそれ?めっちゃどうでもいいことじゃんw」
ゆかちゃんは案の定呆れた顔したけど、のっちらしいねって言って笑ってくれた。

「いやー、ほんとビックリだわ」
「ん?なにが?」
ゆかちゃんはアイスティーのストローをカラカラ回す。
「だって、あ〜ちゃん本当に歌手になっちゃったんだもんw」
「ねっ。あたしもビックリw」
「でも高校ん時から歌上手かったもんね」
「そうじゃった?w」
「だって毎年学祭すごかったじゃん」
「あー、あれねw楽しかったな〜」
あたしはゆかちゃんに久々に会って、高校生の頃に戻った気分になった。

「てか、あ〜ちゃんがメガネって珍しいね。目ぇ悪かったけ?」
「あぁこれね。のっちが外に出る時は変装しろってうるさいんよw」
「だからメガネ?」
「そーゆーことw」
「のっちとは順調なんだね?」
あたしは急に照れくさくなって頷くしか出来なかった。

「よかった。先生、あん時めっちゃ心配したんだからねw」
「えへへ。ごめんね」
「二人とも変に意地っ張りだからさ〜。でもあんまり首突っ込むのも逆に悪化させるだけなのかなって思ったりしたんだよ?」
「ほんま、転校の時はゆかちゃんに迷惑かけちゃったけぇ。ごめんね」
「ふふ。でももう安心したわ。てか、キミたちすごいよ」
「そっかな〜?」
「そうよ!」
ニコって笑うゆかちゃんは、高校時代と変わらない親しみやすさ。

ゆかちゃんがあの時と変わらずに、接してくれるのが嬉しかった。
最近よくあるんだ。
それなりに売れると全然仲良くなかった人とかが、いかにも友達面して近寄ってくるようになった。
みんな手のひらを返すように態度が急変した。
あたしは戸惑った。
あからさまに無碍な態度をとると、何言われるかわからないし。
正直、あたしの仕事はイメージが大事だから、断るのが難しい。

だから、ゆかちゃんがふつうに接してくれるのがありがたいの。
あたしはそういう人をこれからも大切にしていきたい。
もちろんその中にのっちも含まれてる。




「あっ。そうそう。これ!」
あたしは代々木のライブのチケットをゆかちゃんに渡した。
「えっ!いいの!」
「うん。ごめん、でも1枚しか取れなかったんよ」
「わーい!いよいいよ。すんごい嬉しいありがとw」
「でも、旦那さんも行きたいって言っとったじゃろ?」
「あぁ平気平気。奴は当日仕事みたいだし。自慢してやろw」
そう言う風にけなしてるけど、ゆかちゃんの左手の薬指には幸せそうな結婚指輪がはめられてる。

いいな。
って、素直に思えた。

でも、あたしたちにはちょっと難しい。

たかが茶色い紙に記入するだけなのにね。
あたしたちは出来ないんだよね。
そう思うとちょっと切なくなった。

てか、あたしはそこに指輪をはめるのも簡単にいかない。

「どした?」
思ってたことが顔に出ちゃったのか、ゆかちゃんに心配させちゃったよう。
「ふふ。ちょっとボケっとしちゃっただけw」
「そう?」
「うん!今度は旦那さんにも会いたいなw」
「いいけど、奴はガチであ〜ちゃんのファンなのよ」
「そうなんwなんか照れる」
「会ったら絶対失神する自信がから会えないって言ってたよw」
「なにそれ?どんな自信よw」
「でも失神する所見たいから、今度会ってよw」
「ゆかちゃん・・・どんだけ小悪魔なんよw」

ゆかちゃんと別れて家に帰ろうと、駅に向かったら携帯が鳴った。
ディスプレイ画面にはのっちの文字。
あたしはその文字を見ただけで心が躍る。

『のっち?』
『うしろ見てみ?』
『はっ?』
言われた通り後ろを振り向くと、なぜか水色の風船を持ったのっちがこっちに向かって走ってきた。

「やっぱりあ〜ちゃんだった〜」
「えっ?なんで風船?」
「あぁ。これ?さっき大道芸人の人に無理矢理渡されちゃったのw」
「ぶははは」
あたしはその光景が鮮明に想像出来て、吹き出した。
「えぇぇ!?そんなに笑う?」
のっちは情けなく眉毛を下げてる。

「これあげるよw」
「えぇ〜。いらんよw」
「そんなこと言わないで。受け取って。のっちの愛だと思ってw」
「そんな押し売りみたいな愛はいらんよw」
「ヒドっw」

「「あっ!!」」

そう言いつつ受け取ろうとしたら、風船は空に上がっていってしまった。

「あ〜あ。のっちの愛がとんでっちゃっねw」
「大丈夫大丈夫。愛はまだたくさんここにあるからw」
のっちはそう言って自分の胸に手を当ててる。
なんでそんなどや顔なん?笑っちゃうよ。

この時はだだの風船だと思った。
けど、本当にとんでっちゃうとは思わなかった。

のっち・・・あたしがちゃんと受け取ってればよかったの?ねぇ、まだそこに残ってる?





最終更新:2010年11月06日 02:51